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「室井慎次 生き続ける者」ネタバレあり考察 なんでこうなってしまうのか、踊る大捜査線を返してください。

 「室井慎次 生き続ける者」全国ロードショー…。
私は先行上映2日目に行きまして、やっと気持ちの整理ついてきたかなというところです。今回は、ネタバレ大ありで今作の良かったところ、悪かったところを偉そうではありますが考察していきます。
最初に言っておくと、私は今作は賛否のぴ!のほうなので今作を良い、好きと感じた方はわざわざ私の考察なんて見なくてもその感想を大切にしていただきたいなと思います。今回はぴ!側の方と分かち合いたくて書いています。

良かった点

・役者陣の演技

 こんなことを改めていうのも失礼だとは思いますが、柳葉さんをはじめ皆さん素晴らしかったです。特に挙げるなら、森貴仁役の斎藤潤さんと桜章太郎役の松下洸平さん最高でした。斎藤潤さんは「カラオケ行こ!」を見た時もいい俳優さんだ~と思ったけど、今作も良かった素晴らしかった。「敗れざる者」での加害者との面会シーンは、あれで完結でいいよって思いました。遺族になってしまいどうしても強くならなきゃいけなかった少年の奥にある弱い部分が、斎藤潤くんの演技からひしひしと伝わったし、その弱さを隠していた見せかけの強さが本当の強さになる瞬間を見せてもらいました。監督は松下さんが演じた桜を青島として捉えていたようですが、私はタカくんが青島だろうなと思いました。
 松下洸平さんが演じた桜章太郎はもう、もっと早く踊る出て!って思うくらい好き。警視庁のキャリア組なんだけど、今作では数少ない最初の内から室井さんに協力してくれる人。彼のバックグラウンドはもっと知りたかったし、本当なら彼のポジションは鳥飼君(MOVIE3から登場の小栗旬さん演じるキャリア)にやってほしかった(それこそが「新たなる希望」だよ)という気持ちもあるけれど松下洸平さんの踊るらしさのあるキャラの落とし込みが凄く好きでした。スピンオフ欲しい。
 柳葉さんは言わずもがなです。愛です。

悪かった点

 え、良い所1個?というツッコミはなしですよ。今作はぴ!です。あげたらきりがないので、演出面は置いておいて、内容だけ取り上げます。

・必要だった?謎の失恋。

 タカくん(斎藤潤さん)が恋するクラスメイトの女の子(丹生明里さん)と前編ではかなりいい感じで「高校卒業したら仙台の学校に一緒に行きたい。」的なこととか、「タカの家に遊びに行きたい。」、「タカの読んでる本読みたい。」とか言ってたのに後編で突然豹変。あとこの子髪切ってたよね?髪短くなってて「あれ?」ってなった。それとも結んでたのを下ろしてただけ?この子「専門学校はやめて東京に行く」、「お父さんがタカのお母さんの事件知ってて遊びに行くのダメだって」とかあまりにも時代錯誤なこと言い始めちゃって、違う男の子といちゃついてるし。この子こそ何があった?って感じの大事件すぎて、だれか救ってやれよと思った。結局よく分からない女の子のままフェードアウトしたし…。この失恋が意味あるものならいいんだけど、特にないから君塚さんの中にまだ女性に対する穿った見方残ってるんだな~という感想。で、タカくんが泣いちゃって、それを見てたリクくん(前山くうがさん・こうがさん)が「室井さんは泣いたことあるのかな?」ってなるんだけどそこも特に回収されなかったね!回収されろよ、なんのための失恋?受験生は恋愛するなってことかな、ね。

・室井さんの「家族が傷つく」理論

 室井さんが今作の事件の犯人に対して、「犯罪が起きると、家族が悲しむ
、傷つく」(台詞は細かく覚えてないです)と言っていました。うーーん、確かにそうだけどちょっと足りなくない?家族も悲しむだろうけど、家族いない人は?ひとりの人は?そして何より悲しいのは被害者でしょう。今作ではこの理論を筋にしていましたが、甘くないかと思ってしまった。犯罪をしたら誰が傷つくとかそんなレベルの話をいまさら室井さんがする必要ない、そんなのあたりまえのこと。加害者に寄り添う必要はないと思うけど、犯罪を犯してしまう理由とか、その思考に至るまでを知っている室井さんがこんなこと言うのかな?という疑問が残りました。雪乃さんとかすみれさんを見てこの考えに至ったのか?だとしたらもっとうーーんですけどね。しかもそれ言うならあのラストは絶対になしだろ。残された側のこと結局何も考えてないというね。家族がいるんだから…みたいな理論って、ドラマ1話で青島君が言った「田舎のお袋さんが…」とほぼ同じ、当時はテレビドラマの見過ぎと一蹴されたこの台詞を令和のこの時代にしかも室井さんに言わせるのは、違うなあ。これ室井さん言うか?ってこと他にもあるから続けて書きます。

・非暴力・不服従とは

 室井さんが商店でよく分からない不良たちに絡まれて、嫌がらせ受けるんです。この不良たちはなんなの?私はタカ君が好きだった女の子となにか関りがあるのかと思ったんですが、別になかったです。仲間内でもめてる理由も分からないし、ほんとキャラクターとしてよく分からない。不良たちが商店の棚とかばったんばったん倒しちゃって室井さんが止めに入るんです。「外で話しをしよう。」と室井さんは言いますが、不良聞いてないし全然殴られる。そこで「お菓子、棚に戻そう!!」という室井さんの説得、まじでなんで?室井さん口下手とはいえ、元々バリバリのキャリア警察官ですよ。暴れる奴らを大人しくさせることも、そういう言葉もかけれるほどの経験を人一倍してるはずなのに、甘くない?(さっきからそればっかり)。しかもそれで不良ども改心してんのね、パラレルワールド?せめて、彼らの話聞かせてくれ。室井さんが魔法使ったとしか思えない。この描写は必要だったのだろうか、それならタカ君が好きだった女の子を救ってあげてくれ。
で、ここでは室井さんは不良に殴りかかって無いので(元刑事としても、室井さんてきにも解釈一致)そこはいいんですけど、その後リク君が学校でいじめられてしまう話に移ります。これもまたゲームもってないからという、小学生を馬鹿にしてるなと思う理由ですが…。いじめっ子と揉めてリク君が頬に怪我をして帰ってくるんですが、そこで室井さんは「今度何かあったら俺を呼べ。」と。いやどゆこと???????
何かそういう話してたっけ。深いこと言ってるようで言ってない。全編の生駒里奈さん演じる弁護士に放った「君がうちに来て最初にするべきだったのは彼(タカ君)の母親に手を合わせることだったんじゃないのか。」は良かったのに。この台詞は、被害者遺族である雪乃さんに対して自分の正義を振りかざし、雪乃さんの気持ちを顧みない取り調べをした室井さん、そして雪乃さんが湾岸署の面々に支えられて刑事にまでなった姿を見ている室井さんだからこそ言えた言葉だと思うんです。なのに、後編の台詞はどうもそこに室井の心が、生きざまが乗ってないよなという言葉ばかり。しかも、その後リク君がいじめっ子たちにやり返して、嬉しそうに帰ってくるんです。その姿を見た室井さんが「やり返したのか…何人やった?」と聞き「一番大きいやつ!」と答えるリク君。いや、ちょっと待てい。え、いいの?やり返すの止めた方がいいんちゃいます?これも難しい問題だけど、きっと制作陣はいじめではなく単なる嫌がらせくらいにしか思ってないんだと思います。殴られて、殴り返して仲良し!なんて青春ドラマの見過ぎだし、それが成立するのはそれなりの理由がある時だけ(よくあるのは同じ子を好きなっちゃったみたいなね、一応そこには男同士の絆みたいなのもあるじゃん)
ゲームもってないとかいう、一方的な理由の暴力はいじめだから。

後これは、別に言わなくてもいいかなと思うんだけどどうしても気になったから置いておきます。室井さんがリク君に対して、真っ白の瞬足(運動シューズ)をプレゼントするじゃないですか。あれ、あり得ないと思うんです。
私、雪国生まれなんですが、真冬にあの夏用シューズは絶対に無理ですよ。
あんなので外に出たもんなら一瞬で靴下までもってかれます。いや多分その後のリク君が実のお父さんのところから戻ってくるシーンで、どろどろになった靴が写ったので、そこを撮りたかったのか…と思いましたが、それにしたって無理がある。それなら帽子とか、手袋とかそういうもので良かったんじゃない?雪を舐めるな。

・あまりに雑な寝返り

 マジでこれは何だったんだ。今回の事件の犯人も、先ほど取り上げたよく分からない不良たちも、猟友会のメンバーもなんであんなに簡単に寝返るんだ。室井さんなんかしたかな??もともと嫌な感じだった人たちが、親しくなるうちに良い人になっていくってありがちたけど、室井慎次というキャラクターをもってすればいくらでも話広げられると思うんです。「生き続ける者」というサブタイトルを付けているなら、もう警察ではない室井さんが秋田の人たちになにか影響を与えないといけない。里子を育てているとか、約束を果たせなかった自責の念とか、そういう室井さんのバックグラウンドでこの人たちが動かされちゃダメでしょ。室井さんがあの人たちを、あそこまで変えるほどなにかしたかなという感想です。日向真奈美の娘の杏ちゃんも、しっかり描かれていなかった。というかもともと、日向真奈美と室井さんは殆ど面識ないですよね、「これはあなたの事件でもある。」とか言われていたけど、日向真奈美が憎むとしたら絶対に青島くん。日向真奈美という、名前を使ってこの作品のスケールを大きくしようとしたのかもしれないけどそれならもっと杏ちゃんを丁寧に描いてほしかった。全部洗脳でした見たいなオチはあまりに雑。


・映画史に残るラストシーン

 いやほんとに、どうすればいいんですか。なんで室井さんが死ななければならない?しかも、シンペイを探しに行って…。先ほども言いましたが、私は雪国育ちなので、毎年のように冬は吹雪(ホワイトアウト)になるし、死亡事故もあるんです。吹雪のなかで亡くなるって、室井さんがこんな最期を迎える意味が分からない。私にとっては室井さんの最期に見た景色って身近でリアルに想像できるので、本当にしんどかった。なんでこんなに辛い最期にしなければならないの?これじゃあ、冷たい海の中で亡くなった室井さんの恋人の江里子さんと同じじゃない。残される側の痛みを分かってる室井さんが、なぜという気持ちでいっぱいです。

「柳葉敏郎を室井慎次から解放させたい」=「室井を殺す」だったのか。
いやもう勝手にしてください、その最期を描きたいならやらなきゃいけないこと沢山あったのに、色々おいて何も回収されないままこんな最期見せられて。こんな形で室井さんを失ったことに涙が出ます。

 「踊る大捜査線」のメインキャラはほとんどが、死にそうな目に遭っていますが、みんな何とか生きて刑事続けてました。「…死んだんじゃないのか?」が通用するのが踊るの魅力だった。今回もそうならよかったのに(それもどうかとおもうけど)。とにかくここまでして、解放させたいという意見もよく分からないし、「死」を使わずに解放させるのがプロでは?というか死んだら解放になるという理論がよく分からない。本当に分からない。

・まさかまさかの

 エンドロールが終わって、ほんとのラストシーン。はい、青島俊作登場です。情緒壊れるからね!!!!!まって、青島くんメインで続けていくのか…?とも思いましたが、どうやらこの登場にも裏話があったみたいです。

このラストは織田裕二さんから、提案されたお話だそうです。


 いやちょっと待って、織田さんが言わなかったら、このラストもなかったってこと?室井の最期を描く=青島が必要 という考えが制作陣にはなかったのだろうか。裏話をどこまで信用するかは難しいですが…。
私は織田さんがこの作品に青島が必要と思ってくださったのは、踊るを、室井を、青島を、二人の関係を今もなおずっと変わらずに持ってくださっているのだと思いました、嬉しかった。
だからこそ、制作陣もっとやりようあったよねと思ってしまいます。
私は、15年かかって最後の最後にやっとスタートラインに立った、室井青島にとってこの映画はあまりに残酷だと思うし、踊るじゃないというなら室井慎次でもないんだよ。そこは切っても切り離せないって共通認識じゃなかったのか。室井慎次という名前を使って、こんなに雑にこのラストを描くことはただの自己満足にしか思えない。「踊るじゃない」こんな免罪符を使えば、こんなことができるのねと悲しくて、ムカついて、怖いです。そういう制作陣の姿勢が、許せない。これじゃあ、作品の私物化と言われてもしょうがない。

 この作品が良かったと思う人もいるだろうし、そういう方々を否定する気は全くないです。でも、私が愛した「踊る大捜査線」は「室井慎次」はもういない、ただそれだけです。室井さんと青島が、約束を果たす未来はなぜ来なかったのだろうか、だれか教えてほしい。私は青島君を失った室井さんも、室井さんを失った青島君も見たくないです。そんなの踊るの世界線でやるわけないと思っていたよ。

 2人が約束を果たして、笑いあっている老後を夢見ることも許されないのか。過去を振り返ることも今となればしんどいです。


助けて、和久さん…。
「なんてな。」ですべて許すから、とにかく室井慎次よ、生き返れ。


 


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