文豪ストレイドッグス同人誌太宰✖敦
「ど、どうしたんですか太宰さん、急に」
「いいから黙って着いてきたまえ、敦くん」
太宰は探偵社の廊下を敦の手を掴んでずんずん歩いてゆくと
倉庫の扉を開け素早く敦を押し込めると鍵をかけた
「さて、これで誰の邪魔も入らない」
「ふ、ふざけてるんですか太宰さん」
「これがふざけている顔に見えるかね」
とても見えない
これは⋯これは⋯
ポートマフィアの⋯
顔だ⋯
太宰がかつてその身を置いていた
ヨコハマ史上最大の巨大殺戮機関
そこで最年少幹部だった太宰がどんなことをしていたのか
詳しくは知らない
想像はできるけども
想像したくもないけれども
「僕が君を助けた本当の理由を知りたいかい」
「僕がうっかり自殺未遂中の太宰さんを助けっちゃったからでしょう」
ふふ、と太宰は可笑しそうに笑った
「そろそろそれを君に教えてあげようと思ってね」
太宰は後ろ手に敦を羽交い絞めにし壁に押し付けると
ふっと耳に吐息を吹き掛けた
「虎になって抵抗しようとしても無駄だよ
私の異能力は承知してるだろう」
もちろん知ってる
太宰の異能力無効化は
この人には絶対敵わない
敦を前に向かせ太宰はそっと唇を重ねてこようとする
その寸でのところで敦は叫んだ
「あ、芥川さんはいいんですか」
「何がだね」
「あいつは心から太宰さんを慕って⋯」
「こんなときにあいつの名前は聞きたくないな」
太宰のキスはまるで処女を相手にするように優しかった
「これが君を助けた理由だよ」
拘束していた手をほどいて太宰は敦を抱きしめた
何が何だかわからないけど
太宰さんなら嫌じゃないんだなあとぼんやり敦は思った
「でもキスだけで解放してもらえるなんて思ってはいないだろね」
その顔はまたポートマフィアの顔に戻っていた
「敦くん自分で服を脱ぎたまえ」
「は?」
「だから僕に君の全てを見せろと言ってるんだよ」
下から舐め上げるような視線
こんな太宰さん見たことがない
暗示にかけられたように敦は自分のシャツのボタンを外していった
それを眺める太宰の目は
どんな非道でも顔色一つ変えずに行っていたあの頃そのものだった
全裸になった敦を指でなぞりながら
太宰は体中に巻いた包帯をリボンのように解いた
「わたしはいつも究極の死を求めている
そして死とセックスとは紙一重なのだよ」
さっきとはまるで違う歯と歯が当たろうとも気にしない
ディープキスを行いながら
太宰は手と指で敦に愛撫を加えていく
「あっああっ太宰さんっでもっあくた⋯がわが⋯知ったら⋯」
「芥川の名は聞きたくないと言っただろう」
肩に噛み跡をつけられて敦はまた喘いだ
「君が可愛いから助けたその可愛い君を可愛がってる
それに何の問題があるんだね」
また後ろ向きに壁に押し付けられて
敦の中に太宰が入ってくる
「あっやめっ太宰さんっああああ!」
「可愛い声は封印してくれないか
すぐ逝きそうになる」
そんな台詞を言っておきながら
今太宰がどんな顔をしているか敦にはわかる
とっておきの獲物をしとめた時の笑顔
虎に変身するときの体の熱とは全く別物の
甘くとろけるような熱が全身を駆け巡る
「受け止めてくれ敦くん
私の死と生の証を」
より一層激しく出し入れされて
敦もその瞬間叫び声を禁じえなかった
「ほんとうに可愛かったよ敦くん」
驚きの速さで包帯を巻きなおしながら太宰は笑った
その顔はもうポートマフィアのそれではなかった
いつも國木田さんとふざけている
あの太宰に戻っていた
壁にへたり込んだままの敦に
落ち着いたらなるべく早く帰って来てねと言い残して
太宰は倉庫から出て行った
ほんと芥川に知れたらどうなるんだろう
それが恐ろしいよ
今起きたことの重要性より
敦にはそれが憂いて仕方ない
はあとひとり倉庫の隅でため息をつく敦であった