「海に眠るダイヤモンド」と「母を待つ里」

私にとって、今年一番記憶に残った俳優は宮本信子さんだと思う。海に眠るダイヤモンドの最終回のあのコスモス畑のシーンを見て改めてそう思った。
このシーンは色んな感情を決壊させる。
コスモス畑の向こうに海が見えて、その先の端島。
鉄平が自宅から眺めたこの景色を時間を超えて朝子が見る時、やっと思いが重なった気がするからだ。
このドラマはもう過ぎ去った過去の日常を生き生きと現在に結びつけてくれる。
それは、ある日突然恋人が消え、それでも現実を地に足をつけて生き抜いた朝子を自然体に、でも力強く演じてくれた宮本さんのお芝居があったからだと思う。

でも、今年宮本さんが出演されていた作品で「母の待つ里」というのがあって、私はこちらもとても好きなんです。
この作品で宮本さんは、「実家で一人暮らしをしている母親ちよ」を演じている。
実はこの母親は、カード会社の旅行プランの架空の母親で、お客は久しぶりに実家に帰って母と過ごすと言う設定を買っているのだ。

旅行プランのお客はすでに母親を失った都会に住む所得の高い人達で、中井貴一さんや松嶋菜々子さん等が演じていた。
ちよさんは、寂しさを抱えた息子、娘役のお客さん達に、控えめに寄り添い、田舎料理を作ってくれて、昔話をしてくれる。
その昔話の場面も、宮本さんの語りと共に浄瑠璃の演出があってすごく見応えがある。
お客さん達は、旅行プランだとわかっていても、ちよさんに心を開き、リピーターになっていく。実はちよさん自身も寂しさを抱えた人だったのだけど。
この「母の待つ里」は、実際の実家よりも甘やかだ。実際の自分の田舎は多分、もうちょっとほろ苦い。親はもうちょっとワガママで、自分自身もワガママだったりする。
だからこの疑似ふるさとは大人のテーマパークと言われるのだろう。

何か不思議な感動のあるドラマで、役者さん達の縁起も素晴らしく、細かいところまで丁寧に作られている印象だ。
そして、ふるさとである遠野の映像がとても美しい。ふと私は別のドラマ「フシギ部の事件ノート」※新原泰佑くんはイチオシです。を思い出したのだけど制作会社が同じだった。

色んな素晴らしい役者さんがいるけど、宮本さんのお芝居に私は良く心を動かされるようだ。
「朝子はね、きばって生きたわよ。」

やっぱり良いドラマだ。



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