映画は時代の憂鬱を吐き出す【ワンダ】♯066
世捨て人みたいなワンダ。彼女を苦しめているのは一体ナンダー。
【ストーリー】
炭鉱町に住むワンダは知人の老人からお金を借り
バスに乗る。夫との離婚審問に出廷するためだった。
離婚後、町を彷徨うワンダはバーである男と出会う。
彼の言われるがままに行動を共にするワンダだが、
実は強盗犯である事を知る。
【解説】
アメリカの底辺社会に置き去りにされた崖っぷちの女性の姿を描くロードムービー。
ワンダは夫と二人の子供を乾いた表情であっけなく捨てる。そして無一文でバーに入っては男に奢ってもらう。
自分の居場所がなくなったワンダはそんな毎日を繰り返す。
冒頭から非常にドライな滑り出しだ。
漂流する様に町を彷徨うワンダの表情は終始虚げ。
自由や幸福とされているものに対して、
疑念を抱えて生きているからだ。
そこで出会った強盗犯のミスターデニス。
この男もまた自由の国に重圧を感じてる人間。
別に長生きしなくていいから今が幸せでありたい。
ヒッピー的な世界観が漂う70年代。
“いい奥さん“とか“出世競争“に勝ってる人だけが
価値がある人間とされる世の中に対して、
そんなのもういいっすよっていう
カウンター(対抗心)がこの二人を逃避行させる。
フェリーニの”道”やアメリカンニューシネマの
”俺たちに明日はない“みたいな雰囲気を彷彿。
自由の国で不自由を感じているADHD気味なワンダの
『助けて』
を描いた映画。
現代に彷徨う人間にも必ず響く作品。
監督、脚本、主演のバーバラ・ローデンは癌で
1980年に48歳で亡くなる。
本作は1970年にヴェネチア国際映画祭で外国映画賞を
受賞している。なのにだ、アメリカでは黙殺されてしまったそう。
そして今、名だたるアーティスト達に推されて
ようやく日本で初の劇場公開。随分時間が掛かったこと。
【memo】
全てのインディペンデント映画の要素が入ってる傑作。
そうそう、ヴィンセント・ギャロの“バッファロー”66“の
元ネタはこれだと確信。
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