見出し画像

可能性を信じること 実践すること(1)

一昨年から、ある中学校の「総合学習」の時間をいただいて、自己表現の授業を担当させていただくようになりました。
「自己表現」とは、高校選抜試験の試験科目で、面接官の前で、自分自身について1人5分のプレゼンテーションを行うという内容となっています。

一昨年は、授業3回、進学校入学を希望する生徒さんへの放課後の面接指導を2日でしたが、今年は、授業の回数も面接指導の回数も倍に増えました。

3年生は、6クラス約230人。全員に対して丁寧に助言することはできませんでしたが、夏休み前に先生方から
「私たちもプレゼンテーションの研修を受講させてほしい」というリクエストがあり、先生方と連携協力して助言・指導を行うことができました。

「昨年の3年生より、学力面で指導を強化する必要があります。ですから、せめて自分自身のことを伝えるのは、『しっかり伝えられた!』という達成感を持ってほしいんです!」

昨年2月に、校長先生と打ち合わせさせていただいたときに、思いを託されました。
1年前の2月に初めて授業を行ったときには、書くことどころか、考えることにも抵抗感を示していました。

「わからない」「書けない」「面倒くさい」「何にもない」「人前で話すのはイヤだ」そんな声がたくさん耳に入ってきました。
でも、授業を担当するにつれ、私の話を真剣に聞いてくださるようになり、「書いてみようかな?」「話してみようかな?」という気持ちが少しずつ芽生えてきたような気がしました。

夏休み明けの授業では、教室に入った瞬間、笑顔で迎えてもらえるようになり、授業が進むにつれて、
「大西さん、ちょっとみてもらっていいですか?」
「次は私も!」
と声がかかるようになり、秋が深まるころには、廊下や階段ですれ違ったときに、みんなが笑顔であいさつをしてくれるようになり、ハイタッチしたり、近況を教えてくださるようになりました。

どんなことでも、全力でしっかり受け止めながら関われば、大学生、専門学校生、中学生、小学生、年齢に関係なく心を開いて関わってくださるようになります。

「6時間の集中講義、大変じゃないですか?」
「お忙しい中、私たちのためにありがとうございます」
先生方は、いつも恐縮して声をかけてくださっていましたが、私は学校に伺うのが楽しみで楽しみで、ワクワクしていました。
だって、みんなの成長の瞬間に触れることができるからです。

特に、2月に入って、放課後の面接練習を担当させていただいた5日間は、みんなの成長ぶりに、何度も目頭が熱くなりました。

自己表現は、自分自身について5分間のプレゼンテーションを行う試験ですが、プレゼンのスキルよりも
自分のことをどれだけ深く理解できたか?
どれだけ自己開示できたか?
そして、どれだけ誠実に熱意を持って伝えられたか?

この3つが大事だと、生徒さんたちのプレゼンを見せていただいて気づきました。
ひと言も書けない、話せなかった生徒さんたちが、約5分自分のことを一生懸命語れるようになったことが素晴らしいことです。
そんな生徒さんたちのプレゼンを聞かせてもらって、私自身の在り方や仕事への取組みかたを問い、身が引き締まる思いでした。
願わくば230人全員に、志望する高校に入学してもらいたい!!と思っていますが、それは叶わないことでもあります。
私が指導に立ち合った生徒さんたちだけでなく、他の中学校の生徒さんたちも頑張って準備しているのですから…。

だけど、面接試験には、思い切って楽しんで臨んでほしいなと願っています。

プレゼンというと、山口で、大学生のプレゼン指導を行っているときに出逢ったTくんのことを思い出します。
一見チャラそうに見えていましたが、Tくんは学内のプレゼンで悔しい思いを何度も経験していました。

講座が始まったときに、彼自身が一番の課題だと話していたのが「カツゼツが悪い」ということでした。
準備講座の中でも、プレゼンの練習でうまく話せず、ゲスト講師として来ていただいたアナウンサーの方からもダメ出しを喰らっていました。

でも、Tくんは、どうしてもプレゼンを通して自分自身を変えたい!という強い思いを持っていました。
そして迎えた本番。Tくんは、ステージ中央で、カンペも持たず、15分間のプレゼンをやりきったのです。
Tくんの話し方からは、「カツゼツが悪い」なんて一切感じることなく、むしろ、一言一言に力強さが感じられ心に響いてきました。
そして、Tくんは、コンテストでパフォーマンス賞を受賞することができ、大号泣していました。

コンテストが終わって本番までどのような練習や準備をしたかを尋ねました。すると、Tくんは
「大西さん、講座の中で言ってましたよね。出来ないのは、出来るところまでやらなかった結果に過ぎないって…。だから、練習しかないと思ったから、100回以上練習しました」
と話してくれました。

先日、SNSで見かけた言葉があります。
武者小路実篤さんの言葉です。
「才能で負けるのはまだ言い訳が立つ。しかし、誠実さや勉強、熱心、精神力で負けるのは、人間として恥のように思う」
この言葉を心にしっかり刻んで、これからも全力で仕事に取組んでいきます。

いいなと思ったら応援しよう!