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20.ついに資格が活かせるときがきた

会社を退職して、出産・育児に追われる毎日を過ごし、住み慣れた大阪を離れて,故郷広島に帰ってきました。義母との同居も、少しずつお互いの心の距離を保ちながら、うまくいき始めていました。

そして、知人からの紹介で、念願だった研修講師の仕事を始めることができたのですが、先輩講師の指示通りに講義することすら出来ない状態でした。

毎月,1~2本の仕事が来るようになっていましたが、やればやるほど、「こうしよう」と思ったことと、「出来たこと」の差は広がるばかりでした。

「これが、私の望んでいた仕事のカタチなのかなぁ?自分らしい講義が、ほんとうにできるようになるのかなぁ?」と、仕事が来るたびに、憂鬱な気持ちになりました。

研修講師の仕事を始めて1年が過ぎた1994年の秋、1本の電話がかかってきました。
「専門学校の講師をやって見る気はないですか?」
それは、この仕事に就きたいと思ってずっと通っていた『社員研修講師養成講座』の主宰者のK先生からの電話でした。

「ある専門学校で、秘書課の講師を探しているんだよ。君のことを話したら、ぜひ紹介して欲しいっていうことだったんだけど、話を聞きに行くだけでも行ってみないか?せっかく取った資格を、活かすチャンスだと思うんだが・・・」

3年前に取った秘書検定1級と、ビジネス文書検定1級_この2つの資格を取得するために、どれだけ頑張って勉強したか…!この2つの資格を取得したことで、どれだけ自信になったか…!私は、そのことをすっかり忘れていました。

「資格を活かすことで、自信を取り戻せるのなら、是非やらせてください!」
電話を切り終えてすぐ、紹介された専門学校に連絡を取り、面接のアポイントを取りました。履歴書と職務経歴書を作成し、緊張しながら学校の教務室を訪れました。

何を聞かれるのだろう?と、ドキドキしながら訪問しましたが、面談してくださった教務部のM部長は、
「いやぁ~~、こんなに立派な資格をお持ちの方に来ていただけるなんて、光栄です!」と、すでに採用を前提とした口ぶりで、担当科目のことや曜日、クラスの人数のことを話されるのでした。
資格を取ったのなら、いつかはやってみたかった専門学校や短大の講師。でも、こんなにあっさりと決まっていいんだろうか?

会社を辞めた頃なら、何の不安もなく引き受けることが出来たかもしれません。
「4年間、資格をとったり講習に通ったりしてきた成果を認めてもらえたんだ。偶然じゃなくて当然のことだよ」と、夫も喜んでくれました。
でも、私は素直には喜べませんでした。

“研修の講師も1人前にできない私が、専門学校の講師なんて務まるんだろうか?”
仕事を引き受けたものの、浮かぬ顔をしている私に夫は、

「相手は、学生だろ?こんなこと言ったら失礼かもしれないけど、企業の研修より責任は軽いはずなんだし、練習の場としてやってみたらいいんじゃないか?」と、励ましてくれました。
“そうだ!今この仕事に就いたことがゴールじゃないんだ。どんなことでも、私らしい仕事ができるようになるために頑張らなきゃね。週2回、90分だけの講義だけど、4ヶ月頑張ったら、何かつかめるかもしれない。”

自分にそう言いきかせながら、初めての講義の日を待ちました。

1994年10月18日(火) 15:00_教務部のM部長に連れられて、担当するクラスに向かいました。たった4ヶ月の講義でしたが、講義計画書を作り、自己紹介の内容を考え、リハーサルも念入りに行いました。
面談のときの不安はすっかり消えて、まだ見ぬ学生たちに、あんなことも話そう、こんなことも話そうと、希望と意欲でいっぱいでした。教務室から教室まで、随分長く感じられました。

そして、
「失礼します!」と、元気よく教室に入ったのですが・・・。

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