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迎春バースデーケーキ
雨。日の出の時間が差し迫るのに、光の侵入を許さないかのように暗いまま時間が過ぎていく。
そう思いながら空を眺めていたのだが、5分もた経たぬうちに暗闇の空がにわかに色を帯び始めた。濃紺、深いブルー。雲は厚いが空気は澄んでいる。グラデーションの豊かな色の変化があるのは光が空全体に行き届いているからだ。
珈琲を淹れ、パンを焼き、テーブルにつけば、空は薄鼠色。バルコニーの枝木が揺らいでいる。
降りしきる雨は地面を跳ね返り、今日は寒さを決め込んでいる空模様。
今日の予報は見込み通りで、なので外予定は昨日のうちにと思っていたのに、これが予想外の方向へ進み、ハーちんのお散歩が押し出されてしまった。午後にはひとまず雨は止みそうではあるものの、どこをどう切り取っても寒い。それを考えるとお散歩は身震いする。雨のあと、靴を履いていても肉球は冷える。触ると冷蔵庫で冷やしたグミみたいである。
家の中で遊べることを何か捻り出そう。そう思いながら跳ね返る雨粒の作る波紋を眺めている。
昨夜はおじたんにバースデーケーキを作り、バースデーカードも仕掛けカードにして渡した。
大人になるとやらなくなることがある。ケーキを食べることもその一つで、特にショートケーキのような定番のケーキほど食べなくなる。
だからこそ、クリスマスや誕生日といったイベントとなる日はそういう“定番ど真ん中”で、どこか子どもの頃の思い出や自分の中の安心できるところに通ずるようなショートケーキを食べてもいい、そう心が緩むような気がする。
そういうわけで、苺のバースデーケーキを作った。この時期になると苺も大ぶりのいいものも少し穏やかな価格になってくれるから贅沢にひとパック使う。少し変化球、苦味の効いた抹茶生地と玄米甘麹で煮た小豆餡を間に挟み、和菓子好きさんの気持ちと作り手の春を感じてほしい部分を重ね合わせた。
見た目は雪に閉ざされた大地のように白い豆乳クリームが覆う。切り分ければ、断面には蓬色の抹茶スポンジが現れる。春を内包した大地さながらに。
“わぁ〜”という感嘆の声が嬉しい。クッキーやマフィンとはちょっと違う。ケーキというジャンルがお菓子の中でも芸術的なものであることを実感する。材料を揃えること、工程からすれば焼き菓子より緊張感もあるが、イメージを膨らませ、具現化していく楽しみ、そして、食べる時の感動を味わえるのがケーキの醍醐味だと思う。
年に数回だからこそちょうどいい。
自分にとって、どのくらいが身の丈か。良いこともストレスなことも、身の丈がいい。背伸びして良いを無理しても、ストレスがなさ過ぎることも、悪いストレスを抱えたまま暮らすこともどれも成長には繋がらない。身の丈とはそこに安住するわけでもない。常に変化していく身の丈を、自分で逃さずに、そしてその変化の分の自分の行動、思考、環境を変えていけるかということが身の丈に合った暮らしをするということと思う。
薄鼠色だった空もようよう白っぽくなってきた。
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