
08. これからどうする?
今まで心の中に溜まりに溜まっていた様々な気持ちが出口を求めて吹き出したように、次女は泣き続けました。私も何も言わずに側で一緒に泣きました。
それで吹っ切れたのか、夕食の頃にはいつもの次女に戻り、長女を相手に、”うざい”‟やばい”を連発しながら、ご飯をパクパク食べていました。
普段は、寄ると触ると男兄弟か!?と思うほどの取っ組み合いや、そこまで言うかと言うほど罵倒し合っているのですが、長女も次女のことを気にかけて、いろいろと優しい言葉をかけてくれていました。
「大丈夫よ、私でも合格できたんじゃし、内容はどこも同じなんじゃし、そんなに難しいくないから、ちーちゃんなら合格するよ!先生がくれるプリントをしっかりやってみんさい!」
やっぱり去年経験してる人の言葉には、重みがあるなぁ~。
長女が面白おかしく話す去年の受験の経験談を、次女は笑いながら聞いていました。
私も台所で食器を片付けながら、その話を聞いていました。
長女は高校受験を一人で乗り越えたのです。
「大丈夫、大丈夫」とは言っていたけど、本当は心細かっただろうし、苦しかったと思います。
長女のことは何も構ってやれず、今、次女のことに気を揉んでいる自分が、本当に申し訳なく思いました。
にもかかわらず、
「ちーちゃん、吹っ切れたみたいでよかったね!」
と自分のことのように喜んでくれている長女の優しさに心を打たれて、私は食器を洗いながらまた泣きました。
「母さん、今日はありがとう。でね、二次なんじゃけど、私どうしたらいいんじゃろう?」
「ちーちゃんとしては、どうしたいん?もう一度、あの高校を受けてみたいんじゃないん?」
「うん、受けてみたいんじゃけど…」
「じゃけど、何か心配なことがあるん?」
「うん。頑張りたいけど、これからの五科目の勉強どうしようか、自信ないし、私立の併願出してないでしょ。落ちたらどうしよう」
「手堅くランクを下げて受かる高校へ行ったほうがいいんかなーとも思うん?」
「うん」
「そうかぁ。でも可能性はゼロじゃないんよね?それをあきらめて、気持ちを切り替えて妥協できる?」
「それは難しい」
「だったら後のことは気にせず、頑張ってみたら?今は五科目の勉強に専念してみよう!まだまだ時間はあるじゃない。悔いを残さないようにやってみたらいいよ」
「ホント?やらしてくれる?高校浪人になっても怒らん?」
「怒るわけないでしょ?」
「だったら明日先生に希望を出してくる」
「そうじゃね、先生に自分の思いを伝えて、先生の意見を聞いてみたらいいよ。先生も、多分、頑張ってみろって言うてくれるはずよ!」
「うん。聞いてみるよ!頑張ってみる。母さん、ありがとうね」
次女は私の顔を見て、うれしそうに笑ってそう言いました。その表情を見ながら、私はこれからのことを考えていました。