京都アニメーション放火殺人事件公判傍聴記・2023年11月27日(被告人:青葉真司)
2023年11月27日
京都地裁第一刑事部合議係
101号大法廷
事件番号:令和2年(わ)第1282号
罪名:建造物侵入、現住建造物等放火、殺人、殺人未遂、銃砲刀剣類所持等取締法違反
被告人:青葉真司
裁判長:増田啓祐
書記官:結城有美
事件はあまりにも有名なので、説明は省略する。
この期日は、産経新聞でも詳報されていない期日である。
傍聴券の締め切りは、9時30分であった。39名が当選した。リストバンド形式の傍聴券であり、他者に譲り渡しができないよう、整理券と傍聴券リストバンドの番号が合致しなければ傍聴券としての用をなさないようになっていた。ロッカー番号まで指定された。
入廷前、荷物をロッカーに預けさせられ、金属探知機によるチェックを受けることになった。
厳重なマスコミ対策であったが、それでもバイトはいたのか、傍聴席には一席空席があった。
記者席は23隻であり、席には番号を振られている。すべて埋まる。
裁判長は、白髪交じりのがっしりとした初老の男性。10時ぐらいに一人入廷する。
関係者席は30席ほど用意されており、背もたれに番号が振られている。それもすべて埋まる。検察官の席の後ろにも、20席ほどの関係者席が設けられており、こちらにはアルファベットが振られている。これもすべて埋まった。
書記官は、髪を真ん中で開けた中年女性である。
検察官は、三名であった。眼鏡をかけ、点々と白髪のある、マスクをかけた初老の男性。髪の長い痩せた中年女性。髪を後ろで束ねた痩せた中年女性。開廷前、三人で話をしていた。
弁護人は、全部で五名であった。主任弁護人は、白髪交じりの髪を短く刈った、眼鏡をかけ口ひげを生やした初老の男性。スキンヘッドで色白の初老の男性。足立明美被告人の弁護人でもあった、高島という、眼鏡をかけた太った中年男性。髪を短く刈った痩せた3~40代の男性。ショートボブの渋い顔をした中年女性。開廷前、五人で話をしていた。
10時10分ごろ、男女の検察官と主任弁護人は、裁判長のもとに集まり、何か話をしていた。被告人質問、という言葉が漏れ聞こえた。
10時20分ごろ、弁護人五人の話に、検察官も交じり、何か聞いていた。
10時28分ごろ、裁判長のもとに、女性検察官と主任弁護人が行き、何か話をしている。裁判長は考え込んでいる様子だった。
10時31分になっても、被告人は入廷しない。裁判所職員から、法廷内撮影についてのアナウンスが行われる。続いて、裁判官が入廷する。右陪席は、眼鏡をかけた、柔らかい髪を七三わけにした中年男性。左陪席は、長い髪を七三に分けた若い女性。裁判官の入廷後、開廷前の二分間の撮影が行われた。
10時36分、被告用出入り口より、遺族たちが、ぞろぞろと入廷する。指定された席に座る。検察官は、遺族たちに、何か書面を配っていた。
続いて、防弾用の巨大なアクリル板が、法廷内に運び込まれ、検察官側と、傍聴席側に設置される。検察官側が一枚、傍聴席側が六枚である。
続いて、裁判員が入廷する。中年男性、中年女性、茶髪の若い女性、茶髪の中年女性、痩せた青年、眼鏡をかけた痩せた青年の六名。
裁判長『裁判所からのお願いです。傍聴席で発言、みだりにもの音を立てないように。出入りの際、ドアの開閉音、足音を立てないように。壁側を回って移動して。守られなければ、退廷を命ずることもある。以上』
異例の注意であり、ずいぶんと厳重なことである。
そして、10時43分、ようやく被告人である青葉真司が入廷した。リクライニング式の青い大きな車椅子を、刑務官に押され、入廷する。丸坊主であり、顔はケロイド状であったが、眉は生えている。首にもケロイドがある。顔のほとんどは、白いマスクで隠れている。がっしりとした体格である。青い服、黒い長ズボンという恰好。弁護人の隣に座る。私が後ろの方の席に座っていたからかもしれないが、被告人は小さく見えた。礼をするときの立ち上がりは、半ばだったが、少し腰を浮かせた。
こうして、10時30分からの予定であったが、10時43分ごろに、公判は開廷した。
裁判長『情状についての立証、まずは検察官の冒頭陳述を』
<検察官の冒頭陳述>
情状、どこに着目するか述べます。メモの冒頭をご覧ください。
刑を決める際に、考慮すべき事情。犯罪事実自体と、それ以外ある。
罪質は、被害結果、動機、精神障害の影響等ある。
それ以外、遺族の処罰感情、社会的影響、前科前歴。
第二・重視すべき事情
立証され、これから立証する事について。
犯行の罪質、筋違いの恨みから及んだ、類例なき凄惨な無差別殺人。被害結果の重大性、苦痛、絶望、無念さ。殺人未遂の被害者の後遺症、苦しみ、自責の念など。遺族の精神的苦痛、悲しみ、絶望感など。京アニが受けた打撃、焼失の損傷状況など。
弁護人は、建物の構造により、被害結果が拡大し、全てを被告人に帰責できないと述べる。螺旋階段、無差別殺人を抑止していなかったこと、軽減する理由になるか。
三つ目、態様の悪質性、危険、残虐性。
四つ目、動機、精神障害の影響。京アニへの筋違いの恨み、精神障害の影響。
五つ目、遺族、被害者の処罰感情。遺族、殺人未遂の被害者、朗読や意見陳述が行われる。痛み、精神的苦痛、処罰感情に着目してください。犯罪事実以外に分類されるが、結果にリンクする。
六つ目、社会的影響。報道、類似事件の発生。
七つ目、有利に斟酌すべき事情の有無。
以上
ここで、高島弁護士が立ち上がり、怒ったような口調で検察官の冒頭陳述に異議を唱えた。
弁護人『裁判長、影響、いかなる証拠に基づいて立証するか』
検察官『大大的に報道されていることは、公知の事実』
裁判長『立証不要と』
弁護人『公知の事実とは、一般人により、知っていることである。知ってはいる。しかし、模倣犯というべき事件の発生、公知でない。立証不能。公訴事実より削除すべき』
裁判長『意見は』
検察官『類似事件の報道状況、公知の事実と認められる。異議にはまったく理由はない』
裁判長『報道状況までは良いと?模倣犯、削除を、と』
弁護人『そうです』
裁判長『異議を認めます。冒頭陳述、六の後半部分、陳述しないと』
検察官『異議を申し立てます』
主任弁護人『異議には理由ないと』
裁判長『却下します』
関係者は、何人か法廷外に出ていく。主任弁護人が立ち、弁護人側の冒頭陳述が始まる。主任弁護人の声は小さく、聞き取りにくかった。
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