ダンスパーティー

何度か寝た男のことなんて
忘れてしまえばいいのにね
私の小さな頭を撫でながらおばあちゃんは
あなたは優しい子ね
と何度も繰り返すのでした
織り成した他人を忘れないのが
優しいということなのですか
私は私を薄情だと思います
そうでもしなければ生きていけない世の中だと
おばあちゃんは花の好きな人でした
小さな頃からたくさんの花を教えてくれました
ねえ 出来る事なら 叶うことなら
花畑で花にまみれて馬鹿みたいに
あなたと踊りたいのです
でも頭の中に撒いた種は芽吹くことはありません
頭の中にお花畑を作る力は
さすがにおばあちゃんも私には遺してはくれなかった
大人になって
女になって
求められるがままに男と寝ました
愛という言葉が心をかすめたこともありました
そして私はあなたに辿り着く
人生から絶対にいなくならないでほしい人に
彼を思うとき
一輪の花は芽吹きます
いつの日かそれらは広大な花畑を作り上げるでしょう
膝まづいて手を差し出したら
二人きりのダンスパーティーの始まりです
夜が更けるまで踊り明かしましょう
今まで織り成したすべての男たちが
空へと舞い散って
私は少し泣くでしょう
世界でたったひとりの人と出会えたなら
思い出には一つずつ小さなお墓をこしらえて
振り返ることなく去って行く
それが大人の女の生き様というものですよね
もう迷わない愛を手に入れた私は
優しいだけじゃない
強くもなれましたよ おばあちゃん

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