どうすれば、ターン制バトルで『戦術性』を作ることができるのか?
今の主流はアクションゲームですが、私はターン制のゲームも好きなんですよ。そもそもアクションとターン制のゲームって、面白さの方向性が違うので比べる物ではないんですけど。
で、方向性が違うわけだけど、アクションゲームに対してターン制のゲームの利点って何だろう?と考えてみるとですね。
ターン制バトルはじっくり考えることができる、戦術性の高いゲームを作る事ができるのが利点
だよなぁ……ってところまで考えて、思ったんです。
RPGのコマンド式バトル、戦術性の高いものって少なくない?
最強技もしくはMP効率の良い技をぶっぱしていれば良かったり、強い全体攻撃とかくるけど毎ターン全体回復していれば良かったり。「考える」というよりは「状況に合わせて決まった行動」をする傾向が強かったりします。
その一方で、ターン制バトルでも「Slay the Spire」なんかはちゃんと戦術性があります。少し前からインディーゲーム界隈で人気の「デッキ構築型ローグライク」ですね。この違いは、いったい何でしょうかね?
っということで。この記事では
どうすれば、戦術性の高いターン制バトルを作る事ができるのか?
↓
戦術性を作るために必要な要素は何があるのか?
について、既存のゲームを分析しながら語っていこうと思います。
◆戦略性と戦術性の違い
さっきから、戦術性、戦術性、と連呼していますけども。
色々と語る前に、『戦略』と『戦術』が混ざるといけないので、せめてこの記事の中ではハッキリと区別しておきましょう。以下の認識で扱います。
◆戦略性
バトルへ入る前の準備・計画。例えば超強いボスがいたとしたら、そのボスをどうやって倒すのか考える要素。PT編成を考えたり、有効な装備を考えたりする。
◆戦術性
実際のバトル中に、勝つためにどんな行動をするのか考える要素。自分のターンが回ってきた時に、状況に合わせてどんな行動をするべきなのか考えたりする。
TCGで言えば、どんなデッキにしようかなーどんなコンボができるようにしようかなーと考えるのが戦略性。実際のバトルで、このターン中にどのカードを出そうかなーと考えるのが戦術性です。
俺の定義は違う!と叫びたい人もいるかもしれませんが、この記事ではそこを議論する気も無いのでスルーします。知らぬ。
さて、この定義だけだとちょっと扱いにくいので、もう少し戦術性について深堀り…というかシンプルに考えてみましょう。
◆『戦術性』をかみ砕いて考える
戦術性について、
実際のバトル中に、勝つためにどんな行動をするのか考える要素。
と書きましたが、では「考える」というのは何に対して考えるのか?
ターン制バトルにも色んなジャンルやゲームシステムはありますが、基本的に以下の2点に対して考えると思って良いです。
①自分がどんな行動ができ、何をするべきなのか
②敵がどんな行動をしてきて、どう対応するべきなのか
ターン中に考えるあらゆる行動は、上記の2点に対応しています。ドラクエ(RPG)であれ、ファイアーエムブレム(SRPG)であれ、シャドウバース(TCG)であれ、Slay the Spire(デッキ構築型ローグライク)であれ、Into the Breach(ストラテジー)であれ、将棋(ボードゲーム)であれ、ターン中に考える事は「自分の行動」と「敵の行動」に繋がっています。
つまり、
「自分の行動」と「敵の行動」を考える
に対して影響する要素が、そのゲームが持つ『戦術性』を左右すると言ってもいいでしょう。
では、これに影響するよう要素ってどんなものがあるのか?これから解説していきます。
◆『戦術性』に影響する基本要素
色々と語る前に、「戦術性」に影響する要素に何がありそうなのか、ざっと挙げてみましょう。とりあえずは
◆コンボやシナジー
基本。複数の効果を組み合わせることで、大きな効果を生み出す。
◆行動の予測性
相手が何やるのか分からないと、考えるもクソもない。
◆行動の『圧』
相手の行動に対応する「必要性」が無いと、考える意味がない。
◆ランダム性
異なる状況が戦術性を生む。
◆行動の連続性
まとめて行動するのか、入り乱れて行動するのかで方向性が変わる。
ですかね。細かい所をいえばまだまだある気がしますが、とりあえずはこの辺り。それぞれの要素について、以下で詳しく説明していきます。
◆要素:コンボ・シナジー
戦術要素、と言われてまず考えるのはここじゃないでしょうか。ごく簡単な物で言えば、
・攻撃力の高いキャラが大技を撃つから、その前にバフをかけてダメージを上げるぞ!
みたいな。先ほど挙げた
①自分がどんな行動ができ、何をするべきなのか
に対して大きく関わる要素と言えます。
やっぱりこう、ただ単体の大技をぶん回しているだけより、複数の効果を組み合わせて大きな効果を生み出した方が、何か凄い事やっている感は出るわけで。基本ですね。
スキルのシナジー要素が強いゲームになると、例えばデッキ構築型ローグライクの『Slay the Spire』なんかはこんな事ができます。
相手からのダメージを減らす「ブロック」はターン開始時に消えてしまう。
↓
そのせいもあって、ブロックの値と同じダメージを与える『ボディスラム』は、普通に使うとそこまで強い攻撃スキルではない。(5~20ダメージとかが関の山)
↓
しかし『バリケード』を使えばターンが経過してもブロックを維持できる。
↓
そこへ「不動」などのブロックを大量に稼げるスキルを使い、更に「塹壕」でブロックを倍にすれば60~100ブロックくらいは作れる。
↓
そこへ「ボディスラム」を叩き込めば、普通の高威力スキルの倍くらいのダメージを与えることも可能。
みたいな。
ただ、「こういうコンボができるぞ!」というだけでは、戦術的な戦闘にはなりません。例えば ↑ のようなコンボをするぞ!と考えてデッキを組むのは、「戦術」よりも「戦略」の要素になるからです。
そして、常に強力なコンボが撃ててそれが最適解なのであれば、脳死でそれを連打すれば良いだけで。常に強力なコンボが撃てるのであれば、戦術部分を考えなくて良いので、戦略性はあっても戦術性は薄い…という話になります。
なので、こうした「コンボ」や「スキル同士のシナジー」みたいのを「戦術性」に生かすとしたら、これから説明する別の要素と組み合わせる必要があります。詳しくは後の『組み合わせて「悩ましさ」を作る』の章で説明します。
ちなみに、この場合の「戦略」と「戦術」をまとめ直すと
【戦略】
高ブロックを積み上げて、ブロック値を利用した高威力攻撃で敵を倒すぞ!
【戦術】
戦闘中、どうやって高ブロックを積み上げるのか?
どのタイミングで攻撃を仕掛けるのか?
という区別になりますね。戦略を実現するための戦術が、容易に、考えなくても実現できるのなら、そこに戦術性はないのでは?という話。
◆要素:行動の予測性
さて、コンボ・シナジー要素がプレイヤーの行動に関する話でしたが、次は
②敵がどんな行動をしてきて、どう対応するべきなのか
という点。これ、注意点としてはですね。
考えろって言われても、敵が何をしてくるのか分からないなら、考えようがない!
というあったりまえの話があったりします。なので戦術性を作ろうとした時に、「敵の行動を、どのくらい表示するか」というのは非常に重要です。
これにはいくつかパターンがありますが、だいたいは
①相手の行動が確定していて、何をするのか表示されている
②行動は確定していないが、予測に必要な情報が表示されている
③行動は確定しておらず、どんな行動をするのかも分からない
ですかね。それぞれ特性が違うので、いくつか具体例を出しながら説明していきましょう。
①相手の行動が確定していて、何をするのか表示されている
何をしてくるのか確定していて、それがプレイヤーに表示されているパターン。1人で遊ぶゲームで戦術性を最も出しやすいのがこの形です。
実際、『Slay the Spire』 や 『Into the Breach』 など、戦術性の高いゲームで採用されているパターンです。
『Into the Breach』については昔、がっつり記事を書きましたね。今回の話に関わるような事も色々書いてます。
このパターンのメリットとデメリットを簡単にまとめると、
◆メリット
相手の行動が確定しているので、その行動への対応を考えるのに集中できる。
◆デメリット
行動を晒している側が明らかに不利なので、「対等の戦い」ではちょっとやりにくい。
ですかね。デメリットを考えるとあまり対人戦では採用されません。ただそのデメリットも、1人で遊ぶ(CPUと戦う)ゲームでは敵の強さを調整すればどうにでもなる側面はあるので、1人で遊ぶゲームでは利点が大きいです。
もしかしたら対人戦でやっても面白いかもしれないですけど。自分の次の行動を完全に確定して晒して、相手に対応を迫るゲーム。
②行動は確定していないが、予測に必要な情報が表示されている
対戦系のゲームはこっちが主流です。いわゆる
・数手先を読む
的な事をするにはこっちですね。
例えば『将棋』なんかは、相手の持ち駒も、何ができるかも、全て公開されています。でも、その中で相手がどんな行動をとるかは分かりません。
また、『シャドウバース』みたいなTCGになると、
①相手の手札は分からない
②デッキの傾向から、何となく何をしてくるかは予測できる
③出したキャラはそのターンで行動できないので、「考えるための情報」として扱いやすい
みたいな形になります。完全には分からないけど、考えるための情報はある。
個人的に(ゲームデザインとして)面白いなーと思うのが③ですね。基本的に「出したターンでは行動できない」ことで、
相手の盤面にヤベーやつがいる。コレに直接攻撃されたら不味い。
でも、なんとかこっちのターンで撃破すればなんとかなるぞ。さて、どうやって倒すか……。
みたいな事を考える猶予が生まれます。これが、出したターンからいきなり強キャラが行動できていたら「考える間もなく殺されてどうにもできない」的な状況になったりするので……。
あえて「即行動できない」という制限をつけることで考える猶予が生まれ、戦術性が増すゲームデザインになっているというわけです。
……まぁ、久しぶりにシャドウバースを触ったらインフレしすぎて「考える間もなく殺されてどうにもできない」パターンも結構みかけましたけども。(小声)
③行動は確定しておらず、どんな行動をするのかも分からない
ターン制RPGのほとんどはコレじゃないですかね。そのターン相手が何をしてくるのかは分からず、行動が確率で決定される。ターンが始まって相手が行動して、初めて相手がなにをしてくるのかが分かる……みたいな。
考えるための情報が少なく、とりあえずHPが減ったら回復、そうじゃなかったら威力が高い攻撃…という場当たり的な形になりがちなので、①と②に比べれば戦術性が落ちます。私が
RPGのコマンド式バトル、戦術性の高いものって少なくない?
と感じた要因でもありますね。
って書いていると悪いようにみえますが、そこまで戦術性を求めないゲームであれば採用して良いと思います。ただ、戦術性を求めるならそこまでメリットが無さそうだな、というだけで。
余談になりますが、従来のRPGって
アクションゲームと違って、レベルを上げれば誰でもクリアできるよ!
強敵でも、装備を工夫すれば勝てるよ!
↓
戦術性よりも戦略性を重視している
的な傾向があると感じてまして。戦略性を重視するなら戦術性が低いシステムを採用した方が都合が良かったのかなーと思ったりしています。戦い自体を頑張らせるのではなく、戦いに入る前を頑張らせる、的な。その方が戦略性が際立ちますし。
また、このタイプのゲームでも相手の行動を予測させようとするゲームもありますね、例えば
・Xターン毎に必ずこの行動をする
・敵のポーズで行動がある程度推測できる(例えば、物理攻撃をしてくるのか、魔法攻撃をしてくるのか見分けがつく)
みたいなの。『サガフロンティア』なんかは両方やっています。
ただ、サブ的な扱いと言うか、根本的なゲームデザインとして組み込まれているわけではない(知らない、気にしない人ならまったく認知せずにクリアしていると思う)ので、ちょっとしたスパイス程度の扱いかなーと思います。
◆ちょっとまとめ
この章について、ここまで書いたのをまとめると
・「相手の行動に対応する」楽しさを追求するなら①(ソロ向け)
・「数手先を読む」楽しさを追求するなら②(対人向け)
・「戦術性とかそこまでいらん」のであれば③(戦略性重視)
って感じですかねぇ。これに囚われる必要は全くないと思いますけど。参考までに。
◆要素:行動の『圧』
②敵がどんな行動をしてきて、どう対応するべきなのか
に影響する要素として、敵の攻撃の圧力……みたいのがあります。
例えば、敵と戦う時の状況として
・敵の攻撃を10発くらったら死ぬ
・いつでも撃てる回復魔法でHPの半分が回復できる
という状況だったら、「敵の攻撃にどう対応するべきなのか」なーんて考えますかね?適当に攻撃して、適当に回復して、勝って終わるんじゃないでしょうか。
どんなに考える要素があっても、考える必要性がなければ意味がありません。では、この「圧」はどうすれば作れるのか。いくつか挙げてみます。
◆敵の攻撃力を上げる
いちばんシンプルで分かりやすいヤツ。一発や二発で全滅するような攻撃が飛んでくるなら、対応しないとGAME OVER まっしぐらです。
ただし雑に作って「前ぶれなくいきなり全滅した」とかになると理不尽でしかないので、予備動作などを使ってプレイヤーに
ヤバい一撃が来るぞー
と教えてあげる必要があります。殺すなら納得感のある殺し方をですね。しましょう。
ちなみに敵の攻撃力を上げればガンガンに難易度も上がりますが、
キャラの命を軽くする
ことで、攻撃力が高くてもバランスが保つことが可能です。
例えば将棋なんかはHPの概念が無いので、常に一撃必殺です。最弱の歩で最強の飛車や王を倒せます。それでも成り立つのは、大量の駒があって「1つ1つの駒を使い捨てる」ことが前提のゲームデザインだからです。使い捨て前提なので、1キャラ1キャラの命が軽い。
TCGなんかも命が軽いですね。毎ターン新しいキャラを召喚するので、召喚したキャラも「次のターンまでに生きてたら儲けもの」くらいの勢いでやれます。なので、キャラを一撃で倒されても問題なかったり。
それに対してRPGなんかはけっこう命が重め。キャラが戦闘不能になったら一大事です。こうした命の重さの違いで、同じ攻撃力でもゲームバランスへの影響力は変わります。
◆回復を貴重な存在にする
例えば同じ「HPの半分を削る威力の攻撃」であっても、
・すぐに回復できる
・滅多に回復できない
で大きく「圧」は変わります。前者は敵の攻撃力が高くないと「圧」が作れませんが、後者は多少のダメージでも十分に脅威となります。
『Slay the Spire』なんかはこの筆頭ですね。戦闘後も減ったHPはそのままですし、メインの回復手段であるキャンプは30%しか回復しない。そしてキャンプは回復以外の行動も魅力的なので、そっちも選びたい。HPが1割削られる程度のダメージでも出来る限り防ぎたくなるようなゲームデザインになっています。
◆「守るべきもの」を用意する
将棋は、どんなに有利な状況にいようとも、王が詰んだら負けです。TCGも、盤面がどんなに優勢でもプレイヤーのHPが無くなったら負けです。『Into the Breach』なんかはキャラが全滅したらGAME OVERですが、建物のHPが無くなっても敗北します(というよりもそっちがメイン)。
敗北条件が「全滅」のみの場合は、強いキャラが生き残れば負けることがありません。しかし、敗北条件が「全滅」以外にあるのなら、それに対する敵の行動は脅威になります。
ただし、ちゃんとゲームデザインにからめて作らないと機能しないですけどね。例えば「敵を全滅させる」のがメインのSRPGで、突発的に「○○を守れ!」とかやっても微妙な出来になったり……。ちゃんと「守る」と「楽しい」をリンクさせたゲームデザインになっている事が前提ではあります。
◆要素:ランダム性
何度か触れているように、
毎ターン最強技を撃ってー、HPが減ったら回復してー
みたいな、常に最適解が同じような行動で、ほぼそれを連打していれば良い…という状態だと、戦術性があるとは言えません。
そんなこと言ったってどうすりゃええねん、という話ですが、TCGやデッキ構築型ローグライクが1つの答えを出していて、「自分ができる行動にランダム性を持たせる」ことで解決をしています。つまり
◆一般的なRPG
覚えている技は、コストが足りていればいつでも撃てる
◆TCG・デッキ構築型ローグライク
覚えている技は、手札にくれば撃てる
ですね。同じ編成状態、同じ敵と戦っても、プレイ毎に手札が違う。ターン毎に出来ること自体が変わってくるので、そのターンで何をした方が良いのか、最適解が変わり、考える要素が生まれる。
ちなみに、手札の使い方によっても少しゲームデザインが変わります。『Slay the Spire』なんかは「毎ターン手札が変わる」方式で、ランダム性の強いデザインになっています。
それに対して『シャドウバース』等のTCGは「毎ターン手札が残る」方式で、カードの使い所を考える計画性のデザインです。
また直接的な戦術要素ではありませんが、「戦略」部分にランダム性を持たせることによって、この問題を解決しているパターンもあります。
ローグライク型のゲームである『DIMENSION_REGIN』では、戦闘に持ち込める武器( = 耐久力が設定されているスキル)にランダム要素があります。プレイ毎に何の武器が手に入るかはランダムで、かつ「壊れる⇒新しい武器を入手する」のサイクルが激しいので、戦闘毎にできることが変わります。
また強力な武器であっても、武器の「耐久力」があることで、どのタイミングで武器を使用するのかを考える戦術性もあります。強武器を連打すると肝心な時に使えないけど、使う時に使わないと死んじゃう。
なお、「手札」の話は「ランダム性」を作るための1つの手段です。というか「ランダム性」自体が、
状況の不確実さ
を作るための手段とも言えます。なので「状況の不確実さ」が作れていて、かつそれが「考える」ことに繋がるのであればOKかも。
◆要素:行動の連続性
これは戦術性を高める要素と言うよりは、戦術性の方向に関わるところですかね。パターンとしてはだいたいこの3つ。
①お互い、1ターンに1回だけ行動できる(将棋)
1ターンで出来る行動が少なく、シンプルなので1手1手の読み合いをするのに向いている。
②自分のターンでまとめて行動する(TCG、デッキ構築型ローグライク)
まとめて色んな行動ができるので、コンボやシナジーを生かすのに向いている。
③素早さ順などで敵味方入り乱れて行動する(ドラクエ)
敵の行動に自分の行動を差し込めるので、相手の行動を妨害する等ができる。
ここについてはまぁ、自分のゲームが何をしたいのか、で採用する物を決めればいいと思います。はい。おわり。
◆組み合わせて「悩ましさ」を作る
ここまで、ターン制バトルの「戦術性」に影響しそうな要素を色々と挙げてきました。基本的に、これら全てを使う必要はありませんが、単体で運用する物でもなく、組み合わせて運用する物です。
例を出しましょう。コンボの項で例として出していた、『Slay the Spire』のこのコンボ。
防御力を上げながら、そのまま攻撃に転用できる攻守に優れたコンボです。便利なので脳死で使っていきたい所ですが、実際のゲームだとそうはいきません。
『Slay the Spire』はデッキ構築型ローグライクで、毎ターン使える手札が変わります(ランダム性)。そのため、まずはコンボの起点になる「バリケード」を引かないといけません。
しかしバリケードを引いても、強力なカードなので使用コストが高いです。このカードを使うだけでほぼそのターンが終わります。つまりそのターンに敵が強力な攻撃をしてくるなら、それを無防備な状態で受けることになります。『Slay the Spire』ではそのターンの敵の攻撃内容が分かるので、相手が強力な攻撃をしてくる時は確実に分かります(行動の予測性)。
なので、そのターンにバリケードを使用したら、大ダメージを受けてバリケードの効果を発揮する前に死んでしまうかもしれません(行動の圧)。しかし身を守っても、このターンでバリケードを使わないと使用しなかったカードは捨札にいくので、しばらくバリケードを使うチャンスがありません。結局ジリ貧になって負けるかもしれない。
さて、このターンで「バリケード」を使いますか?それとも身を守りますか?
『Slay the Spire』では、このように
コンボ・シナジー × 行動の予測 × ランダム性 × 行動の圧
が組み合わさって、行動に対する「悩ましさ」を作り出しています。
戦術的なゲームは「考える」ことが重要です。そしてゲームとして、「考える」事自体が「楽しい」ことであることが非常に重要となります。
つまり、戦術性に必要な要素を組み合わせて
最適解「かもしれない」行動が複数あって、悩ましい
という状況を作る事が、戦術的かつ面白いゲームに繋がる…ということになるんじゃないかと。思いまする。
◆まとめ
今回の話をまとめると、
戦術性って何だろう?
⇒実際のバトル中に、勝つためにどんな行動をするのか考える要素。
⇒バトル前に編成を考えたりするのは戦略性になる。
戦略性で考えることは、以下の2つに集約される。
①自分がどんな行動ができ、何をするべきなのか?
②敵がどんな行動をしてきて、どう対応するべきなのか?
戦略性に影響する要素は ↓
◆コンボやシナジー
基本。複数の効果を組み合わせることで、大きな効果を生み出す。
◆行動の予測性
相手が何やるのか分からないと、考えるもクソもない。
◆行動の『圧』
相手の行動に対応する「必要性」が無いと、考える意味がない。
◆ランダム性
異なる状況が戦術性を生む。
◆行動の連続性
まとめて行動するのか、入り乱れて行動するのかで方向性が変わる。
各要素は単体で使うよりも、組み合わせると力を発揮する。
組み合わせて「悩ましさ」を作ると、考えるのが楽しいゲームになる。
ですかね。要素に関しては、ここに書いてあることが全てではないと思うので、他に何があるのか色々と考えてみると良いかと思います。
そのターンの事だけでなく、2ターン後3ターン後の計画も含めて考えられると、より戦術性は増すんじゃないか、とか。
◆宣伝
私が今作っているインディーゲーム『いのちのつかいかた』は、今回の話で書いたようなことを踏まえて作っているゲームです。
この記事を読んだ方なら、なぜこのゲームが
・お互いに1ターンに3回行動できる
・スキルにクールタイムがあり、連続で同じ強力な技が撃てない
・敵の行動が事前に分かる(分からない場合もある)
・敵の攻撃力が高い
といった仕様になっているのかは、分かるんじゃないかと思います。
ちなみに「敵の攻撃をQTEで避ける」的なアクション要素もありますが、これも「考える」ことに繋がる仕様です。
敵の攻撃を回避できていれば攻撃した方が良いけど、もし回避できなかったら……
といった葛藤を作るための仕様。「1ターンに3回行動できる」と組み合わせて、ランダム性(というより不確実性)を作っています。
Steamで体験版が遊べるので、よろしければ遊んでみてください。今年のBitSummit(インディーゲームの大きなイベント)にも出展します。
ちなみに、戦術性のあるRPGを作る、のは私が初めてゲームを作った時から考えている事ですね。初めて作ったゲームも
RPGツクールのデフォルト戦闘(いわゆるドラクエ的な戦闘)で、どれだけ戦術性のあるゲームが作れるか?
みたいなことをテーマの1つに作っていました。このゲーム。
上記のテーマで作った結果、どうなったか気になる方は遊んでみてくださいな。
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