鳩の睡眠はおかしい
睡眠がおかしいという話。
とにかく朝が苦手な子供だった。昼寝であろうと寝起きが悪いため親には嫌われた。昼寝しないでくれと言われた。
世の中には目覚ましがなくても予定時刻には目覚めているという超能力者がいるらしいが、別の生き物だと思われてならない。
成長してからも、とにかく朝はギリギリまで起きられないし、ゾンビより元気がない。動き出してしまえば問題なく動けるようになるし、夜はホラー映画の怪物のごとく不死身である。
15年近く前に睡眠についての調べ物をした。勿論睡眠時間を削って。睡眠相や概日リズムなどの基本用語を身につけた。人間の体内時計は24hで設計されていないから、陽に当たってリセットしないといけないという。それならば怪物でいたい。奇抜な格好で夢の中に現れるのもいいし、変なお面をかぶるのもまたよかろう。
朝型/夜型は遺伝子で決まるという話が一般的になったのはこれよりもう少し後だろうか。
昼夜別々のファイト・クラブのような生活をしたこともある。徹底破壊したのは自分の心身だけである。
終電を逃すのが当たり前で、深夜の散歩をしながら食事をする訓練を受けたこともある。
睡眠時間は明らかに短いのに、不調を起こすことなどないのだ。
かと思えば、できる限り眠って過ごす時期が来る。眠っていない限り考え事をやめられず、常に頭の中で自分の声が思考を進める(どうやらこれは異常らしいが)し、ついでにBGMまで鳴っていることが多い。眠ることでしか解放されないのだ。しかし、眠ろうとしても気絶するまで思考はぐるぐると回る。
そして、悪夢を見る日々が始まった。悪夢というと命の危険を感じるものから、学校に遅刻する夢まで様々見てきた。時々見る分にはさして精神への影響を感じることもなかった。とはいえ、既にこの時点で人より頻繁に魘されていた可能性はある。目覚めてしまえば命を脅かされているわけでもないし、行くべき学校などないのだから、退屈な日常に引き戻され、また夜に眠りを求めるわけである。
しかし、ある時悪夢が現実のものとなった。密かに恐れ続けていたことが、実際に起こってしまったのだ。頻出悪夢帳があったなら「ズバリ的中」という帯が付くことであろう。
それをきっかけに悪夢の頻度は上がり、バリエーションも増えた。日中も眠る前も、悩みに関する考え事は増える。寝付けないし、眠っても悪夢で目覚める。時計を見れば精々2,3時間しか経過しておらず、もう一度眠れることに安堵してみたりする。そして、今度は本当に強烈に辛い朝が迎えに来るのだ。
これを悪夢と呼ぶのかは知らないが、現実を先取りする「取り越し苦労夢」あるいは「予行演習夢」を見ることも多い。かつては夢の中で身支度をして学校に向かったものであるし、近年はあまり見ていなかったが、何かの締切や通院など、強く意識する予定があると見やすいようだ。
この手の夢は、忙しい日々や睡眠不足で肉体的に(も)疲れている時に多いようだ。(もっとも、心身を切り離して話をするには厄介な分野であるが)朝方にこうした夢で目覚め、夢の中で済ませた用事を実際にこなすのだ。うんざりする話である。