89歳

死ぬ前日まで酒飲んで煙草吸ってたい
そんなに長生きはしなくていいから
行きつけの喫茶店で嫌われ者の
89歳の口の悪いおばあちゃんは
なぜか私にだけとっても優しくて
あなたは可愛いわね可愛いわねと言ってくれる
その人が帰った後お店の中では
ママさんも他の常連さんも
悪口言い放題だけど
ヴィトンのキャップを被って煙草をくゆらす姿は
なかなかカッコイイと思うんだけどな
旦那さんは冗談で私が気に入られてるもんだから
遺産を狙えと笑ってる
確かに指にはいつも大きな宝石が光ってて
お金持ちなんだろうけど
でもそれより89歳になっても
自分の足で喫茶店に来て
煙草を吸ってるのがすごいじゃない
放っておくと他のお客さんにケンカ腰になったりするから
ママさんはそういう時私を彼女に差し向ける
そうすると大人しくなるから
私は猛獣使いか
帰りたいなあと思いつつ話が一向に終わりそうにないので
仕方なくコーヒーをもう一杯
私お店にどれだけ貢献してるんだ
でも一人暮らしのお年寄りって寂しいんだろうな
誰かに話を聞いて欲しくてここに来て
思い通りにならないとついわがままが出ちゃう
全部分かってるから私でよければ話し相手になるよ
遺産はいらないから
89歳までは生きたくないけど
おばあちゃんは私の目標でもある
だってヴィトンのキャップ被って煙草を吸うおばあさんなんて
中々いやしないし
超イケてんじゃん

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