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1930年代ウクライナの忘れられない歴史【赤い闇 スターリンの冷たい大地で】#058
独裁国家に立ち向かう実在したひとりのジャーナリスト、ガレス・ジョーンズの伝記映画。
赤い闇 スターリンの冷たい大地で
【あらすじ】
ヒトラーにインタビュー経験を持つ英国の記者ガレス・ジョーンズ。
1930年代の世界恐慌の中、彼は発展を続けるソ連に疑問をもった。
単身モスクワへ向かったジョーンズはソ連当局の監視をかいくぐり統治下にあるウクライナを訪ねる。
そこで見たものは目を背けたくなる程の大飢饉だった。
ジョーンズはその困窮ぶりに大きなショックをうける。
秘密主義国家の裏で起きてる惨状を、彼は報じることができるのか。
【解説】
日本では認知が高くないホロドモールを題材にした映画。
ホロドモールはホロコーストとならぶ20世紀最大の悲劇。
“ヨーロッパのパンかご”と呼ばれるほど豊穣な大地を持つウクライナの穀倉地帯は、1930年代に自営農家の土地などを没収され国営化された。
スターリン体制のソ連は、工業化推進に必要な外貨を得るために穀物の輸出をした。
限られた食物も徴収された人々は、十分に食べる事が出来なくなってしまう。
飢えてしまった人々は鳥や犬猫、樹木をむしって食べ、中には病死した人の肉を食べる者もいた。その結果チフスなどの疫病が蔓延。
こういった飢餓が発生していたにも関わらず、ソ連政府は輸出を続けたという。
ひた隠しにしたいソ連政府。隠蔽工作をしたとされる、米国タイムズ誌の記者ウォルター・デュランティーはソ連に関する報告書を彼らの望み通りに作成した。
ピューリツァー賞を受賞したジャーナリストでありながら、悪政に染まったデュランティー。
ガレス・ジョーンズは非人道的なデュランティーを批判。
そして真実を伝えようとした。
【ぼやき】
この大飢饉でウクライナは人口の20%
400万から1450万人以上が餓死したとされ、
ホロドモールはスターリンによって計画された
人為的な大虐殺ともされている。ウクライナの人々にとって忘れられない歴史。
更にウクライナだけでなくその付近のカザフスタンなども多くの犠牲者を出している。
その後、ソ連は長らくこの飢饉をタブーとしていたが1980年代には認めている。
しかしデュランティーのピューリツァー賞は取り消されていない。
ジョーンズの情報があまり多くないのは、彼の告発を恐れたソ連政府によって抑えこまれたんではないかと、この映画を観るとそう考えるが自然だ。
表に出ていない情報を命をかけて伝えようとした
実在の記者ジョーンズ。
権力によって事実が曲げられるのは現代も同じだ。
簡単にフェイクニュースに翻弄されるの現代人は
自力で世界の状況を感じ取り、メディアが機能しているか日頃から目を見張らなくてはいけない。
2019年に公開された本作は残念な事に意味を持ち続けている。
ウクライナ人だけではなく人類にとって忘れる事のない歴史として沢山の人に知られるといい。
その為にこの映画は存在しているように思える。
人間は戦争を終わらせることがどうしてもできない。
そういう現実の中で生きていると身にしみて感じる作品だった。