YUU∞

小説(短編、長編)、ポエム、朗読脚本を更新していきます。

YUU∞

小説(短編、長編)、ポエム、朗読脚本を更新していきます。

最近の記事

フリー台本【タイトル:ささいな勇気】

「空を見ているとね、救われるの」 君の顔は見えない。声は少し震えていた。 「私の心は誰にも分らないから」 「誰の心なんてわからないだろう。俺の心だって。何を思っているのかなんて誰にもわからない」 俺は食い気味に返した。屋上は少し肌寒かった。木々は少し赤く染まりつつある。そんな中、君に向き合っている。 「それを言われると何も返せないな。ずるいよ」 君は少し俺の目を見つつ視線を下に反らした。 「君にとって些細なことでも私にとっては重大なことなの。君が見ている風景は私が見ている風景

    • フリー小説【タイトル:未来のドッペルゲンガー】

      「どうしたの?顔色悪いよ」 と誰かが聞いてきた。この人の名前知らないと思いつつ答えることにした。 「大丈夫です。心配してくれてありがとうございます」 と言うと知らない人は前の席に座り身体を僕に向けてきた。 「辛いことあったの?相談乗るよ」 僕は知らない人に言わないといけないんだよと思った。 「いや、大丈夫です。今日、バイトあるんで帰りますね」 「ちょっと待って。大丈夫じゃないでしょ。このままじゃ壊れちゃうよ」 僕が立ち上がろうとした時に知らない人が腕を掴んできた。 「壊れても

      • フリー台本【タイトル:自由な休日】

        目を覚ますと朝日がカーテンからこぼれていた。 僕は体を伸ばして立ち上がる。 ふと時間を見ると9時になるところだった。 「結構寝たな」 と思い、リビングに向かう。 今日は休日だし何をしようかなと思案する。 車の洗車もしたいし日々の疲れをとるために温泉もいいな、 カフェで小説も書きたいし、本も読みたい。 やりたいこといっぱいあるのに時間が足りない。 適当にテレビをつけていると、大盛りの特集をしていた。 特大カレー、特大かつ丼、特大天丼。 「そんなに食べれないよー」 と心で呟く。

        • フリー台本【タイトル:一瞬の夏雲】

          茜空に染まった空を眺めながら、畦道を歩く。 セミとカエル達の大合唱を聞きながら自転車を押していると、空高く広がった入道雲が見えた。 遠い場所から雷がなって、光っている。 私は心の中で「夏だな」と思った。 暑くて儚くて尊い夏。 一瞬で過ぎ去ってしまうけど、楽しい夏にしたいなと思う。 そんなことを思いながら真っ直ぐに伸びた畦道を歩いていく。 真っ赤な空に一筋の飛行機雲が私を導いていた。

          フリー声劇台本【タイトル:形見のおまじない】

          ○「(モノローグ)私は今でも幸せになっていいのかわからずにいる。お母さんとお父さんは許してくれるだろうか・・・」 ●「おじゃましまーす」 ○「○○入って入ってどうぞ・・・ってびしょびしょじゃない」 ●「あと少しで着くって時に、急に雨降ってきて・・・最悪」 ○「あぁ・・・今、晴れてるよ。はい、タオル」 ●「ありがとう。えっマジで。タイミング悪っ」 ○「拭いたら中に入って。そのままだと風邪引いちゃうからお風呂沸かす?」 ●「夏なのに今めっちゃ寒い。お風呂お願い出来る?」 ○「りょ

          フリー声劇台本【タイトル:形見のおまじない】

          フリー台本【タイトル:催涙雨(さいるいう)の奇跡】

          雨降る中、私は傘越しに灰色の空を眺めていた。 「なんで今日、雨なの」 そう呟きながら視線を下に戻し地面に打つつける雨粒を見た。 今日は7月7日、七夕だ。なのに生憎の雨だった。 織姫と彦星出会ないじゃん。 と思っているとスマホの通知が鳴った。 彼からのメッセージだった。 「今日、忙しすぎて残業することになった。今日中に帰れないかも」 という内容だった。 私は既読をつけて頭を抱える。 雨だから会えないのかなと七夕伝説と照らし合わせる。 「わかった。気を付けて帰ってきてね」 と返信

          フリー台本【タイトル:催涙雨(さいるいう)の奇跡】

          フリー台本【タイトル:アイスコーヒー】

          「相談があるんだけど」 と君からメッセージが来た。 僕は「わかった」と返信をして家を出た。 待ち合わせは19時で駅前の時計台。 君といつも待ち合わせをしている場所だから10分前についた。 「今日は暑いな」 と呟きながらスマホを見る。 熱帯夜が10日連続と適当につけたテレビの天気予報で言っていた。 日本の夏は暑さもきついけど湿気が一番きついんだよなと思う。 そんなことを考えていると君が手を振ってきていた。 「お待たせ。待った?」 「今来た所だよ」 「ならよかった。でもあっつい

          フリー台本【タイトル:アイスコーヒー】

          フリー台本【タイトル:ものがたり】

          良い物語に触れると僕は救われる。 その反面、悲しくなる。 どんなに書き続けていても夢には手が届かなくて、 自分の能力に限界を感じる。 押しつぶされるくらい感情が溢れて逃げ出したくなる。 頭では書かなきゃいけないと思っているのに 感情では逃げたい、書きたくないと思っている。 「どうせ無理だ」とどこかで諦めている。 時間は有限だ。無限にはない。 残された時間で僕は夢を追いかける。 そしてこの物語も誰かの行動を変えるかもしれない。 顔も知らないあなたの心へ。 暗い気持ちになったり、

          フリー台本【タイトル:ものがたり】

          フリー台本【タイトル:月灯りの恋模様】

          豪雨が嘘のように星が見えている。水溜まりは月を揺らしていた。 「あんなに降っていたのが嘘みたい」 君は僕の顔を見るために屈んでいった。 「雨宿りしてよかったね」 「あの提案は大正解だったよー」 豪雨降る中、僕たちはバス停で止むのを待っていた。少し涼しいなと思いつつ君とずっとしゃべっていた。よくあんなにしゃべって話題が尽きないものだと思う。 「こんなに月が見えるときはあの言葉を言うべきだよね」 と君はからかうように僕を見ている。 「こてこてすぎて言いたくない」 「えっー。言って

          フリー台本【タイトル:月灯りの恋模様】

          フリー台本【タイトル:教えてよ】

          ねぇ、神様、僕が生きている意味を教えてよ。 代わりなんていくらでもある社会で 僕の存在なんてちっぽけで消えたくなるんだよ。 希望も夢も未来も 目の前からこぼれて落ちていく。 絶望も失望も過去は 心に残り続け侵食し続ける。 ねぇ、神様、僕が生まれてきた意味は何ですか? 歩いても歩いても目の前は闇しかない。 人と合わせるのは 辛くて苦しいよ。 ねぇ、教えてよ。神様。信じるからさ。 声を枯らして叫び続けるから。 ボロボロになるまで書き続けるからさ。 教えてよ。神様。

          フリー台本【タイトル:教えてよ】

          フリー台本【タイトル:満たすもの】

          本当の自分ってなんだっけ? ある程度人に合わせられるし、 ある程度お世辞も言える。 鏡に映る自分は偽物に感じる。 自分を偽って生きることも人生だろう。 空っぽの心を満たすものは 優しさ?言葉?憎悪?悲観? 僕は物語に満たされていた。 自分が経験しないことや 自分が関わらない人達、 そんなことを物語は教えてくれる。 だから僕は今日も物語に触れる。 あなたの心を満たすものはなんですか?

          フリー台本【タイトル:満たすもの】

          フリー台本【タイトル:キラキラと輝く日】

          仕事が早く終わってウィンドウショッピングをしている。 平日の大型ショッピングモールは人が少なく歩きやすい。 「どこに行こうかな?」 心の中で考えている。 「服屋さんに行くのもいいし、本屋さんに行くのもいいな。明日、休みだし映画もいいかも」 と思考を巡らせる。 考えつつ歩くのもいいなと思い、イヤホンをつけてお気に入りの曲を流す。 おしゃれな曲が流れて私はキラキラ輝いているように感じた。 せわしなく何も変わらない日々だけど、ゆっくり過ごすのもいいなと思った。

          フリー台本【タイトル:キラキラと輝く日】

          フリー小説【タイトル:恋文】

          この時代に手紙で告白されるとは思わなかった。 メッセージで気持ちを伝えてくることが多い中、君は変わっていた。 私の前に来て、 「受け取ってください。僕の気持ちです」 と頭を下げて渡してきた。私はドキドキしながら受け取り、 「ありがとう」 と返した。君は私の顔を見て赤らめながら微笑んだ。 私は自分の部屋に入るなり、ベッドにうつ伏せになり、足をばたばたさせた。 君からもらった手紙を広げ、君が綴った気持ちに触れた。 「この手紙を読んでくれてありがとう。君の前では気持ちを伝えられ

          フリー小説【タイトル:恋文】

          フリー小説【タイトル:月夜のたゆたう】

          「満月になったらまた会いましょう」 君は月夜の光が照らした下で寂しそうに言った。 僕は頷くことしかできなかった。 君の手が離れる。 「また会えるよね?」 僕は問うと 「きっと会えるわ」 君は夜の闇に消えていった。 君と出会ったのもこんなキレイな満月の時だった。 水面(みなも)が風で揺れて月の光が漂う。 君は岸辺に立って月を眺めていた。 月明かりが照らす君はとても妖艶に見えた。 水辺の方に歩いて行かないか不安になり僕は話しかけたのがきっかけだった。 僕と君は社会に溶け込めず傷

          フリー小説【タイトル:月夜のたゆたう】

          フリー台本【タイトル:叫べ】

          さぁ、この空に一筆書きで夢を描いて行こう。 さぁ、手を伸ばして。 青い青い空に叫んで見た。 好きな言葉、 好きな格言、 夢、希望、未来 周りには誰もいない。 1人だけの世界で叫びまくった。 巡り廻る世界で時の早さに振り回されているけど 一旦立ち止まって空を見てみるのも必要だと思う。 雲の流れに身を任せて。 大きく深呼吸。 さぁ、前を向こう。 歩き出そう。 未来へと。

          フリー台本【タイトル:叫べ】

          フリー台本【タイトル:今日もいい日】

          葉桜が舞う中、僕は公園を歩いている。 お日様が降り注ぎすごしやすい季節でひなたぼっこがしたくなる。 そんなことを思いながら海が見えるベンチに座った。 木々たちが風で揺れる音と波の音が聞こえる。 僕は本を開く。休日はここで本を読むのが日課だ。 誰にも邪魔されない空間。家にいるよりかは集中できる。 自然の音が僕を包んでいく。 お日様の匂い、 風で木漏れ日が揺れる音、 虫の合唱。 本の世界に入り込んでいても体でも自然を感じる。 ふと、目線を水平線に向ける。 海は日差しでキラキラと輝

          フリー台本【タイトル:今日もいい日】