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#45 大阪の気になる公共空間をあれこれめぐるの前編(凝り性の建築訪問記Part②)

ちょっと前、大阪に用務があって、その前日が日曜日ということもあったので前日から大阪入りして、公民連携の切り口で気になっていた公共空間や公共施設をあれこれ巡ってきた。
今回はそれを凝り性の建築訪問記として綴っていくこととしたい。

このシリーズでは、7月の富岡製糸場に続く第2弾となるが、今回はかなり多くの場所を訪問してきたので、前編と後編に分けてそれぞれの雑感をまとめてみようと思う。

プロフィールでも宣言している通り、僕にとって建築は趣味のようなもので、凝り性な建築オタクなだけに、仕事に直結するような巡礼も楽しいばかりで、趣味と実益を兼ねた実に有意義な寄り道である(笑)

ちなみに今回のそもそもの目的地は、関空より少し南に位置する泉南市(和歌山市のすぐ北)で、そこから70km以上も離れた吹田市の万博記念公園が今回の旅のスタート地点となる。
大阪府の南北縦断旅であるが津山から見れば、これくらいちょっとの寄り道である(笑)

では、行った順番に振り返っていこう!


万博記念公園の中のムラサキパーク(吹田市)

さて最初に行ったのは太陽の塔が建っている場所として有名な万博記念公園。
この公園の中には、太陽の塔はもちろん、ガンバ大阪の本拠地パナソニックスタジアムなど見どころは多いし、今後駅前のエリアにアリーナが計画されていたりと目が離せない公園なのだが、今回の目的地はららぽーとエキスポシティの中にあるムラサキパーク
(余談だが太陽の塔は完全予約制だが中にも入れて、岡本太郎ワールド全開の面白い場所。こちらもオススメだが過去に行ったことあるので今回はパス。)

ムラサキパークを訪れたのは、ちょっと前、スケボーやBMXなど津山で活動している方と知り合いになり、今まであまりインプットをしてこなかったアーバンスポーツにふつふつと興味が湧いてきて、各地のパークの様子を見てみたいという衝動に駆り立てられるようになったため。

特にこのムラサキパークは規模もかなり大きく、その方も「ぜひ見てきてくだい」というイチオシの場所だったのと、公共が整備しているスケボーパークではなく、民間(ムラサキスポーツ)が経営しているということもあって、その運営やオペレーションに興味があったのも訪問理由の一つ。

万博記念公園内のショッピングモール=ららぽーとに併設されているムラサキパーク

ちょうどこの日は、日本スケートボード選手権大会が開催されていて、間近で競技の様子が眺められたのも良かった。
2階から見下ろす形で観覧でき、こんな風に大会が行われているんだと新鮮な気分で見学させてもらった。

僕は素人なので良く分からないが、コースのデザインなんかもかなり考えられているのだろう。
バンクとか手摺りや階段など色んなアイテムが散りばめられている。
ちなみに路面はコンクリート系。

ラッキーなことにこの日は日本スケートボード選手権大会が開催されていた
ちょうど大会が始まったところ
こんな感じの値付け感、子ども向けなので思ったほど高くもない感じ。
初心者にも入りやすいメニューが用意されている。

純粋なスポーツ施設というより、エンタメ系スポーツパークといった雰囲気が強めであったが、空間のしつらえは元より、気になっていた運営部分については、サブスク型のメニューもあり、ビジネスモデルも含めて色々と参考になる部分が多かった。

施設は2階建てで、コースは多種用意されており、大会に使われていたパーク以外にも、サーフバンクやハーフパイプのコースも別に整備されている。
また子ども用のアスレチックゾーン(1人用のトランポリンとかもある)やストリート系のショップも併設されていて、館内だけで相当楽しめる内容。

短い時間だったけど、満喫(滑らず見る専だけどw)

安満遺跡公園(高槻市)

次に向かったのは、高槻市の市営公園となる安満遺跡公園
こちらの公園には5年ほど前、第1期の工事が完了し、暫定的にオープンした頃に来ていたのだが、当時はまだ工事中だった残りのエリアが全て公園として整備されてからは初めての来訪。

最初は5haくらいの規模感の公園で、ちょうど良いサイズ感の大きさだと思っていたが、全面オープンして、その広さは約22haに広がったとのこと。
22haというと、津山市にあるグリーンヒルズと同等規模の広さを誇るわけで、広大な敷地をどのように整備しているのか気になっていたので、今回再訪してみたものである。

こういうセンスよくデザインされたアイキャッチのサインはやはり必須アイテム。
公園の全体マップ。駅から来た時の玄関口は西南の角にある。
こちら5年前に来た時のマップ。広さは4倍くらいに拡大している。

公園の玄関口にあるSUNDAY’S BAKE 569は相変わらずのオシャレイタリアンで、今回はここで昼食を取ることにした。
イタリア人(っぽい)の職人さんが目の前で焼いたピザランチ・・・いやぁ上手い。

イタリアンレストランSUNDAY’S BAKE 569。11時くらいだったので並ばず入れてラッキー。
カウンターに座ったので、焼いている様子が良く見えて食欲をそそる。もちろん美味なり。

昼食の後は広い公園をひたすら散策。
この公園、ただ広いだけでなく、あちこちに人の居場所が用意されてて、なおかつ子どもたちも楽しく遊べる場所もたくさんあり、コンテンツや環境も充実していて、びっくりするほど大勢の人が自由に過ごしている。
日常のすぐそばに、こんな豊かな空間がある暮らしって、きっと幸せなんだろうなとつくづく感じた。

ちなみにこちらの公園は指定管理施設として運営されている。

センター棟の大きな屋根の下は人工芝で、たくさんの人がくつろいでいる。
ふわふわドームは子どもたちに大人気の場所。
SAKURA広場と名付けられた大屋根の下にもたくさんの人が。屋根があるのは良いね。
最近のオシャレ公園には定番のスタバ・・・やっぱりあった(笑)
体験型キャンプカフェショップもありデイキャンプのメニューも豊富に用意されてる。
ペットショップにドッグランも併設されていてペット連れの来園者も多い。
ワインの試飲についつい釣られて、6本セット(宅配)をお買い上げ(笑)

広大な公園になっていたので、もっと間延びしているのかなと思っていたが、そんなこともなく、ちょうど良い具合の人の密度感で、非常に心地よく感じた。

天然芝と人工芝を上手に使い分けているのも感心点ポイントの一つ。
比較的人の溜まりやすいエリアで屋根のあるところは人工芝を使っていて、地べたに腰を降ろしてくつろぎやすくしている。

あと前回来た時にもびっくりしたが、この公園の凄さはイベントの多さで、毎週何かしらのイベントが開催されている。

イベントの多さがこの公園の最大の特徴。週末は何かしらのイベントが行われている。

今回、残念ながらオッサン一人での訪問であったが、子育て中に、こんな公園が近くにあったら良いだろうなぁと感じた。

高槻市は梅田と京都のちょうど中間にあって、JRの新快速も停まるので、利便性も高く元々人気エリアだろうが、日常の暮らしの中にこんな子どもやペットに優しい公園があることで、益々人気が高まるんじゃないかと思う。

おにクル(茨木市)

この日は10月とは思えないような、とにかく暑い日だったので、この時点でかなり体力的にはヤバかったが、凝り性はさらに次を目指す(笑)

次に向かったのは、茨木市に約1年前にオープンしたばっかりの子育て複合施設であるおにクルへ。
JR駅と阪急駅のちょうど真ん中、茨城市役所のすぐそばの元市民会館跡地に整備されたのがこちらの施設。
かなりの人を集めているという話を聞いていたので、建築は元よりどんなコンテンツが埋め込まれているのか興味があったので訪問することに。

まずこちらの建築設計者は伊東豊雄さん。
僕が好奇心メーターが最高潮に高くなる有名建築家による公共施設である(笑)
ただ、この建築、伊東さんにしては珍しくコンクリート打ち放しの外装で、いい意味で荒々しい印象。
パッと見には伊東さんが良く使う曲面デザインもなく、ガラスとコンクリートのシンプルな構造で、水平・垂直面だけで構成されているけど、無駄がなくて僕的には結構好きなデザイン。

7階まであるので、結構大きな施設ではあるが、意外と小さく感じるのは、このファサードデザインが効いているのか。

コンクリート素地の使い方が伊東さんっぽくない印象だけど僕は好き。
玄関前の屋根の下と芝生広場の関係も結構いい感じ。

中に入ると、大きな吹き抜けがあったり、その中を繋ぐエスカレーターの導線であったり、建築家が好むシークエンス満載の空間構成

強烈な吹き抜け・・・こういう写真を撮るのは建築好きの人だけ(笑)
吹き抜けの上にあるトップライトは伊東さんらしい構成要素。
抜け感のある空間構成が内部の大きな特徴・・・建築家が好むシークエンスな空間。

さて、建築と同時に気になっていた中身のコンテンツはどうか。
子育て向けのコンテンツ(子ども広場や子育て支援センター)を中心に、図書館(市の中央図書館はこことは別にある)、1200席の大ホール、貸し会議室や市民活動センターに加え、プラネタリウムまで併設してあって、内容はテンコ盛り。

そんなこともあって、館内は大勢の人で賑わっていた。
子育てファミリー世代、中高生、個人利用、カップルor友人同士、各種グループ、高齢者・・・公共施設としては計画どおりの多様な構成である。

もっと若い人を中心に賑わっているのかと思っていたが、意外と高齢者層も多く、市民活動センターとかでは多くの団体に利用されていた。

普通の自治体ではあまり人気のない公共施設にここまで人が集まり、利用されている秘密は何なのか?
そんなことを考えながら館内を巡っていった。

多分、秘密はたくさんあるのだろうが、ハード的に良いなと思ったのは、空間ととも家具などもしっかりデザインされていること。
公共施設って、とかく建築と家具がバラバラになっていて興醒めすることも多いのだが、ここではそれがちゃんと一つのデザインとしてまとめられていて、これは好印象だった。

家具は家具としてしっかりデザインされている。

子育て向けのコンテンツとして、屋内広場も充実しており、スタッフもしっかり配置されているので、小さな子どもでも安心して遊ばせられる環境が整っていて人気なのだろう。

屋内子ども広場・もっくる・・・おもちゃ美術館のような雰囲気で楽しそう。

貸し会議室や市民活動センターはほとんどの部屋が埋まっていて稼働率はかなり高そうなイメージ。
予約がネットでできるのと、その料金の安さが集客の秘密なのではないかと想像する。
ほとんど部屋はワインコインくらいの低料金(条例に基づく料金)に設定されているが、これは公共でしかできない価格設定であろう。

ほとんどの部屋はこれくらいの料金で利用可能。
茨木市文化・子育て複合施設条例から別表部分を抜粋

これだけ人を集め、稼働率も高そうなので、パッと見には非常によくできた公共施設のように思うが、実際のところどれくらいの管理運営費がかかっているのだろう。
きっととてつもない運営費がかかっていると思われるが、茨木市の過去のデータを探してみると、単年あたり4億円程度の指定管理料がかかっているようである(なかなかな額だね)。

これは公共施設でなければ、できないモデルではあるが、正直この施設があれば、他の類似施設は全て廃止しても良いんじゃないかと感じた。
ちなみに茨木市が保有する市民文化施設は34施設(市施設カルテによる)あるようだ。

このあたりが、公共施設の闇なところで、市民活動系の全ての機能をこの「おにクル」に集約・効率化し、自治体経営的にも持続可能なケースにするっていう話なら絶賛するのだけど、その辺りは微妙な感じ・・・かな。

おにクルで食べたあんバター・・・固形の大きなバターは微妙。

ということで、前編はここまで。

後編では、大東市のmorineki、大正区のタグボート大正、泉南市の泉南ロングパークが登場予定・・・お楽しみに。


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