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すいみつ 担当:須田さ紀え


盆の夜にストーブを焚くこの家はどんな桃でもすいみつと呼び


しりとり手帖、第4回担当の須田さ紀えです。
mg.』というZINEに小説や短歌・エッセイ・コラムを寄稿しています。

しりとり→竜宮城→ウスターソース に続くのは「すいみつ」。
わたしの出身地(北海道)の方言で「桃」を指す言葉です。
語源の「水蜜桃(すいみつとう)」は主に白桃を指す言葉ですが、北海道では方言として桃の種類を問わず使われているとのこと(参考:北海道の方言「すいみつ」【意味・使い方・会話文】|方言Lab)。
なので、北海道では白桃も黄桃も「すいみつ」呼びです。シンプル!

スイカ、メロン、びわ、夏を感じる果物はいろいろあるけど、わたしにとって一番夏らしい果物はずっと桃で、もっと言うとお盆に祖母の家で食べるすいみつでした。
祖母が住んでいたのは、稚内のななめ下あたりにある小さな町。お盆の時期になっても夏日が来ないどころか、朝晩はストーブが必要なくらい冷え込む地域です。
子どもの頃は毎年お盆の時期に家族で祖母の家へ帰省していたのですが、仏壇によく頂きものの桃がお供えされていたこと、夕食後に祖母がその桃を「たいした(とても)いいすいみつだから食べなさい」と孫のわたしたちに剥いてくれたことを今も覚えています。

祖母(+同居している伯母夫婦)が札幌に引っ越してしまったので、すいみつを剥いてもらったあの家に帰省することはもうないのだけど、
それでも今回の短歌を読み返すとあの家の記憶や夜のひんやりした空気をまた味わえるような気がします。

というわけで、次回は「つ」。
グラフィックデザイナーとして大活躍中、そして最近はホラー・オカルト愛が高じて怪談師としての活動をはじめた羽尾万里子(はおまりこ)氏にお願いします。お楽しみに!

※「しりとり手帖」の説明はコチラから

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