「室井慎次から解放させたかった」

「室井慎次 敗れざる者」皆さん見に行かれましたか…?

 私は「踊る大捜査線 THEMOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」が公開された2003年まだ生まれていませんでした(1年後に生まれます)。
2019年に「踊る」にハマってその熱は今後一生冷めない、世界で一番大好きなコンテンツです。でも、好きになれば好きになるほどもう完結している「踊る」に思いを馳せることはしんどい部分もありました。リアルタイムであの熱狂を味わいたかった、青島君に室井さんに、踊るの皆に会いたかった。

 でも、続編を望んでいるわけではなかったんです。だって終わりは2012年にあったから。好きになった時にもう終わっていた、しょうがないよね、と思ってました。きっとリアタイのファンだったら、続けてほしいと思ったかもしれないけれど、私は織田さんに「また青島君やってください」とは絶対に言えないです。織田さんはMOVIE3をやったときに「死ぬまで付き合う作品になるのかな」と、FINALの時に踊るが終わる悲しみを素直に吐露していました。そんな姿を見ると、思った以上に「踊る大捜査線」の終わりは早かったのかもしれない。でもそれを受け入れて「踊る大捜査線」を「青島俊作」を生き抜いた織田さんに新たな始まりを望むことはあまりに酷なことだと思ったんです、私は(もちろん柳葉さんや他のキャストの皆さんにも)。

 それが、なんと「踊るプロジェクト再始動」

 たまげたどころじゃない、心臓に悪い。
夢なのか夢じゃないのか、現実なのか現実ではないのか…。
もう何事!!!!????っていう。正直素直に「わーい」とはなれなかったですね。いや、じゃあFINALは?って。終わりって言ったじゃん。

 SNSは大盛り上がりで、踊るプロジェクトの情報が公開されるたびにかなり複雑な心境でした。それでも自分がリアルタイムでは見ることが出来なかった「踊る」が今まさに動いていると思うと喜ばしくもありました。

 今作は不幸な目に遭えば遭うほど輝きを放つ、室井慎次さんが主役。二部作であること、「踊るプロジェクト」と銘打っていること、そして地上波で過去作を再放送というお祭り具合から見て、この映画を皮切りに「踊る大捜査線 本編」を今後やっていくんだと受け取りました。本広監督が「今作は踊るじゃない」と仰っていたので、すこしモヤモヤが解消されたり、されなかったり。まあでも見るよ、とそして今後に続くであろう「踊る」のために公開を楽しみにしていました。

 実際「室井慎次 敗れざる者」思った以上に、満足感ありました。過去の映像や往年のメンバー、踊る味も感じるし、雪乃さん良かったね!という温かい気持ちになりました。新城さん室井さんに人生狂わされすぎてて、かわいそうで笑っちゃったけど、踊るって非情な会社組織の中でも人と人との出会いの大切さを描いている作品でもあると思うので、新城さんはそれでいいんです。「生き続ける者」を見てみないと完全な評価はできないけれど、次が楽しみです。

 なのにね、今凄く解せないです。
「室井慎次 生き続ける者」の完成試写会で明らかになった踊る制作陣の「柳葉さんを室井から解放させたい」という考え。
分からない、ほんとにわからない。踊るの制作陣・スタッフの方々にはリスペクト、感謝ほんとにあるけれど、こればっかりは言わせてもらう。

「柳葉さんは室井をやって以降、スーツを着る役や反社、強烈な犯人役などは全て断っていたということも聞き、室井に決着をつけてあげたかった。」

 どういうこと…?じゃあFINALはどういう気持ちで作ったの?そういう思いがあるなら、それはFINALでやるべきだと思う。長く続けることで役とキャストが同一視されてしまうことは、初めから分かり切っていたことだと思うんです。織田さんも柳葉さんも、「青島を超えたい」、「室井を超えたい」という思いは「踊る」をやっている時からあったはずです。それでも15年もの間、青島俊作・室井慎次を生かす責任をとことん果たしてくれたと思うんです。人から愛されるものを作るって、そういうことなんだ。柳葉さんが室井のイメージを壊さないようにと、自分とはまた違う室井という人間を客観的に見て彼のイメージを損なわないようにしてくれてる、柳葉さんが室井慎次の一番のファンなんだろうと思います。

 完結している作品は沢山あるけれど、私は本当の意味ではドラマ・映画作品って一生完結しないと思います。というかそう思わせる作品じゃないといけないと思う。過去のドラマ作品を見て、俳優女優のファンになる、モデルとなった職業になりたいと思う、その作品のファンの人たちがSNSで交流する、これって今も当たり前に起きていることです。どんなに過去の、完結している作品だって今誰かが見て、好きになる、これでドラマの登場人物はみんな生きるんです。今から「踊る大捜査線」をスタートさせる人だっているでしょう。「踊る大捜査線」はヒーロー物語じゃなくて、実社会を生きる人たちの葛藤、苦しみとそこに見出した光を描いた作品でしょう?今もお台場では事件が起きてて、湾岸署のみんなが走り回ってると思わせてくれる作品でしょう?だから「解放」なんて言葉は使わないでほしかった。というか「解放」させていいのか?

 いずれにしても、「室井慎次 生き続ける者」を見てみないと、何とも言えないけどね…。先行上映見に行くよ…チョロいから…。どんなに制作陣が柳葉さんを室井から解放させようとしたって、私の中では柳葉さんは室井慎次だし、土門隆くん(君の瞳を逮捕する!)、島田祐二(ハートに火をつけて!)、甲斐拓実先生(愛し合ってるかい!)だし、野茂俊平くん(すてきな片思い)、新谷賢(29歳のクリスマス)でもあるし、田所晋作(きらきらひかる)、黒田修二(コード・ブルー)もそうだし、そしてやっぱり柳葉敏郎であるんです。みんな柳葉さんがその一瞬一瞬を生きたキャラクターで、今もなおずっーと生きている。

 室井慎次がこれからも誰かの心に、そして室井慎次自身が自分の人生を生き続けられる作品になっていることを期待しています。


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