歴史は繰り返さなかった藤井聡-羽生のタイトル戦
将棋界のレジェンドと言えば、羽生九段はもちろん、大山十五世名人や中原十六世名人がいます。
藤井竜王も間違いなくその仲間入りを果たすでしょう。
新旧レジェンド対決、すなわち、大山名人中原名人と、羽生九段の頂上決戦、これは実現しませんでした。
あと一歩で最高の舞台で対局ができたのですが、その一歩が遠い。
そんな歴史を将棋史は残しています。
羽生九段若かりし頃、偉大な大先輩と、最高の舞台で対局できるか、いやできなかった。
そうガッカリしたファンは、今も当時のことを記憶しているのではないでしょうか。
羽生九段がA級から陥落したと同時に藤井竜王がA級に昇格しました。
またか、と思った方もいるのではないでしょうか。
そんなファンも、今回、藤井聡-羽生のタイトル戦が見れて、歓喜していることでしょう。
この二人のタイトル戦を見れるというのは、将棋ファンはもちろん、日本全体が注目しているようにも思えます。
本日第72期王将戦で、藤井王将対羽生九段の第一局が終了しました。
今回は、そんな、歴史を繰り返さなかった、というお話です。
■大山十五世名人と羽生九段の順位戦
大山十五世名人と言えば、長らく将棋界のタイトルを独占していたり、60代での名人挑戦や69歳で順位戦A級など、考えられないほどの記録を打ち立てている棋士ですが、順位戦の最終参加が51期(1993年)です。
69歳で現役A級棋士のまま、亡くなりました。
ちなみにその前年ではプレーオフまで進んでいます。
で、その51期のB級1組を勝ち抜いたのが、羽生九段です。
51期の春先まで大山十五世名人はA級で指していました。
52期(1994年)から羽生九段がA級に参加しました。
あともうちょっとで、二人のA級順位戦での対局が実現しましたが、残念ながらそうはなりませんでした。
もちろん他の棋戦での対局はありますが、A級順位戦での対局が実現していれば凄かったなと思います。
■羽生九段と藤井竜王の順位戦
藤井竜王、というと藤井猛九段を思い浮かべる将棋ファンはけっこういるかと思いますが、現在の肩書だと竜王は藤井聡太さんですね。
さて、偉大な大名人、大山十五世名人と入れ替わるようにA級順位戦に参加した羽生さんですが、順位戦初参加からいきなり名人へ挑戦し、そのまま名人を獲得しました。
52期から参加したA級順位戦。
ずーっとA級を維持していましたが、80期(2022年)についに陥落。
この羽生九段がA級から降級した80期、B級1組を勝ち抜いて昇級したのが、藤井竜王です。
あともうちょっとで、二人のA級順位戦での対局が実現しましたが、残念ながらそうはなりませんでした。
もちろん他の棋戦での対局はありますが、A級順位戦での対局が実現していれば凄かったなと思います。
あれ、これって大山十五世名人と羽生九段のときと同じなんじゃ…と思いました。
レジェンドのA級順位戦入れ替わり。
歴史は繰り返すのか。
私はそう思いました。
もちろん、羽生九段のA級復帰はもちろん可能性ありますので、まだまだ二人の順位戦対局は、実現する可能性はあります。
■中原十六世名人と羽生九段のタイトル戦
もう1つ。
大山時代に終止符を打ち、一気に棋界の頂点に上り詰めたのが中原十六世名人。
タイトル独占まであと一歩、という状態を2度作りました。
そんな中原十六世名人もA級から陥落し、2度はB級1組で指したものの、そのあとフリークラスへ行きました。
やはり歳には勝てないのか、なんて思っていましたが、それでもやはり中原十六世名人は強かったです。
2003年、16期竜王戦がラストチャンスでした。
当時の羽生竜王への挑戦者決定戦に出ましたが、あと一歩、森内九段に1勝2敗で敗れ、羽生九段とのタイトル戦がついに実現することはありませんでした。
この2人のタイトル戦を見たい、と思った将棋ファンは多くいたことでしょう。
思えば大山十五世名人と谷川十七世名人も、タイトル戦で顔を合わせることはありませんでした。
やはり次々世代とのタイトル戦は実現しない。
それが将棋界の歴史なのだと思っていました。
■藤井竜王と羽生九段のタイトル戦実現
藤井-羽生のタイトル戦は以前もありました。
もちろん、藤井猛九段の方ですね。
でも藤井聡太竜王と羽生九段はありません。
今までの将棋の歴史の流れから見ると、おそらく実現しないだろうと、私は思っていました。
大山-羽生のA級順位戦が実現しなかったように、中原-羽生のタイトル戦が実現しなかったように、羽生-藤井のタイトル戦もあと一歩のところまで行くだろうけどきっと実現しないだろう。
私はそう思っていました。
ところが、です。
歴史ある王将戦で、藤井王将に羽生九段が挑戦する。
歴史は繰り返しませんでした。
レジェンド対次々世代レジェンドのタイトル戦です。
近年でも一番注目されるタイトル戦なのではないでしょうか。
この二人のタイトル戦は、後世に継がれる好カードであることに間違いありません。
下馬評は藤井王将のほうが高いでしょう。
それでもどうなるかはやってみないと分かりません。
藤井聡初のタイトル失冠の相手が羽生九段だったら、それも大盛り上がり間違いなしです。
歴史は繰り返す。
だとしたら(私的には)実現しないこの二人のタイトル戦。
歴史は繰り返しませんでした。
最高の年明けです。