サンロッカーズ渋谷、リーグ最強のディフェンスチームへ
11/6、第7節終了現在、Bリーグで最も優れたディフェンスを見せているチームはどこでしょうか?
そう、我らがサンロッカーズ渋谷です。
本日も66失点と素晴らしいディフェンシブな試合を展開してくれましたね。
平均失点だけではなく、DERF(ディフェンスレーティング)でも99.0とリーグ1位の数字を出しています。
100を切るのは、渋谷と千葉だけです。ちなみに第6節まででは千葉の方がレーティングが良かったのですが、7節で逆転しました。
上位チームとの対戦がないのも大きな理由の1つであるのは確かですが、それにしてもとてもいい数字であることは間違いありません。
なぜ、そのような数字を出せているのか。
そして、さらに固いディフェンスを構築するためにはどうすれば良いのか。
この二点に関して見ていきたいと思いますが、実は二点目がとても重要です。
理由:オールラウンドにディフェンスができるタイプを並べてハードワークさせているから
実は、これが全てです。とてもシンプルなのですが、どういうことでしょうか?
去年と比べて、放出した選手・加入した選手を見ながら外国籍選手・日本人&クレモンズに分けて考えてみましょう。
外国籍選手の変化
昨シーズンは
ギブズ→インサイド担当
ケリー→アウトサイド担当
という役割分担がありました。というかケリーはディフェンスに関しては完全に穴にすらなっていました。
今年から、ケビン・ジョーンズ、リード・トラビスは両方ともオフェンス・ディフェンスともに内外こなせる器用なタイプのビッグマンです。
ギブスと比べるとインサイドの圧力は劣りますが、それでもブロックの数字ではギブス・ケリーを凌いでいます。
なんだ、全然変わらないじゃないか、と思ったかもしれませんが、ブロック1本するために、ディフェンダーは10回はブロックを試みる(リング付近でディフェンスを行う)必要が出てきます。体感の数字ですが。
つまり、全体で0.3回の違いですが実際は少なくとも3回程度は相手のシュートを落とさせている可能性があるということです。
(ここら辺のデータも揃ってくるとBリーグのデータ分析も楽しくなるのに…!)
また、インサイドの負担軽減はホーキンソンのプレイタイムにも現れています。
昨シーズン:33:14→今シーズン:31:52
これも小さいようで大きい差です。
休憩が長いことで、その分ハードなプレイが可能になります。
日本人選手のディフェンス力
以下のようにローテンションプレイヤー(主力選手)が変化しています。
■昨シーズン
クレモンズ・田中・ベンドラメ・津屋・アキ・小島
■今シーズン
クレモンズ・田中・ベンドラメ・トロイ・阿部・船生
1つディフェンス力を示す指標として、スティールを挙げると
クレモンズ:1.5→2.1
ベンドラメ:1.2→1.7
田中:0.9→1.3
と昨シーズンからの主力選手が軒並み数字を上げているのに加え、
残りの3人での合計値が
1.0→1.3
と変化しており、6人の合計で
4.6→6.4
と大きく上昇しています。チーム合計では7.9となっており、これはリーグ2位の数字です。
また、船生は怪しいですが他の5人は非常にフィジカルも強い選手で押し負けることは基本的にありません。
その船生も今日は、並里にマッチアップするなど、うまくフィジカル問題を隠していました。
戦術的な話
戦術というか微妙ですが、HCのルカは選手にハードワークを徹底させる選手で、練習がスーパーハードなことで知られています。
まず「目の前の相手を100%のパワーで抑え込むこと」を支持している可能性が高いです。
それが象徴されるのが、今日のFE名古屋戦、第2Q終盤のシーンでした。
名古屋のヘンリーにトロイ・マーフィー・ジュニアがマッチアップしています。まずは失点シーンです。
これに対してルカはすぐにタイムアウトを請求します。また15点差あるのに、です。その後、同じプレーを展開されますが、トロイは失点を防ぎます。
このように、もともとディフェンスのスキルが高い選手たちに、とにかく「目の前の相手を止め切ること」を要求している可能性が高いです。
渋谷の弱点と今後の改善
ここまで読んで「そりゃそうだろ」と思った方がいるかもしれません。
何せ、ディフェンス上手い選手を集めて頑張らせているだけなのですから。
ただ、これはバスケにおいては立派な戦術の1つです。
これを飲み込むためには、バスケにおける「オンボール」「オフボール」の概念を理解する必要があります。といっても、簡単です。
バスケは、ボールをリングに入れるスポーツなのでオンボールがもちろん大切ですが、一方でボールを持てる選手は1人なのでオフボールの時間の方が基本的に長くなります。
ディフェンスにおいても、オフボールディフェンスは普通とても高い重要度を持ち、HCはこの構築に心を砕きます。
では、渋谷の場合はどういうことかというと、ほぼオフボールディフェンスを捨てて、オンボールディフェンスに一極集中しています。
その結果、目の前の相手を止めまくり、素晴らしいディフェンスの数字を出しているのです。
普通はオフボールディフェンスをすることで、逆にギャップをつかれて失点したりするのですが、そのリスクを排して、とにかく1on1を止めることにフォーカスしています。
では一方で、オフボールディフェンスを半ば無視していることによる問題は生じないのでしょうか?
当然生じます。それが次の渋谷の課題になりますが、すでにちょくちょくその課題が、具体的な2つの問題となって表出しています。
それを見ていきましょう。
①圧倒的な個人技を止められない
バスケはオフェンス優位なスポーツなので、オンボールのディフェンスが抜かれる・止められないことはよくあることです。
ですので
・ヘルプ(後ろからもう1人ディフェンスが出てくる)
・ダブルチーム(抜かれる前にもう1人寄る)
という戦術が発達してきたのですが、渋谷はあまりそれを取りません。
ヘルプ・ダブルチームは、どちらも、寄ったもう1人のディフェンスのマークマンが開く点で、必ずしも万能なディフェンスではありません。ヘルプやダブルチームが必要ないときに行ってしまって、失点することもよくあるので、そのリスクを排除するためにヘルプ・ダブルチームを極力しない戦術をとっていると考えられます。
一方で、その結果、「優れたディフェンダーでも止められない素晴らしいプレイヤー」が相手の場合、シンプルにオンボールのディフェンスが突破され、大量失点につながるパターンが発生しています。
それが顕著に出たのが、10/26の京都戦です。
この試合では、岡田に23得点3アシスト、カロイアロに26得点9アシストを許し、トータルで99失点と屈辱的な失点数を記録しました。
このように、圧倒的な個人技を持つ選手が止められなくなる可能性は大いにあります。
ここまでは上位陣との対決が少なかったため、その機会が少なかったですが、
冨樫・比江島・ニュービル・テーブス・メインデル・佐々木隆成・西田優大・ガードナー・安藤誓也などなどの代表級/超一流の選手たちにコテンパンにされてしまうかもしれません。
②オフボールのカッティングに弱い
明らかに、オフボールでマークマンを見失って失点する形が多いです。
今日の試合、ぱっと目につくだけでこれだけあります。
これだけあります。FE名古屋の動きが良かったのは否定しませんが、これに絡んでいるのが
・クレモンズ
・田中
・ベンドラメ
・船生
・ホーキンソン
と特定の選手ではないことが、チームの問題であることの証明ですね。
優れた戦術家がいるコーチは、特にこのオフボールでのカッティングをうまく使ってきます。同地区のライバル、三河がその代表格です。
ここへの対処も、これからの時間で練っていく必要があるでしょう。
改善されるのか?
①圧倒的な個人技を止められない問題に対して
おそらく、改善されるでしょう。
というのも、先ほど引き合いに出した京都戦の翌日、再び京都とあい見えましたが、そこでは
岡田:16得点 6アシスト
カロイアロ:3得点6アシスト
総失点:60失点
と完全ストップではないにしろ、かなり封じ込め、ゲームには完勝しました。
どうやってこれを達成したかはよくわかっていないので、再現性があるかは確認する必要はもちろんありますが…。
また、今日の試合でも、その予兆は見られました。
このように、この試合個人技を止められなくなってきていたヘンリーに対して明確な策を打っています。これに対応し、田中もゴール下のスペースを消す動きをしており、だいぶチーム全体での連動の意思が見られています。
HCのルカも、選手たちも、それができないわけがないし、必要性を認識していないわけもないです。
おそらく、今はオンボールディフェンスの改善にフォーカスしているのでしょう。
おそらく、ルカがオンボールディフェンスに満足したタイミングで、オフボールに関しても改善が施されると思われます。
②オフボールのカッティングに弱い
ここに関しては、今日の試合も最後まで修正が見られませんでした。
なので、わからない、としておきます。
ルカ、頑張ってくれ。
まとめ
現在、リーグ最強のディフェンスチームである渋谷。
それはチームのディフェンス戦術と対戦相手がハマった結果でもあり、現在の数字以上に不安要素も見られます。
最初の強敵は代表期間明けの11/30の宇都宮戦、そして1月からは強豪との連戦が待っています。
そこまでに、代表期間も使いながらルカがオフボールディフェンスを仕込めるのか。
ここが、激戦区中地区を渋谷が勝ち抜く鍵になってきそうです。