10.気持ちをぶつけた後に
冷静になって考えてみれば、人生の大先輩である義母と張り合っていても勝ち目はないのです。
頭ではわかっていても、無意識のうちに張り合っていました。そして、至らない自分を少しでも飾り立てて、“いい嫁だと思われたい。いい母親だと思われたい”と背伸びをしていました。
義母がしてくれていることを、もっと好意的に受け止めて甘えればよかったのです。
義母と同居をはじめて半年後、ついに、抑えていた私の感情はついに爆発しました。
きっかけは、ほんとうに些細なことでした。お昼ご飯をあまり食べたくなくて、「ほしくないから、お義母さん食べてください」と言ったのに、「身体に悪いから何か、食べなさい」としつこく言われました。
それが、せかされてるような気がして、「食べたくないって言ってるでしょ。もう放っておいてください!」ってヒステリックに叫んで、自分の部屋に戻ったのです。
“しまった!”って思いました。でも、もう引っ込みがつかなくて、なかなか部屋から出られませんでした。
1時間、2時間、3時間_。時間はどんどん過ぎていきます。義母は、ふたりの孫の世話にあたふたしていました。でも、どんな顔をして義母の前に出ればいいのか分からなくて、このままどこかに行ってしまいたいくらい情けない思いでうずくまっていました。
勇気を出して、部屋を出たのは夕方になってからです。義母は、いつもと変わらずにせっせと家事をしながら、「おなかすいたでしょ」と声をかけてくれました。その言葉が、ジーンと心にしみて、申し訳なくて、暖かくて私は義母に抱きついて泣きました。
わたし「お義母さん、ごめんね。わたしはいい嫁になれません。もうしんどいから、なんにもできない嫁でごめんね」
義母「ひとりで、無理して背負い込んでるんだから...。もっと甘えてくれればいいのに。別にそんなこと気にしなくていいじゃないの。いいところばかりじゃなくても、全部出したらいいじゃない。一緒に住んでるんだから、悪いところも目に付くよ。でもね、それも大事なことでしょ。言いたいことをいって、仲良く一緒にくらそうね、って言ったじゃない」
義母も泣いていました。ふたりで泣いている様子を見て、子どもたちも泣き出しました。そのとき初めて、義母に本当の私を素直に見せることができたような気がしました。
「心配しなくても、あなたは、一生懸命頑張ってるから.....」
義母は、そう言ってわたしを励ましてくれました。この日を境に、義母は義母、私はわたしと割り切れるようになりました。義母のしてくれることを好意的に受け止めて、自分でできること、頼みたいことを区別できるようになりました。
義母も、私の至らないところを、どんどん指摘してくれて私に気づかせてくれました。その言い方はとても率直でキツいなーと思うこともありましたが、最後に必ず
「ごめんね、あれこれと..。でも、あなたは、頑張りやさんだし、ちゃんと受け止めてくれるから、言いやすいのよ」と言って、フォローしてくれました。
ありのままの自分を見せること、ぶつかったり、傷つき、傷つけたりすること。簡単なようで、なかなか出来ないことです。でも、それを乗り越えなければ、お互いのことを深く分かり合えないのです。
同居をはじめて半年は、ほんとうに辛いことの連続でした。でも、あの頃の事があったから、今、義母とわたしは、遠慮のない良い関係が築けたのだと思います。