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#43 職務員じゃなく公務員になってほしい・・・いや、なれよ!!

1週間ほど前、津山市に今年度新たに採用された新入職員研修(職員2部研修)の講義を担当することとなり、まだ初々しい職員1年生(30数名)に向けて、FM(ファシリティ・マネジメント)の話をさせてもらった。

この講義は僕が毎年受け持っている訳ではなく、課の比較的若いメンバーに任せていたのだが、僕的には(結構なおっさんになり役職も上がってきて)若い世代の職員と向き合う場面がめっきり少なくなっているため、彼らと直接向き合ってコミュニケーションを取るということと、これから公務員として生きていく上での考え方を伝えたいという思いもあり、昨年度から僕が行なっている。

FMの取組のことを全庁的に知ってほしいというのは、確かに目的の一つではあるのだが、それ以上に、これからの公務員人生に対する僕なりのアドバイスなるものを中心にストーリーを組み立てるようにしている。
今年度は、昨年度以上にその色合いを濃くし「公務員」としての仕事の向き合い方や、目指すべき公務員像みたいなことについて熱弁をふるったので、当日の資料を使いながらnoteの方でも振り返っていきたい。

ちなみに、今回のnoteのタイトルとしている「職務員」と「公務員」の違いや考え方などについては、後半の方に解説しているので、ぜひ最後まで読んでほしい。

研修のテーマは「FM=資産管理 公共施設の価値創出」

研修の冒頭、まず切り出したのは?

この日、僕が講義を始めたのは16時過ぎからだったのだが、実は受講生の皆んなは朝9時からぶっ通しで「財務研修」なる講義を受けていて、僕のが最後の講義。
朝から難しい財政の話を長時間に渡り聴いた後だったので、相当な疲れがたまっている様子だった。

そんな彼らに対して、用意していたパワポに入る前に、僕がホワイトボードに書いたのは、次の2つの数式

10×10=100
□□□=100

訳の分からない様子で眺めている受講生に向けて、僕が切り出したのは次の言葉。
皆さんが朝から聞いていた話は一見難しいように感じるかもしれないが、上の式のように必ず答えが導き出せるもの。
でも、僕がこれからする話は、もっと難しい話で、下の数式のような話。
疲れているところ申し訳ないが、僕から答えを教えるような話ではないし、自分で数式を作り出すような話で、朝からの講義よりずっと難しい話をするから、覚悟して聴いてねと。

まぁ目を覚まさせるための気付け薬のようなものだ(笑)

登壇者である僕とは何者か?

流石に50歳も過ぎてくると、それほど大きくない組織(津山市の職員数は約800人)といえど、若い世代の職員とは距離感も遠く、僕はほとんどの参加者と面識はないし、逆に彼らの大半も僕のことを認知はしてないだろうというシチュエーション。
しかも受講者の疲れはMaxということ、講演者としては、なかなかハードルが高い状況であったが、そんなこともあって、いつもはサラッと流す僕のプロフィール説明も、少し長めにさせてもらった。

ここで自分を誇らしげに語ってみたりすると、おっさん感全開で「何?アイツ」みたいな空気感を作ってしまうので、漫談系の自虐ネタから入っていく。
やはり他人の不幸ネタは老若男女ともに大好物のようである(笑)
まぁ、よくするウ〇コネタと同じようなものだ(笑)

団塊ジュニアの苦労話からスタート
苦しいことが連続だった若き日の自分年表(完全に自虐ネタw)

大事なFMの話も

掴みのプロフィール話はそこそこにして、ここから先は本題であるFMの話に入っていく。

実は職員でもあまり知らない公共施設という存在

昨年度は2時間の尺をもらっていたので、たっぷりとFMの話をさせてもらったのだが、今回の尺は1時間ということで、かなり端折らなければならない。

FMのイロハから実践に至るまでのプロセス、実際に取り組んできたことなどを30分強くらいの時間に詰め込むことは実質的に不可能なので、今回は本当にFMの触りの部分と、ガムテープ撲滅運動の会長としてどうしても伝えたかった「公共施設へのガムテープ使用禁止令」のこと、公共施設がなぜこんなにも利用が少ないのか、みたいなことについて語らせてもらった。

僕も彼らに質問しながら進めていくのだが「公共施設を普段からよく利用している人?」という問いかけに対し、案の定、誰もそんな奇特な人はいなかった(笑)
残念だが、これが公共施設の実態である。

FMとは?
FM=資産管理であり、その活動は多岐に渡る
ガムテープ撲滅運動の会長としては、これだけは伝えたい「公共施設にガムテープはNGだ」と!
みんなに使われるはずが、誰にも使われていない公共施設=みんなって誰?
大抵、こんな思考回路で失敗していく

この辺りのことを喋り出すと、時間がいくらあっても足りないし、今回は時間的に巻き巻きなので、昨年度は時間をかけて紹介していた、僕たちが実際に行ってきたFMやPPPの取組については、スライドでは案件の紹介だけで、別に用意した動画を見てもらうような形式とした。

1事例に対し1スライドの超特急説明(笑)

動画はぜひ見てねと伝えたが、果たして何割くらいの人が見てくれるのだろうか(笑)
ここで最初の数式にあったように、自分で考えるという思考が必要で、この後どう行動するかは各自の判断となる。
授業型の講義だけを受けてきた人には難しい思考と選択だろう。

これからの公務員に必要な学びの姿勢

さて、ここからが最後のセンテンスで、僕が最も伝えたかったこと。
公務員像をアップデイトするために、これから何をし、どういった生き方をするのかという話。

人生のゴールって何ですか?という問いかけに応えられる人はほとんどいない

ここから先の話は、以前のnoteでも書いた公務員にとっての「職務」と「業務」と「公務」の違いとは?というテーマと大きく関わるので、ぜひそちらも併せて読んでみてほしい。

これは僕の個人的な解釈ではあるが、役所の中で行っている仕事は、視点の大きさや時間軸の長さによって、職務業務公務に分類されると考えている。

職務とは?
日々の中で各人に割り振られた仕事で、事務分掌規定の中で行う仕事、比較的定型的なものが多い。
公務員は職務に専念しなければならないという法的な定めもあるので、朝から夕方まで、我々はこれに就いているということになる。
かなり小さな視点で捉えた仕事と言っていいが、実は公務員が従事している仕事のうち、大半がこの職務ではないだろうか。

業務とは?
こちらは、職務よりもう少し広い捉え方をしたもので、係や課などの組織全体として取り組むような内容をイメージすると分かりやすい。
我々の課の業務内容は・・・みたいな時に使うとしっくりくる。
「今年度、ウチの課の年間目標は・・・」みたいなことを総称するような場合がこれに当たるかなと思っている。

公務とは?
こちらは、首長などがよく使う用語ではあるが、僕らのような一般職が使うことは滅多にない。
ただ僕自身は、公務というのは、まち全体10年後や20年後といった非常に大きな視点で仕事を捉え、市民のため、公益のために奉仕し、組織全体の一員としてまち全体を最適化する活動こそが公務であると考えている。

どうも、世の中の公務員の大半は、実は「職務員」であり、非常に狭い視野の中で仕事をしているんじゃないかと、僕は常々危機感を感じている。
新採用職員も、入ってきた時の大きな志はどこかにおき忘れて、2年3年と経っていくと実に立派な「職務員」に変貌してしまう。

タテ割り意識がいつの間にか醸成され、「これウチの課の仕事ではありませんから」みたいな受け応えが平常になってくる。
そんな一端の職務員になってほしくないというのが、この講義の裏テーマ。

職務と業務と公務の違いについて説明
視座の小さい職務員にはならないように!僕たちは公務員なのだから
職務員の究極系がCIAのスパイ(笑)サボタージュマニュアルより

さて、最後に話をしたのは人生における学びについて。
人生100年時代の中、定年するまで安定した公務員で着実な人生なんて考えでは絶対にダメという話。
職務だけの定型的な作業仕事は、これからAIが全部やってくれるから、僕たちに必要なのは、ゼロからイチを生み出すことであり、それを続けていくためには、学びと自己投資が絶対条件になるということを力説させてもらった。

リンダグラットンさんのLIFE SHIFTは公務員にとって非常に良い教科書となる
文科省がデータで出している日本人の読書調査のまとめ

とかく組織の中に閉じこもってしまいがちの公務員。
外に出て、色んなネットワークを築くことが、これからの人生にとって見えざる資産となり、そういった多軸的なネットワークこそ、AIにはできないイノベーションの源となるというような話をした。

外とのネットワークを広げることで視点も広がる

ラストメッセージは、どう進んでいくかは自分次第
最初に言った数式の意味はこういうことで、誰も答えを教えてくれる訳じゃないから、だからこそ難しいのだと。

どんな数式を作っていくかは自分次第(ただし、今いる場所に留まること=落ちていくこと)

さぁ、こんな感じでこの日の講義は無事終了。

この日の講義を僕の中で、職務公務に当てはめて見ると、こんな感じになる。
職務→若い職員にFMを知ってもらうこと
公務→若い職員に組織の中で魅力的な人材に成長してもらうこと

単に、面白い講義だったと思ってもらうだけなら、職務としては達成しているだろうけど、これでは僕の中で公務を果たしたことにならない。
ということで、研修後全員にメールで連絡し、課題を課してみることにした。

ということで、彼らに課した課題も含めて、一人一人が少しでも成長し、立派な「公務員」になってくれることを、僕としては切に願っている。

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