「Okja(オクジャ)」 ポン・ジュノ監督作品
2017年韓国映画…ではなくNetflix作品。
ポン・ジュノ監督は「ほえる犬は噛まない」以降、どんどん商業的でつまんなくなっていきそうで悲しいなあ…
でも、まあNetflixだし、適当に見てみるか。
とモチベーション低めでテレビをつけたが最後。
予算のパワーアップと共に「ほえる犬は噛まない」に負けずとも劣らずの演出と皮肉が炸裂。完成された世界観は映画館で見たかった!と歯をくいしばる始末だった。
素晴らしいアクション映画である。映画ではないのか。くそー!
監督:ポン・ジュノ
脚本:ポン・ジュノ・ジョン・ロンソン
出演:アン・ソヒョン、ティルダ・スウィントン、ポール・ダノ、ピョン・ヒボン、ヨン・ジェムン、ジェイク・ジレンホール
撮影:ダリウス・コンジ
<あらすじ>
韓国の山間で暮らす少女ミジャ。大きくて利口な動物オクジャと平穏な毎日を送っていた。ところがある日、大企業ミランド社がオクジャをニューヨークに連れ去ってしまう。ミランド社CEOルーシー・ミランドが自己顕示欲を満たすべく、壮大な計画のためにオクジャを利用しようとしているのだ。オクジャを救うミジャの壮絶な旅が始まる……。−映画.com参照
物語・脚本について
ポン・ジュノの脚本力は類稀なるものである。
このOkjaでもその能力は健在。知らぬ間に伏線が張られ、物語の展開に魅せられ、期待を裏切られ、手に汗握る展開にいつも感服するが、今回は秀逸も秀逸。笑ったり、泣いたり、怒ったり終始感情が揺さぶられた。
ふざけた物語やエピソード、キャラクター設定が点在しているが、物語主軸が非常に重い。
人間批判、資本主義批判が痛烈に行われている。一見、ファンタジーであるものの、我々が教授している資本主義の恩恵を疑わざるを得ないエンディングである。
観てから2、3日心に残った。心に傷がついた、とも言えるかもしれない。
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テーマについて・「いのちの食べかた」との類似性**
Okjaは実在しない動物ではあるが、実在している「現状」ではある。そしてあまり問題視されていない所でもある。
「いのちの食べ方」をご覧になった方はいるだろうか。
この作品は観るのが非常にきついが、撮影している側の眼差しはそこまで痛烈ではない。残酷だが人間が生きるとはそういうものだ、という肯定感が少し存在しているように思う。
けれどポン・ジュノは肯定感をしらみつぶしにし、人間である傲慢さを全否定する。
それを時にギャグでラッピングするので、目を背けたくなるシーンが多々あった。さらに一見「ファンタジー」であるため、心を許しがちだがあまりの残酷さに心が傷つく。
「現実以上(=ファンタジー)」の世界を見せることで「存在する過酷な現実」を客に見せつける演出は圧巻。と同時に、胸糞悪い。
…そもそもポン・ジュノ監督はそういうスタンスで映画を作り続けているので、今回は大成功なのではないだろうか。
キャスティングについて
ただ重大な難点があると感じたのも事実。
ポン・ジュノ作品はやはり韓国人に重要人物を演じてもらわないとうまくいかないことが多いのではないか、ということ。
ポン・ジュノ作品の常連である、ピョン・ヒボン氏がまたいい感じに空気の読めない面倒なやつを演じていたり、主人公の女の子や特にユン・ジェムン氏の存在も、面白いことが始まる空気作りをしている。
そしてアメリカ勢、ジェイク・ギレンホールは、彼だからこそ成立する形で映画の中にしっかり存在していて観ていて「しっかり不快」だった。
素晴らしい!
…が、それは彼が素晴らしい役者だから。それは過去作品で証明されている。
ポール・ダノも、彼自身が持ついかがわしい空気が「得体の知れないアメリカの団体」という背景を強化してくれている。
が、なんか観たことのある演出…というか、、、
「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」の牧師とおんなじ雰囲気だったので、もっと別の顔を観たかったという思いが最後まで拭えず。
韓国勢外の役者陣の演出にまりがない印象を受けたのは、ポン・ジュノ監督の前々作「スノーピアサー」でも同様。
もう少し、もう少し完成度を上げてくれれば、もっともっと身の毛がよだつ経験ができたのに!
特に準主役になるティルダ・スウィントン。
とても素晴らしい女優さんだと思うがポン・ジュノ演出にかかると彼女を全くいい女優だと思えなくなる。なぜだ。
とややネガなまとめ方をしてしまったが、
それは、ポン・ジュノの類稀なる才能に嫉妬心が湧いただけ。
素晴らしい作品です。
あ、撮影のことを書くのを忘れてしまった…
映像の美しさとパワーは圧巻。
さすがダリウス・コンジ。確かにジャン・ピエール・ジュネの作品で流れる空気みたいなものがあったかもしれない。
もう、駄作なんかを映画館に流さず、これを映画館で上映してない業界人はアホか!怒
まとめ
ポン・ジュノの脚本運びをもっと丁寧に勉強すべし。