レモンサワー

真っ二つの月
レモンサワーが飲みたくなる
あれをぎゅって絞ったら
何人分になるかしら
それを世界中の人たちに振舞って
みんなで乾杯できたなら
戦争なんかなくなるんじゃないかな
まだ飲んでいないのに
酔っ払いみたいなことを考えてる自分に
ちょっと笑って照らされながら歩く帰り道
スーパーに寄ったら
ごろごろ並んでいる中から
一番きれいなレモンを買おう
手のひらの小さな月
切っちゃうのがもったいないくらい
つやつや輝く私だけの月
もしかしたらあなたも買ってくるかもしれない
前に半月を指さしながら
今日はレモンサワーの日だわと言った私を
面白そうに笑ってたから
覚えててくれてるかな
まだ結婚する前のことだから
あなたのことをあなたって呼んでみたいけど
恥ずかしくって出来やしない
もしあなたが私のことをおまえって呼んだら
顔面パンチするけどね
炭酸とシロップと半月レモン
用意はできてるから早く帰って来て
世界平和を祈りながら
あなただけを愛してる
矛盾してるね
可笑しいよね
でも人を愛したらみんなそうなってしまうのよ
少しだけ悲しいけど
窓から覗く月を眺めながら
少なくとも今ここにある二人分の平和に感謝する
やっぱりカットレモンにしか見えない
私の感性はちょっと歪んでて
その歪みを美しいと思ってくれた
世界でたった一人の男を
優しく照らされながら待っている