033 世界の言葉
世界にはいったいいくつの言語があるのか。何を以って一つの言語と定義するかによって大きく違うが、数千という単位になるようだ。旧約聖書の創成期に登場するバベルの塔を建設するときにはみな同じ言葉を話していたが、人間が天にも届く建物を作ることを神は良しとしなかった。神は人間の共同作業を阻止するために、互いに言葉が通じないようにした。以来世界の言葉は増え続けたようだ。
現在最も多くの人が話す言葉は英語である。もちろん英国が発祥であるが、人の移動やあるいは侵略などによって広まった。英語圏以外でも英語教育が行われており、英語が世界の共通言語に最も近いと考えられる。一方で、英語圏の米国は多言語国家へに向かっているというのは興味深い。次に話者が多いのは中国語である。もちろん、かつては世界1位であった。中国国内では互いに通じないような多くの言葉があるが、強力な国家権力によって標準語教育が推し進められている。
さて、日本はどうだろうか。明治以前の日本ではやはり互いに通じないような多くの言葉があった。今では方言と言われている。明治以降の強力な国家権力によって標準語教育が普及してほぼ一つの言葉になっている。
つまり、言葉は権力と一体であるということを考えておかなければならない。では逆に権力が弱かったり、権力が及ばないような辺縁の地では言葉どうなるのであろうか。そこでは、エントロピー増大という神の力も及ばない物理法則が適用される。結果、言葉は乱れて互いに通じなくなる。世界各地ではバベルの塔の建設が進んでいる。同時に言葉の通じない世界も拡大しているという事実がある。神は今の世界を良しとしていない。