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意外とゲームの根幹を支えてる『装備枠』のゲームデザイン
皆さん、強い装備は好きですか?
ダンジョンの奥深くを探索し、すんごい良さげな装備を手に入れる瞬間は好きですか?
装備というのはことゲームにおいては汎用的かつとても重要な要素です。
キャラクターの強さに大きく影響しますし、プレイヤーが貰って嬉しい報酬としても役に立ちます。
さて今回はそんな『装備』についてのお話……
ではなく、その装備をつける『装備枠』についての話をします。
こいつぁ中々に馬鹿にできないものがありまして、装備枠の性質によって装備にもかなり影響が出ますし、キャラクターの個性や事前準備の戦略性など、ゲーム全体のゲームデザインに影響すると言っても過言ではないです。
でも装備枠の話、なんかそんなに話題に上ることもないんですよね。
地味だし。なんか存在していて当たり前すぎて扱いが空気なんですよ。
色んな意味で。
たかが装備枠、されど装備枠。
ってことで、今回の記事では地味で語られない割に重要な『装備枠』について!いっぱい!!語ります!!!
◆装備枠って何で出来てる?
装備枠を工夫するにしても、まずは弄れる要素として何があるのかを把握していないと考えることもできません。
なのでまずは装備枠を構成する要素を把握しましょう。
◇枠の数
まずは装備枠の数。
例えば、「防具を1枠だけ装備できる」と「防具を複数枠装備できる」ゲームではそこから生まれるゲームデザインがまるで違います。
枠数の違いが何をもたらすかは後述しますが、装備枠の最も基本的な要素であり、かつ装備の根幹を支える要素でもあります。
皆そんなに意識してくれないけど。
◇枠の種類
2つ目は枠の種類。
最も馴染みが深いのは防具の種類で枠を分けているパターンですかね。
・頭装備
・体装備
・腕装備
・足装備
・装飾品
みたいな形でそれぞれ装備枠が分かれているやつとか。
ゲームによっては、キャラによって装備できる枠の種類を変えているゲームもあります。
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武器も、基本的なRPGは装備できる武器は1つだけですが、オクトパストラベラーなんかは武器種ごとに装備枠が用意されてますね。
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それと個人的に好きなのはロマサガ3。
装備枠は複数あるけど特定の種別の枠を用意していません。防具枠なら鎧を装備してもいいし、靴を装備してもいい。でもそれらをあえて装備しないで耐性重視で装飾品で枠を埋めてもいい。
武器の枠もフリーになっていて、武器の代わりにアイテムを装備出来たりします。
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その辺りを加味すると、装備枠の分類としては
①固定枠
頭装備の枠なら頭装備のみが装備できる。
その枠で鎧を装備することはできない。
②準自由枠
防具なら何でも装備できる。頭でも鎧でも。
※ただし複数枠の中で鎧は1つまで等の制限を入れたりもできる。
③完全自由枠
なんでもOK。武器でも防具でも好きな物を装備しなさいな。
もしくは、そもそも装備の種別という概念がないゲームとか。
(装備はアーティファクトのみ……みたいな)
という分け方もできますね。
◇装備内のオプション装備枠
また特殊な例として、装備の中に更に装備枠を用意するパターンもあります。
たぶん今だと一番通じやすいのはモンハン。
武器や防具にスロットが用意されていて、そこにパッシブスキルを習得できる珠をセットする形です。
スロットに何を入れるかはプレイヤーの自由であり、同じ装備でも何を入れるかで特徴が変わってくるので、プレイヤーの工夫のしどころになります。
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他にはアクティブスキルをセットする例もあります。
例えば旧FF7のマテリアとか。(リメイク版はやってないのでなんとも)
こっちは繋がっている穴同士を連携させて効果を作ることができたりもします(特定の魔法を全体化させたり)
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◆装備枠の数で何が変わるのか?
さて、装備枠を構成する要素を見てきましたが。
基本的には枠数と枠の種類をどうするかって話になってくるんですが、このシンプルな要素の変化でいったい何が変わるんでしょうか?
そんな大した変化はあるように見えませんけどねぇ。
まぁ色々変わるんですが、それをこれから説明していこうかと思います。
◇1つの装備がもたらす強さ
装備枠が多いほど1つの装備の重要度(影響率)が下がります。
例えば、防具による最終的な防御力を100とした時に……
◆装備枠が1つ(1枠あたりの影響:100%)
・防具の防御力:100
◆装備枠が4つ(1枠あたりの影響:平均25%)
・兜の防御力 :20
・鎧の防御力 :40
・小手の防御力:20
・靴の防御力 :20
といったような形で、1枠辺りの影響値が分散されるんですね。
枠が1枠ならその1枠が100%影響するし、枠が分かれれば1枠あたりの影響率は減っていきます。
なので例えば
宝箱から新しい装備を手に入れたぞ!
前の防具よりも防御力が1.5倍も高いぞ!!
って時なんかも
◆装備枠が1つ(1枠あたりの影響:100%)
・防具の防御力:100 → 150
↓
合計防御力が150(1.5倍)
◆装備枠が4つ(1枠あたりの影響:平均25%)
・兜の防御力 :20
・鎧の防御力 :40 → 60
・小手の防御力:20
・靴の防御力 :20
↓
合計防御力が120(1.2倍)
みたいな感じで、1つ装備を付け替えた時にどれくらい強くなれるのかが変わります。
枠数が少ない方が影響率が高いので1つの装備で強くなれますし、この装備のおかげで強くなったぞ!という実感をプレイヤーに与えやすいです。
ただし影響率が高いという事は、「あそこの強い装備を取り損ねた」ことで不利が生まれやすいです。プレイヤーが想定よりも弱いな……って事が起きやすくなります。
この辺りは一長一短ですね。
これはステータスだけじゃなくて耐性などに対しても言えます。
例えば火属性ダメージ無効を作る場合、
◆装備枠が1つ
・防具:火ダメージ100%減
◆装備枠が4つ
・兜の防御力 :火ダメージ25%減
・鎧の防御力 :火ダメージ25%減
・小手の防御力:火ダメージ25%減
・靴の防御力 :火ダメージ25%減
みたいな感じに装備枠が多いと「耐性を加算させて作る」ことができます。
なのでPTメンバーが複数いるゲームなんかは火耐性装備の数自体を絞れば
1人を火属性無効にすることもできるし2人を火属性半減にすることもできる。どっちにするかは自分で決めてね。
みたいな事ができたりもします。
これは敢えて効果を分散させることで応用力が増す例ですね。
◇対策の手広さ
防具なんかはいっぱい枠がある方が色んな要素への対策がとりやすいです。
例えばボス敵が「火属性攻撃、毒、麻痺」を使ってくる時。
◆装備枠が1つ
・防具:火耐性つける?毒耐性つける?麻痺耐性つける?
◆装備枠が4つ
・兜の防御力 :火耐性
・鎧の防御力 :-
・小手の防御力:毒耐性
・靴の防御力 :麻痺耐性
みたいな感じで、枠数が多い方が色んな耐性をつけやすくなります。
1枠だけでも「火・毒・麻痺耐性がついた防具」を用意することはできますが、そうすると「その防具を持ってないと勝てなくね?」という話になりがで、耐性を付け替える遊びとしては成り立ちにくいです。
ただし
何かしらの対策は出来るんだけど、全部は対策しきれないからそこは別で頑張ってね(麻痺耐性をつけていると毒耐性はつけられないから、その場合は毒消し草を買い込んどくとか)
って遊びを作りたい時は枠数が少ない方がやりやすいかも。
◇武器変更による対応力
武器の枠を複数用意して、戦闘中に切り替えられるようにすると対応力が上がります。例えば
メインウェポンに火属性の剣を装備しているぜ!
↓
→斬撃耐性のある敵には槍に切り替えるぜ!
→敵が多い時は弓技で全体攻撃をするぜ!
→火耐性がある敵には氷の剣に切り替えるぜ!
とか。
ただし実装するなら「なぜ対応力を上げる必要があるのか?」というのを考えた上で実装した方が良いだろうなとは思います。
例えば
主人公1人で戦闘するから、火属性武器を装備している時に火属性無効の敵とエンカウントすると絶望しかねぇ!
↓
戦闘中に変えられるようにすればこの問題は解決できるか……
武器の種類ごとに技などを分けてて、種類ごとの個性がとても強いし、状況によって使い分けがしやすい
↓
戦闘中に切り替える事ができれば、より戦術性が高まるし色んな種類の武器を作る意義が高まる。
とかですね。
プレイヤーが何を目的に装備を切り替えるのか、というのを意識して作らないと「頑張って機能を作ったけど使われない」なんて事になったりします。
◇組み合わせによる戦略性
装備枠が1枠だと組み合わせもクソもないので、装備単体の強さがより強く出ます。
その一方で装備枠が多い場合、装備の個性や効果を組み合わせてシナジーを作ることができます。例えば
・命中率は低いけど攻撃力の高い斧を装備。
→ただし命中率を上げる装飾品をつけて欠点をカバーするぞ!
・2刀流で2回攻撃ができる武器と確率で麻痺を与える武器を装備。
→ より高い確率で麻痺を与えて相手を完封するぞ!
とか。こうやって組み合わせて使えるようにすると、事前準備の戦略性が上がりますね。
ただし組み合わせが重要なゲームは、キャラのレベルが同じでも「上手く考えられるプレイヤー」と「考えるのが得意じゃないプレイヤー」で強さの差が大きくなりやすいので、バランス調整の難易度が上がります。
それと当たり前の話なんですが、枠数が多ければ多いほど戦略性の遊びが面白くなるわけではありません。
「1キャラ50個の装備をつけられるぜ!」とか言っても多すぎてプレイヤーが扱いきれなかったり、同じような効果を重ねるだけになったりするので、ベストな数を探る必要はあります。
◇総リソース量
武器に「残弾」や「使用回数」といったリソースの概念がある場合は、武器の枠数が戦闘中の総リソース量に大きく影響します。
例えばアーマードコアとか。
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ロボットゲーなんかは「武器 = スキル」になりやすいですかね。肩装備でミサイル撃つなりレーザー撃つなり。
そうした設定になると装備の枠数がよりバトルに大きく影響してくるんじゃないかと思います。例えば
強力な武器なんだけど3発しか撃てない武器
……を活かそうとした時、武器の枠数が1枠だと非常に扱いづらいです。3発しか撃てないから雑魚戦で撃ち尽くしてあとはもうジリ貧とか。
でも武器の枠数が3枠なら「強くは無いけど弾数の多い武器で雑魚戦をクリアして、ボス戦で強力な武器をぶち込む」みたいな事ができます。
◇装備の寿命
装備の枠数が少ないほど、その装備の寿命は短くなります。
例えば防具枠が1枠なら
ダンジョンの序盤で防具が手に入ったぞ!
そしてダンジョンの後半でもっと強い防具が手に入ったぞ!
↓
じゃあもう序盤で手に入った防具はいらないね……
って感じになりやすいです。装備の更新は「その枠に装備しているものと交換」という形で行われるので。
しかし、防具枠が複数あるなら
ダンジョンの序盤で鎧が手に入ったぞ!
そしてダンジョンの後半で更に小手が手に入ったぞ!
↓
お互いを邪魔することなく2つの装備で強くなれた
という形で、装備1つの寿命が延びます。
別の枠のものと交換できるのでより長く使えるわけです。
◇装備を手に入れた時の喜び
主人公は今、攻撃力100の剣を装備しています。
そして宝箱で攻撃力が95の剣を手に入れました。
嬉しいですか?
コレに関しては1キャラに対する枠数よりPT全体の総枠数で見た方がいいですかね。総枠数が1なら、上記の状況ではそんなに嬉しくないと思います。
装備しても攻撃力が下がるので。
ただし他のPTメンバーが攻撃力80の剣を装備している状態ならどうでしょう。主人公の武器は更新できませんけど、別キャラの攻撃力が15上がるのでこの剣を手に入れた時も嬉しいんじゃないかと思います。
総枠数が多いと、似たような性能や現状の最強から少し弱い装備でも役に立つわけです。最強じゃなくても必要なので、装備の需要を保ちやすい。
需要があるという事は、宝箱を開けた時などの喜びを作りやすいわけです。
コレが顕著だったのがユニコーンオーバーロードですね。
メインメンバーにできる総キャラ数が50人いたので、AP・PP(行動回数)を上げる装飾品なんかは「同じ物を10個手に入れてもまだ欲しい。足らない」って状況になってました。
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◆装備枠の種類で何が変わるのか?
◇装備枠毎の個性
今からするのは正確には装備の種類毎の個性の話なんですが、装備枠の話ともかなり近いし後の説明にも関わるので一応ここで。
例えば途中で出したこの例。
◆装備枠が4つ(1枠あたりの影響:平均25%)
・兜の防御力 :20
・鎧の防御力 :40
・小手の防御力:20
・靴の防御力 :20
鎧をメイン防具として防御力への影響率を高めにして、他はサブ防具として防御力への影響率を低めに設定しています。
ただこれだけだと、サブ防具が単なるメイン防具の下位互換でしかないという話もあり……そういう時は
◆装備枠が4つ(1枠あたりの影響:平均25%)
・兜の防御力 :20 更にHP+50
・鎧の防御力 :40
・小手の防御力:20 更に攻撃力+10
・靴の防御力 :20 更に素早さ+10
みたいに装備種別ごとに個性をつけると下位互換ではなく別方向に強い存在として扱えます。
装備の個性が広がれば、その個性毎に別の需要を生むこともできるわけです。そうするのがいいかどうかはゲームによりますが。
※例としては手っ取り早く基本ステータスで出しましたが……
頭は属性耐性をつけやすいとかそういう方向でもアリ。
※装備枠の中で種別を分けることもできます。
頭装備枠の兜は防御力重視、帽子は属性耐性重視とか。
こうして各装備種別に対して個性を作ったりするわけですが……。
ただし、それをどう扱うかは装備枠の種類が大きく影響します。
固定枠・自由枠で扱った時に何が変わるかと言うと
◆固定枠(頭装備枠には頭装備しかつけられない)
→ 基本的には皆その種類の装備はつける。
→ インフレの遊びが作りやすい(強いのが手に入った嬉しい)
→ 手に入った強い装備を誰に融通するか考える。
↓
強い鎧が手に入ったぞ!
誰に装備させようかな。タンク役の女の子かな。でもか弱いヒーラー役のオッサンが死ぬと困るからオッサンにつけようかな。
◆自由枠(どの装備もつけられる)
→ 限られた枠の中で何を組み合わせるかはプレイヤーの自由
→ 組み合わせてシナジーを作るなどの遊びを作りやすい
→ キャラの個性に合わせてつける装備を考える。
↓
防具は「兜・鎧・小手・靴・装飾品」があるけど、装備は3枠しかない。
じゃあタンク役の女の子は攻撃力は必要ないから、兜・鎧・靴で防御力重視の組み合わせ。
アタッカー役のショタは鎧・小手・装飾品(クリティカル率UP)でとにかくダメージを出してもらおう。
とかですかね。一例ですけども。
念のため書いとくと、これ等の要素は10:0でキッパリ別れる物ではないです。自由枠でもインフレの遊びが入るし、固定枠でも組み合わせの遊びが入ります。ただ、どっちに寄せやすいかは違う。
基本的には固定枠の方が安全で扱いやすく、自由枠の方が個性を尖らせやすくはありますね。(固定枠は皆がその装備種別を装備している前提があるけど、自由枠はその前提がない)
◇キャラクターの個性
そもそも何を装備できるのか、がキャラクターの個性に大きく繋がる場合もあります。
RPGで有名なのは「二刀流キャラ」とか。
盾が装備出来ず他のキャラよりも耐久力が低いけど、武器が二つ装備できる分他のキャラよりも攻撃力が高い……みたいな。
つまり、キャラ毎に装備枠を変えることでそれ自体をキャラの個性にできるわけですね。前述したように、ユニコーンオーバーロードは1キャラ4枠の中で、クラス毎に装備できる枠の種類毎の数を変えて個性を作っていました。
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◇着せ替え要素
入れるかどうか迷いましたが、一応。
装備がそのままビジュアルに反映されるパターンのゲームもあります。
有名どころはモンハン。ストリートファイター6のワールドツアーモードも、こうした着せ替え要素がありましたね。
この要素があると「装備枠 = 変えられる見た目の種類」にもなるので、どこの見た目を変えたいよね、というのも加味して考えることになります。
なおこれがあることで、性能は弱いけど見た目がいいから欲しいとか、性能以外で価値を作れます。
ただし「装備によって能力も変わるし見た目も変わる」といった性能と見た目を両立した仕様になっていると
戦闘の最適解を目指した結果、見た目がクソダサくてもやっとする
なんてのは良くある話なので、「見た目用の装備枠は別でとる」みたいな事をする必要はありますね。
◆装備枠の設計をする前に考えること
これまで話してきたのが、装備枠の特徴と影響の話で、設計をするための前提知識みたいな所です。
今度は、じゃあその前提知識を使ってどう設計していこうか?というお話……の前に、それを考えるための方針を定めようねってお話をします。
◇どんな風に扱いたい?
これまで説明してきたように、装備枠が持つ特性は地味~に色々とあります。ただしいきなり「装備枠の数をどうしようかな~」など個々の仕様からバラバラに考え始めても迷子になるだけです。
設計で大事なのは仕様が持つ特性を活かすこと。
そのためにも指針を立てておかないと、何を目指して考えるのかがぼやけるので、ただ何となく「装備」というシステムがある状態で上手く活かせなかったりします。
なので、まずは
自分のゲームの場合は、どういう方向性が合っているのか?
「装備」を自分のゲームにおいてどういう存在にしたいのか?
といった所から考えていきましょう。
とはいえこれを考えようとしただけで迷子になる人もいそうなので、テーマを2つほど置いときます。
「どれくらいの戦略性を持たせたいか」と「報酬のためにどれくらい確保する必要があるか」です。
◇戦略性かインフレの楽しさか
枠数が少ない方がインフレ的な遊びが、枠数が多い方が組み合わせ的な遊びが作りやすいという話をこれまでにしましたが。
じゃあ自分のゲームではどっちの遊びを重視したいのか?
というのは考える必要がありますね。
(もちろん10:0の話ではないですよ。どっちにどれくらい寄せるか、という話)
自分の作っているゲームのターゲット層が幅広くてライトユーザー向けなら、ゴリゴリに戦略性を重視するのはミスマッチになるでしょうし。
逆にプレイヤーに色んな工夫をしてもらいたいなら、戦略性重視に色んな組み合わせが考えられるような形にした方が向いてますね。
ただ正直、コレには
絶対的な正解は無い
と思ってます。繰り返します。絶対的な正解はないです。
例えば「ゴリゴリに戦略性を重視したゲームを作るぞ!」という場合でも、装備で組み合わせ重視の構成をするのが必ずしも正ではありません。
例えばスキルとか他の要素でがっつり組み合わせの遊びを作っていた場合、装備でもソレをやると組み合わせの要素数が多すぎて何を変えればいいのか分かりにくくなったりとか。
そうした場合、装備に対しては逆にシンプルな形にしてスキルの方の組み合わせの面白さに集中してもらった方が面白い……みたいな話は普通にあり得ます。
他の要素の事も考えた上で、「今作における装備の立ち位置」を考えられると良いですね。なお
考えるのめんどうくせー!わっかんねーー!!アホーー!!!
って時はシンプルめに寄せて素直に「強い武器が手に入ったぞ!嬉しー!」って遊びを重視した方が無難かなとは思います。
工夫が色々できるゲームってバランス調整するの大変ですし。
◇報酬をどこまで確保したい?
先ほども話しましたが、ゲームデザインってのはこう、色んな要素と繋がってるんですよ。
これもそうした話の1つなんですが例えば
サブクエとかサブダンジョンとかの寄り道要素が豊富なゲーム
の場合、装備枠の数が少ないのはあんまり向いてはないです。
報酬で装備を配る時に、今の装備よりも強くないと価値を感じにくいので。
とはいえ過剰なインフレを恐れてコンテンツの報酬を少なくしながら色々引っ張るのもつらい。
そうすると、「同じくらいの強さの装備をたくさん配っても喜ばれる」状態になっている方が色々と便利なわけです。例えば
防具枠が1つしかないと、1個配ったら次はもっと強いのを配らないと価値がない。
でも防具枠が複数あるなら、同レベル帯の兜と鎧と小手と靴を配れる。
PTメンバーが4人いれば4人×4枠で合計16個は配れる。
みたいな話。
※防具枠が1つでも、同じ強さの防具だけど耐性が違う、みたいなやり方で量産する方法はありますが、ただ「やりやすいか?」って言われるとやりにくい。
逆に寄り道要素の少ないアクションゲームなんかを作る時は、扱うキャラクターも1人だったりするし、すぐに先に進んで上の難易度のステージに挑戦するので装備がインフレしやすくても問題なかったりします。
こんな感じで「装備としてどうするか」だけでなく、こうした要素とも突き合せてどういう装備枠の設計にするのが理想なのかを考られると
なんか作ってみたのはいいんだけど上手くいってないな……
っていうのは少なくなるんじゃないかと思います。
◆実際にどう設計するか?
前の項で話したような設計指針を決めたら、具体的な設計に入っていきます。
ゲーム毎に何をどう設計すればいいのかは変わるんですが(あとはもう勝手にやってくれ)、そのまま放っても困る人が出そうなので汎用的な話をいくつか置いておきます。
◇武器の枠は1つ?
基本は1つでいいんじゃないっすかね。考えなしに増やしても扱いづらいだけですし。
そこから、必要があれば枠数を足していく形で良いと思います。
ただ「増やした武器の枠をどう扱うか」は考える必要があります。
例えば複数の武器を装備した時、そのキャラの攻撃力は複数の武器の合計なのか、選んで使用した武器の攻撃力だけを見るのかで話が大きく変わるので。
簡単に類型化すると
◆二刀流タイプ
攻撃時に、装備した複数の武器が同時に影響する。(攻撃力合算)
「クリティカル率の高い武器 × 攻撃力の高い武器」みたいな、組み合わせの遊びも作りやすく、一部のキャラだけに適用すればキャラの個性としても分かりやすい。(二刀流のアタッカーは人気が出やすい)
◆持ち替えタイプ
装備している武器の中から1つ選んで攻撃する。他の武器は影響しない。
戦闘中の対応力が幅広くなる。
武器の種類が豊富で個性がハッキリしている場合(武器種によって使える技が違うとか)とか、攻撃時の属性相性による差が強い場合なんかに向いている。
◆別参照タイプ
行動によって攻撃力を参照する武器が違う。
ペルソナ5の「近接武器」と「遠隔武器」とか。(通常攻撃は近接武器を参照するけど、銃撃では遠隔武器を参照する)
持ち替えタイプに近く見えるが、対応力を上げる作用はなくゲームデザインとしては別種。バトル全体の攻撃力を高めるには1キャラで複数の武器を揃える必要があるので、需要が保ちやすい。
ただし「近接武器だけ強くして遠隔武器は放っておけばいいや」みたいな事になると意味が無いし捨てられた方に紐づいた行動が死ぬので注意。
どちらの行動も戦闘中は必要だよね、というのをしっかり作る必要がある。
◆別行動タイプ
左手で装備したブレードで斬るとか、肩からミサイルを撃つとか、そもそもの行動から違うタイプ。「持ち替えて何を使うのか」ではなく「その枠に何のスキルをつけるのか」といった考えに近い。
とかですかねぇ。パッと思いつくのは。
いずれにせよ、増やした武器の枠をどう扱うかでバトルのゲームデザインが大きく変わったりもするので、そこを考えた上で増やした方がいいです。
◇防具の枠と種類はどうする?
RPGとかを作っていると地味に直面するやつですね。
防具、何を用意しよう?
スタンダードな物でいうと
・盾
・頭
・体
・腕
・足
・装飾品
とかありますけど、じゃあとりあえず6枠を用意しますか?
でも、防御力が上がる防具の枠数が多いほど装備1つの影響率が下がる(1つ装備を変えても強くなった実感が得にくい)けど、本当にそんなに要ります?
明確な目的があって枠数を多くするのは良いと思うんですが、その辺りがフワッとしているなら少ない枠数から考えた方が無難かなと思います。
(影響率のデメリットなんかは目立たないので、「原因は分からないけど面白くなってない」って感じにふんわりモニョっと良くない状況が生まれやすい)
なお1番シンプルなのは防具1枠ですが「さすがに防具1枠だと工夫の余地が無さ過ぎるよなぁ……」って時は
・メイン防具:1枠
┗ ここで防御力を上げる
・装飾品 :2枠
┗ 防御力はつけずメイン防具の邪魔しない
┗ 色んな効果があって組み合わせられる
みたいな事をするのはアリだと思います。組み合わせの遊びをする所は防御力を与えずに分けて扱う。
ただコレ、防具1枠の影響がかなり強いので
なに?
魔法タイプの敵に対して物理防御特化の防具で突っ込んだ?
かな~りきっっっっついけど頑張ってね。
それで死ぬのは当たり前だからね。
ってなりやすくはあります。他の防具でカバーできないので、防具の個性と合わない敵にはかなり苦しくなる。
コレを是とするか否とするかは開発者の考え方とターゲット次第です。
「その装備で挑んだプレイヤーの自己責任」として見るならいいでしょうし、「いや多少ミスってもカバーできた方がいいよね」と見るなら他に防御力が上がる防具枠をつけてあげた方がいいでしょうし。
まぁ幅広いユーザー層を狙うなら多少は緩くした方が無難だと思いますが。
あとは「んじゃあ、枠を増やすか~」となった時は、明確にその枠の役割や特徴を考えましょう。それによって
・既にある防具枠と個性を変える必要があるか?
・固定枠で扱った方が良いか、自由枠で扱った方が良いか
・その装備枠があることで、プレイヤーの遊びにどんな変化があるのか
が変わってきます。例えば
単純に防御力で耐えるキャラとは別に、敵の攻撃を回避して耐えるタイプのキャラも作りたいなぁ。(シミュレーションRPGとかでよくある)
↓
じゃあ普通の防具とは別に、回避率が上がるサブ防具を用意しよう。
でもこのサブ防具、防御タイプのキャラに必ず着けて欲しいわけじゃないんだよな。
↓
ならサブ防具用の準自由枠にしよう。
防御タイプのキャラは純粋に防御力が上がるサブ防具を、回避タイプのキャラは回避率が上がるサブ防具をつければいい。
↓
でもなんか「回避タイプだから回避率が上がる装備1択」ってのもヤダ。
↓
それならそのサブ防具用の準自由枠を2枠にしよう。
回避率が上がるサブ防具を重ねてとにかく回避率をあげてもいいし、1枠は回避率が上がる装備をつけてもう1枠は攻撃力UPとか別の個性のサブ防具をつける……みたいなプレイヤー毎の工夫ができるようにする。
とかですかね。
あとは装備の部位(種別:小手とか靴とか)も
とりあえず装備枠は何を用意しようかな。
足装備とかにしとくか
ではなく
こういう個性の防具(例:素早さや回避率が上がる装備)が欲しいから、じゃあ足装備ってことにすれば分かりやすいな
って形で考えると良い感じに仕上がってきます。
というか前者はこれ何も設計してないのでゲームデザインしてない。
これはもう繰り返し何度も言うんですが、この装備枠の話も他のゲームデザインの話も
どういう形にするのが正解なのか
というのはありません。
ただし
自分の思う理想に近づけるためにはどういう形にした方が良いのか
というのはあるので、その理想をどうすれば実現できるのかしっかり考えた方が良い……というのは広く言えることだとは思います。
◇装備内のオプション装備枠は必要?
基本は要らないと思いますよ。ややこしいし。
ただ、旧FF7の「マテリア」を思い返してみると色々な利点はあって
①ただの装備では収まらない組み合わせの遊びができる
組み合わせた特定の魔法を全体化したりとか、連続攻撃に盗むを組み合わせて1行動でいっぱい盗むとか、死んだらフェニックスが発動するようにして自動蘇生するようにしたりとか。
こうした組み合わせの遊び(特に、特定の行動に効果を組み合わせるような遊び)を装備だけで賄おうとすると結構無理があるので、単なる装備とは別枠で用意した方がやりやすいだろうなとは思います。
②組み合わせの遊びが装備のインフレに左右されない
装備にオプションとしてつける物なので、装備の基礎ステータスに影響されにくい。
この効果を使いたいんだけど、効果がついている武器が古すぎて攻撃力が足らないから別の武器を使わざるを得ない……みたいなインフレ的な制限の影響を受けにくい。
③キャラクターとは別軸の成長要素を追加できる
色んな装備に付け替えられるので、寿命が長く成長要素をつけるのに向いている(マテリアを育てる、という遊びが作れる)
④スロット数を装備の個性として扱える
「攻撃力は高いけどスロット数が少ないから工夫はしづらい」「攻撃力は高くないけどスロット数が多いから色々な効果がつけられる」みたく、スロット数(装備内の装備枠の数)を武器の個性として扱える。
また、装備が変わることで可能な組み合わせが変わると、組み合わせが一辺倒にならずに飽きにくい。
とか。なので、上手く扱えれば強力なのは間違いないと思います。
上手く扱えなければややこしいだけの要素になりますけど。
ただ……今説明したことって、本当に装備でやる必要ある?って話もあります。例えば習得したスキルに「全体化」のマテリアをつけるとかすれば似たような組み合わせの遊びを作ることはできますよね。
モンハンも「装備を作る」を超重要視しているから装備内に装備枠があるのは理に適っているんですが、じゃあ普通のRPGなんかで同じことをしたら上手くいくのか?って言われると疑問です。
ただし④の利点もありますし「マテリア」みたいな物質を扱うなら装備に紐づける方が分かりやすくはある。
その辺も踏まえて設計するところですかね。ここは。
◇迷った時は
そう言われてもな〜、どうすっぺな〜〜〜
という場合は、自分のゲームに対して許せる
◆下限(最小構成)
一番シンプルな形。装備枠の数を絞ったりとか装備の種類を絞ったりとか。
◆上限(最大構成)
一番ゲーム性を求めた形。
そのゲームに合い、かつ自分が扱いきれる限界の構成。
を考えてみるといいかもしれません。
とりあえずその範囲内に収めればいいでしょうし、後は下限側に寄せるか上限側に寄せるか考えればいいでしょう。少なくとも基準は生まれます。
(下限を考えるなら、「 防具は1枠だけでいいかな、いやさすがに1枠だけだと少なすぎるからせめてサブ防具枠がもう1枠は無いとダメだな」とか)
何だったらいったん下限で作ってみて、足らなかったら追加するみたいにすれば、余計なものを追加せずにシンプルな形に収まったりはしますね。
◆あとがき
今回の話はこれで終わり。
いや~、装備枠の話だけでも1万字の記事が書けるもんなんですね。
書き終わって文字数を見たら超えててびっくりしました。
当たり前のように色んなゲームに存在しているけど、意外と奥が深い装備枠のゲームデザイン。
ゲームを遊んだ時に「何でこのゲームこの装備枠でやってんのかな~」とかちょっと気にしてみるのも面白いかもしれませんよ。
◆宣伝
この記事以外にも、色々とゲームデザインに関する話を書いてます。
たぶんこの記事は26記事目……?
過去の記事は
とか。もっとどんな記事があるか知りたい人は ↓ からどうぞ~。
あと個人でインディーゲームを作ってます。
【固定ツイート】
— だらねこ@個人ゲーム開発者 (@daranekogames) May 25, 2024
ゲームブック風RPG『いのちのつかいかた』開発中です。
執着によってエンディングが変わり、今は4エンディングのうち2エンディングまで見れます。https://t.co/rxDSM5ni3q
あとnoteでゲームデザインに関する話を書いてるので興味あればそちらも。https://t.co/jUjt0WObgu pic.twitter.com/6CpA0hZuNS
なんと!当然このゲーム!!装備枠もございますよ!!!装備枠!!!!
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