国産ジーンズを育てる-序章『アメカジへの憧れと経年変化の魅力』
リーバイスが再び上場をするというニュースが飛び込んできた。なんと34年ぶり、つまり1985年に非公開となって以来だ。80年代といえば奇しくも日本のアメカジブームの黎明期と重なる。それは私の十代の青春時代。やはりアメカジに憧れたど真ん中の世代だ。リーバイスのビジネス界での復活と共にまたアメカジがファッション市場を席巻するのか?ここで、ジーンズを育てるというエイジングを通して、その魅力に迫っていきたい。
オッサンとジーンズ
40オーバーのオッサン世代にとって、ジーンズとは常にファッションの中心にあると言っても過言では無いだろう。
オッサンとジーンズの歴史は、80年代後半に始まったライダースジャケットにダメージジーンズというバイカースタイルでキメこんだ渋カジブームを発端に十年以上に渡りアメカジのブームが続き、その中心にはヴィンテージジーンズが君臨していた。
そして、それはあのSMAPのブレイクからピーク期までとも重なるのだ。
木村拓哉(通称:キムタム)の人気を不動のものにした名作ドラマ「若者のすべて」では、エアロレザーのジャケットにヴィンテージジーンズorチノパン、そしてエンジニアブーツというこれでもか!というアメカジスタイルに熱狂する若者が大量発生、勢いそのままに彼は94年から5年連続でベストジーニスト賞を獲得している。
さらに、その後の99年からは同じくSMAPのメンバーであり、ヴィンテージジーンズ愛好家として知られる草なぎ剛(通称:ツヨシ)にバトンタッチし、5年連続でベストジーニストを受賞、その間にヴィンテージジーンズに魅せられ、レプリカを生産する国産ブランドが続々と立ち上がり、この時期にアメカジが大衆化したと言っても良いだろう。
しかし、レプリカとはいえ、大量生産が出来ないヴィンテージの製法をとっているため、値段は高価だ。アメカジブーム真っ只中の十代、二十代青年にとってはなかなか手に入れられるものではない。私もリーバイス501の復刻版をなんとか苦労して買った記憶がある。
そんな環境で青年時代を過ごした40オーバーとなった今のオッサンたちにとって、アメカジやヴィンテージジーンズというのはファッションの原点であり、永遠の憧れであるのだ。多少は自由になるお金ができた中年になった今、再びその熱が再燃しても全く不思議ではないだろう。
ジーンズを育てるということ
エイジングをご存知だろうか?人間では加齢や老化などのことをいうが、少し前までは、これに抵抗し若さを保つアンチエイジングという考え方が流行したが、近頃では年齢に対抗するのではなく、いかに相応にカッコよく歳をとるか?という考え方に移って来ているように思う。私もこの考え方には深く同意する。
人間と同じく、ジーンズにもエイジングがある。ジーンズだけでなく革製品などでも言われる経年変化のことである。長く履いて愛用することで、色落ちやダメージができ、その変化を追うことだ。そして、その経年変化を写真などに記録して楽しむのだ。もちろん、自然な変化だけでなく、人工的に変化をさせることなどもテクニックとしてはあるだろう。そう、同じ製品だとしてもこの経年変化により自分だけのオリジナルとなるのだ。
ジーンズを育てるということは、ゲームでキャラクターを育成したり、植物やコケを育成するのと似た感覚があるのかもしれない。サザエさんの波平(通称:とうさん)が盆栽を趣味にしているように、オッサン化してくると色々なものを育成したくなってくるようだ。
さらに、ジーンズの場合はキャラクターや植物と違い、自分で身に付けるものであり、まさに一心同体、自分の分身のように感じられるのだろう。20代、30代の若い頃は加工済みのDIESEL(ディーゼル)などの海外製品を多用していたが、40代のオッサンに突入した今、他のオッサン同様に、育てる楽しみを感じてみたいというのが今回の試みである。
もちろんジーンズを選ぶ際には、品質や体型へのフィット、はき心地というのが選定基準ではあるが、育てると思うと何か親心のような感覚で海外のものより国産を選びたいと思ってしまうものである。
次に、ヴィンテージジーンズの最大の魅力と特徴である色落ちの種類を紹介しよう。ジーンズを育てるとは、新品状態から美しい色落ちを作ることなのである。
ジーンズの色落ち
ジーンズを染めるインディゴ染料は浸透力が弱く、糸の中心部まで染まっていないため、表面が擦れて中心部の白い部分が出てくる事で色落ちが起こるのだ。そしてヴィンテージでは糸の太さや織り機の不安定な動きなどにより色落ちにムラができ、そのグラデーションが美しく、カッコイイとされるのである。それでは、ジーンズの色落ちの種類を見ていこう。
アタリ
レッグの外側の縫い目の脇に沿って線状に発生する色落ち。縫い目の生地余りが裏側にあることで発生する。これをセルベッジ(通称:耳)というが、これがヴィンテージジーンズではより鮮明に出る。
ヒゲ
股の周囲に放射線状に数本発生する色落ち。ヒゲは、下半身の駆動により発生するシワが定着し摩擦によって発生する。まさにジーンズの顔とい言うべき存在。それはまさに男のシンボル言えるだろう。
ハチノス/クモの巣
膝の裏側部分にできる、蜘蛛の巣や蜂の巣のような模様の色落ち。膝下の駆動により細かく発生する。いかに普段から細かいワークをこなしているのかが明らかになる。
縦落ち
ジーンズ全体に出る縦方向の色落ち。太ももから膝にかけて発生するグラデーション。糸織り方が均一でないヴィンテージジーンズの特徴を感じることができる部分だ。
下りヒゲ
太ももの内側から膝に向けて下方向に斜めにできる線状の色落ち。ネコのヒゲの下部分を想像してもらえば良いだろう。太もものゆとりにより発生する。
いかがだろう、ヴィンテージジーンズの色落ちとは、体型や動きをそのまま反映させることになり、男の人生が顔や手の皺に出るのと同じように、それをはく人間のライフスタイルを如実に現す唯一無二のものといえないだろうか?
次に今回私が育てるジーンズを紹介しよう。2本同時進行で比較しながら見ていきたいと思う。いずれも圧倒的な品質へのこだわりとジーンズへの愛情、そしてトップを目指す野心を持つ国産メーカーであるフラットヘッドとフルカウントだ。両者ともにアメカジブーム真っ只中の1990年台に産声を上げたメーカーだ。
フラットヘッド 3009
15年くらい前に自由が丘の直営店で購入するも、あまり履いておらず、ほぼ色落ちはしていない。洗濯は糊落としの1回とその他1回程度という状態だ。
フラットヘッドは1996年創業、1950年代のアメリカンカルチャーを基として、「今と過去の融合」をテーマにメイド・イン・ジャパンにこだわり「時代を超えた創造で、世代を超えるモノを生み出す。」をコンセプトに良質なアパレルを企画・製造している。私もジーンズだけでなくティシャツやシャツやジャケットなども長く愛用している。
今回の3009は、フラットヘッドでは定番モデルで、14.5ozのテイパードタイプで、やや細めのストレート。股上は浅めで腰回りのフィット感があり、スッキリしているのでジャケットなどにも合わせやすい。染めは濃いようなのでどのように色落ちするのか見ものだ。
フルカウント 1110
なぜか無性にヴィンテージのレプリカジーンズが欲しくなり、自宅の千葉近辺でジーンズ屋さんを探していたところ発見したアースマーケットというセレクトショップを発見、何本か試着をした後フルカウントの1110を購入。
フルカウントは青年時代からジーンズ愛好者であった辻田幹春氏が、理想のジーパンを作るためにアメカジブームの1992年に創業した拘りのジーンズメーカーだ。ちなみに、購入したアースマーケットの創業は1983年、アメリカン雑貨のセレクトショップとして千葉県の成田でオープンし、店名や場所を変えながら地域で一番のセレクトショップを目指して、今のアメカジ専門店へと至っている。
今回購入した1110は、13.7ozでテイパードが効いて、スリムな割には腰回りは膨らみがありゆったり履きやすい。生地も柔らかめで履き心地良い。しかも初回ロットというオマケ付きでラッキー。色落ちだけでなく生地の変化も気になるところだ。
私も初訪だったがジーンズの品揃えは圧巻、リピート確定だ。
どうやって育てるのか?
さぁ、それでは育て始めよう!
しかし、どうやって?
まずは、ただはいて、たまに洗濯することしか今は考えていない。2本あるので、交互にはくのが良いのだろうか?その辺りは、今後の「育成記」にて展開して行きたいと思う。
まぁオッサンなので気長にやるとしよう。
オススメの育成方法がある方はぜひ教えていただけると有難い。そして、クローゼットに眠っているVansonとBUCO (The REAL McCOY'S)のライダースジャケットを久々に着用して、自分で育てたジーンズでツーリングなど行ってみたいものだ。
となると、15年ぶりのバイクも必要になるのか。。
楽しくなってきた。
(おしまい)
走りながら考える