ハチミツ二郎のnoteは日記文学だぜ
10代の頃、お笑い番組が好きだった。
あえて「お笑いファン」と言わないのは、当時田舎住まいの貧乏女学生で、ライブに通ったりDVDを買ったりといった「お金を落とす」行為が出来なかったので、ファンを名乗るのは気が引けるからだ。
(同じ現象がハロプロに対しても起きている。曲はめちゃくちゃ聴いてるがファンは名乗れない。)
その代わり、当時は『爆笑オンエアバトル』『エンタの神様』『笑いの金メダル』といったネタ見せ番組がいくつもあったから、そういう番組を録画して繰り返し観ていた。
不登校状態の私を心配して訪ねてきてくれた幼なじみに、3倍録画モードのVHSいっぱいに録画したネタ番組を6時間にわたって観せるといった奇行も働いたことがある。
当時特に好きだったのは、インパルス、キングオブコメディ、田上よしえ、東京ダイナマイトだった。
今回記事を書くに当たって、それぞれの現在を調べてみた。
・インパルス
→堤下が度重なる交通事故を起こし謹慎していたが、昨年10月に活動再開。
・キングオブコメディ
→2015年、高橋の逮捕を以って活動停止。
・田上よしえ
→2022年に女優転向。
00年代初頭のお笑いブームから10数年が経っているから仕方ないとはいえ、少し寂しい気持ちになる結果となった。
そして東京ダイナマイトは、つい先月(3月24日)、漫才師としての活動休止。
このニュースを見て、私は「ライブを観に行けばよかった」ととても後悔した。10代の頃に大好きで、今でも不意にネタのフレーズが浮かぶほど好きなのに、なぜ舞台で漫才する2人を観に行かなかったのだろう。
やるせない思いで過ごしていたら、X(Twitter)のタイムラインに、ハチミツ二郎氏のポストが流れてきた。二郎さんもnoteを書いているらしい。何気なくリンクをクリックしてみた。
タイトルの通り、内容は二郎さんの日々を綴った日記である。
二郎さんは、芸人とIT企業の二束のわらじを履き、透析を受けながらシングルで小学生の娘さんを育てるという、大変な毎日を送っているようだった。
私も同じ年頃の子を育てている。自分が思春期の頃に好きだった芸人さんが、同じ時期に子育てしているというのはなかなか不思議な感じがする。
同年代の子が居るだけに、日記に登場する娘さんの姿がありありと浮かんできた。
文章はごく淡々と綴られているが、娘さんの笑い転げる姿、悲しみ、時に寂しさや怒りまで伝わってくるようで、ちょっと胸がキュッとした。
たぶんもっと書きたいことはあるのだろうが、全体的にはかなり抑えたトーンで書かれている。普段の二郎さんの語り口そのままのトーンだ。
特に夫婦間のことなど、当事者にとっては客観視が難しい問題のはずだが、ごくフラットな描写がされていると思う。
また、生活人としての二郎さんのようすも興味深かった。とか言うと、動物の生態の観察みたいだけど。
体調の優れない中、リモートワークや家事育児に追われ、文字で読むだけでもめちゃくちゃ美味そうな料理を作る。猫ちゃんを迎える。テレビを観てゲームをする。何時に起きる、何時に寝る。
芸人としてのちょい悪キューピー姿しか知らなかったので、なんか、「生活してるんだな」という変な感動を覚えた。ある種キャラクター的だった「芸能人」である二郎さんの、身近な息遣いみたいなものを感じた。
日記は365日分、記事としては48本に及ぶが、気付いたら#34まで読んでいた。残りも今日中には読み終えるだろう。
もともと日記文学は好きかもしれない。川端康成の『十六歳の日記』とか、板尾創路『板尾日記』シリーズも好きだ。その人の目線を通した世界が脳内に流れ込んでくる感じが良い。
日記というのは元来生々しい趣がある。その生々しさに取り込まれて、「自分ならこういう場合どうするだろう、どう考えるだろう」という、自我が押し流される気がする。
つまり我々読者は、誰かの日記を読む間、「その人自身に成り代わる」。
これは下手な映画より現実忘却力がある。だから私は、誰かの日記を読むのが好きなのかもしれない。
(私は夢日記ブログを書いているから、それを誰かが読んでいる間、誰かは「私」になっている。こんな愉快なことはない。)
二郎さんの日記には、一般的には「修羅場」とされる場面も出てくる。しかし、攻撃的だったり読んでいる側が辛くなったりする描写はほぼない。安心して読んでいられる。
読み進めると、何かこう、脳がマッサージされているような、軽い瞑想効果さえある気がしてくる。
まあ、私が以前から東京ダイナマイト好きであるという前提があるせいかもしれないが、なぜだか心地よい文章であることは確かだ。人柄だろうなあ。
興味のある方はぜひ#1から読んでみて欲しい。
多分この記事が第一回目↓
そして、私がこの記事を書いている途中でタイムリーに投稿されたこちら(有料記事)↓もぜひ。
ずっと「マジか…マジかよ…」と呟きながら読んだ。ショックもあったが価値ある記事だった。
東京ダイナマイトに笑わせてもらった。泥のような思春期を乗り切れた。大袈裟に言えば、生かしてもらった。
今も映像や文章を通して楽しませてもらっている。感謝しかない。
だけどもっと、まだまだ、活躍が見たい。
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