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帝京新書2024年11月の新刊――〈プリツカー賞受賞記念〉 受賞後初・新書初の書き下ろし 『建築家の責任』(山本理顕著)

 帝京大学出版会の人気シリーズ「帝京新書」の11月新刊は、建築家山本理顕氏の『建築家の責任』を予定しています。山本氏はことし5月に「建築界のノーベル賞」といわれるプリツカー賞を受賞しました。本書は受賞後初の、そして新書初の、書き下ろしとなります。
 建築を通じたコミュニティー創出が高く評価され、受賞につながりました。公共空間と私的空間の境に、「閾(しきい)」と呼ばれる空間が世界の集落に存在することを発見した著者は、人びとを招き入れる「閾」がコミュニティーを維持・成長させる役割を担ってきたと結論付けます。「閾」がなく、プライバシーとセキュリティーを重視する超高層マンションは閉塞するあまり、コミュニティーを破壊すると批判します。
 批判の矛先は同じ建築家へも向けられ、建築家の条件に「思想」と「調停力」を挙げます。「思想」は建築家として自立し、発注者に迎合しない姿勢。「調停力」は発注者と利用者、発注者と地域住民、公共空間と私的空間、開発と保存、建物と景観のそれぞれの間を調停する能力だと言います。 
 本書は二部構成で、Ⅰ部は著者が持論を展開し、Ⅱ部は著者とファッションデザイナー本郷いづみ氏(ベルギー在住)の対談から成ります。本郷氏は早稲田大学大学院で建築を専攻し修士課程を修めたあと、ベルギーのアントワープでファッションを学び、自身のブランド「VAN HONGO」を立ち上げた異色のデザイナーです。
【編注】写真は山本理顕氏の代表建築である「横須賀美術館」(Ⓒtoshihiro.tani)。


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