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『のび太と夢幻三剣士』コミックス版も読んでみた
今までなぜか「大長編ドラえもん」にあまり触れてこない人生だったため、今更慌ててAmazonプライムで履修している所である。
先日は、『ドラえもん のび太と銀河超特急』を初めて観た。
文字通りの「ドリーマーズランド」にワクワク。のび太が射撃で大活躍、スネ夫のメタ発言、超かっこよく窮地を救うジャイアンなど、見所満載。
めちゃくちゃ面白くて、子と一緒に盛り上がった。
同時に、「確かに、こういうエンタメ的に優れた作品と比較すると、『夢幻三剣士』が駄作扱いされるのも理解できる」と感じた。
『銀河超特急』は明らかに作者の筆が乗っている感じがするし、『夢幻三剣士』は、「えーと、うーん、・・・・」と立ち止まりながら考えて、創作の袋小路に入り込んでしまっている雰囲気がある。
後日、たまたま立ち寄ったブックオフで『銀河超特急』と『夢幻三剣士』のコミックス版を見つけたので、それぞれ読んでみることにした。
『銀河超特急』は細かい相違点はあるものの、おおむね映画と同じ。たった一巻で完結していると思えないほど充実の内容。
最後のコマで、地球に降り立つ場面は、大冒険を終えた安堵感と充足感に満ちている。
さて、『夢幻三剣士』。こちらは気になる所が多数ある。
映画とコミックスで違う点も結構あった。
・ユミルメ国の王様
映画では、ユミルメ国王がのび太たちの先生と同一であるような描写がされていたが、コミックスにはなし。
・クライマックス前
のび太が夢の世界に向かう勇ましい場面。
映画では挿入歌『夢の人』が流れる激アツシーンなのに、コミックスではその場面を背景に、エンディングの『世界はグー・チョキ・パー』の歌詞が書かれていて、かなりマヌケなことになっている。
・未来デパートの回収員
最後に「気ままに夢見る機」の回収に来るのが、コミックではモブっぽいキャラだったが、映画ではトリホーに似た顔のロボットだった。
・ラストシーン
コミックスではしずかちゃんが「ゆうべ、のび太さんの夢を見ちゃった。かっこよかったわよ」と告げ、テンションの上がったのび太は、しずかちゃんとかけっこしながら学校に向かうという、明るく健全なラストだった。
ますます、映画の不気味な演出は何だったのか?と思ってしまう。
考えようによっては、コミック最後のコマで、最終決戦に参加していないはずのジャイアンとスネ夫が眠そうに登校する姿が描かれているのは、謎といえば謎。
以下は映画・コミックス両方に共通するモヤモヤ点。
・「三剣士」というタイトル
やはり「三剣士」を謳うなら、ラスボス戦はのび太・ジャイアン・スネ夫で戦うべきだった。
あるいは、のび太「と」三剣士ということで、のび太と、ジャイアン・スネ夫・しずかちゃんの三剣士を強調する場面が欲しかった。
・夢の法則の矛盾
序盤で妖精シルクが、夢の中での法則について「現実世界でだめなほどりっぱになれる」と言った後で、ドラえもんが「やっぱり注意書きの通りだね。『現実感を高めるため、主人公の性格や能力はそのままで夢世界に入ります』」と発言している。
これ、矛盾しているような気がする。注意書きの通りだとだと、「ダメな人は夢の中でもダメ」ということになるのでは?
・かくしボタンが活かされていない
夢と現実を入れ替える「かくしボタン」の必要性に疑問。おそらく、当初想定されていたという、夢と現実が交錯するような展開の名残りであろうが、通して読むと「これ、意味ある?」という感想になる。
しかも、敵を倒し夢から覚めた時点で、もう一度かくしボタンを押さなければ、夢と現実は逆になったままではないか。
つまりあのラストは…。
・しずかちゃんの扱い
妖精シルク・シズカリア王女・剣士シズカール、どれも中途半端に感じる。
とはいえ、レアな一人称「僕」のしずかちゃんが見られるのは魅力。
コミックスでは、竜の温泉に浸かる場面でがっつりヌードが描かれているし、ウェーブの掛かったロングヘアを下ろしているのがやたら艶かしい。
・仲間となるゲストキャラの不在
のび太たちと共闘するゲストキャラがいないのは寂しい。
『銀河超特急』での未来人3人組のようなライバル的存在や、ボームのような頼もしい存在が欲しかった。
・敵の目的がわかりにくい
これは私の理解力の問題かもしれない。
ユミルメ国の征服→そのためには予言を回避しなければならない→白銀の騎士の登場を阻止=のび太というヘボ騎士を現実世界から連れてくる、というのが回りくどく感じて、読みながら「で、敵側の目的って何だっけ?」と忘れてしまう。
散々言われているように、トリホーの立ち回りも意図不明で、ただただ不気味な印象を受ける。
『銀河超特急』は、「宇宙制服をたくらむ寄生生物・ヤドリの親玉を退治し、地球へ帰還する」という、子供でもわかりやすい設定だっただけに、こねくり回したような感じがした。
言うまでもなく、藤子・F・不二雄は短編の名手である。
一方、長編に苦手意識を持っていたとも聞く。
確かに、場面場面の面白さはあるが、全体を通して読んだ時に「釈然としなさ」を、『夢幻三剣士』には感じた。
執筆当時、F先生の体調が悪化していた影響も大きいだろう。
今後、この作品の設定を活かして、より細かい所まで練られた、リメイク版の劇場版「新・夢幻三剣士」が出来たら面白いかも?なんて思う。
もちろん、現代のCG技術を駆使した「新・銀河超特急」にも期待。
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