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剣闘士映画の凄作S・キューブリックの『スパルタカス』♯124


スパルタカス 

1960年/アメリカ


【ストーリー】



トラキア人の奴隷スパルタカスは、商人に買われて剣闘士養成所へ送り込まれる。そこにローマからやって来た将軍クラサスが、真剣試合を見せるように命じる。選ばれた奴隷の二人はドラバとスパルタカス。生死を賭けて戦う二人だが、ドラバは突然クラサスに向けて槍を放った。


【解説というか、レヴューというか、】

 

古代ローマ帝国。皇帝による政治体制でエライ目にあう剣闘士映画が『グラディエーター』で本作はもっと前の時代。奴隷以外の皆で政治を回していた、紀元前73年頃の共和性ローマが舞台だ。



人権がない奴隷、スパルタカスが抵抗をした事で始まった反乱。多くの奴隷を集めた軍は強大なローマを脅かします。だがその奴隷たちは、ローマを倒すのが目的ではない。

多くの奴隷を解放した後は、それぞれの故郷へ帰る為にイタリアを脱出するのが目的だっていうんだから、スパルタカスってのはめちゃカリスマだ。

奴隷には手品をしたり詩を読んだり出来るしなやかな知性を持った者もいた。多様な者を集め組織化された奴隷軍は、ローマ軍を本気にさせます。軍隊の行進から歩兵戦術で始まるローマ軍の攻撃は超絶見もの。常軌を逸した兵の数も度肝を抜かれます。奴隷の労働力なしでは成り立たない巨大なローマは、彼らの抵抗を絶対に許しません。

将軍クラサスはローマを維持する為に攻め打ち、尚且つこれを機に出世しようと興じています。それどころか独裁をも狙っています。

剣闘士映画の裏の部分、元老院たちによる政治闘争が、この映画の面白いところでもあります。元老院とは国会みたいな最高決議機関。この存在がもうハラスメント。


物語は、ロマンスの部分と元老院の最高指導者クラッカス以外はほとんど史実に近い。

ポヨポヨした安西先生みたいなクラッカスおじさん、ただ食べてお風呂に入ってるだけのオジに見えるのだが、独裁者を出さないように奮闘中。取引で治世を動かそうとしている知恵者です、しかも名門貴族の出身。なんとかクラサスを陥れたい。身分も戦い方も違うが、スパルタカスと同じ敵を持っている。

この二人に接点はないが、元老院の主導権争いに、運命を握られているのがスパルタカスなのだ。故郷に帰れるかどうかは、戦地へいかないクラッカスに掛かっている。

また名優ローレンス・オリヴィエが演じるクラサスの悪役ぶり。負けてたまるかとスパカルタカスを追い込み、奴隷相手に貴族の異常なプライドを見せる。しかも武力というより、財力で立ち向かうではないか。貴族らしいやり口。俺はお前より上だとばかりにスパルタカスに見せつける承認欲求。いやはや狂気的。そんな支配と闘う決死の抵抗を魅せるのがスパルタカス。負け戦に挑む姿がめちゃくちゃかっこいい。ほんと伝説です。


そしてこの映画、なんと休憩時間が設けられている。3時間を超える大作だからか、にしてもこんなのあるんだ。さすがはスタンリー・キューブリック。視聴者に優しい?天才。

正にカリスマ



「アイム、スパルタカス」のシーンは涙なしには観られない。本当に素晴らしい作品でした。


【シネマメモ】 

 

ファンタジー混じりのソード&サンダル映画『グラディエーター』大好きだけど、こちらがまた凄い。なにせキューブリックだもの。歴史好きさんからも絶賛。歴史映画として凄作。面白過ぎて泣きました。





参考サイト:世界史の窓/wikipedia
スパルタカスの軍は12万とも。戦後は奴隷にも一部の土地を与えたり妻を持てたりしたらしいのでスパルタカスの乱は無駄ではなかった事になる。
不当な扱いを受けたら抵抗しなくては。今すぐは変わらなくても、後に続く人がいるものなんだな。

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