映画「Pearl」感想(ネタバレ有)
映画「Pearl」について一部の内容をかいつまんで話ながら、自分が感じたことを書きました。
全てを話すわけではないですが、ネタバレを含みます。
また、映画に残酷・性的描写があるので苦手な人は避けたほうがいいです
映画を観るきっかけとしては、このレポ漫画を見て気になったので見てみることにしました。
1作目は見てなかったので、この映画はどんな感じなんだろと思っていたが、冒頭でいきなり主人公がアヒルを串刺しに、衝撃のスタートを迎えることになった。
時代としては流行り病が猛威を振るっていたころを描いており、主人公はほとんど体の動かない父親と躾が厳しく娘に自由を与えない母親と一緒に暮らしておりかなりの苦境だと言える。
特に母親の仕打ちはヒドイもので、「あなた(家族)の安全ためなの」と理由を楯に事あるごとに主人公をまくし立てて怒り、意見をことごとく否定し、外出制限をかけている。
主人公はそんな中でも昔映画で見たようなダンサーになりたいと夢を持っている、とここまで聞くと少女が厳しい環境の中でも夢をあきらめるないサクセス・ストーリーのように思えるのだが、実際の所は主人公が話の合間合間に冒頭でも述べたアヒル虐殺のようなヤバい所業をしており
「主人公の境遇は同情するけど、ちょっとイカれすぎでしょ…あと母親厳しすぎ」という思いになる。
劣悪な家庭環境がシリアルキラーを作り出すというのはリアルでもフィクションでもよくある話であるが、この家族関係はまさにそういったものに近かった。
母親に行動を制限されている影響で主人公はダンサーになる夢はほとんど絶望的だったのだが、奇跡的に主人公の行動範囲でダンサーのオーディションが開かれることになり、主人公は母親に隠れて応募することになる。
しかしながらオーディション前日に母親に応募したことがバレてしまい、厳しく詰められる
ダンサーになりたいと言う気持ちをぶつける主人公に対して母親は「絶対なれっこない!!」といつものように真っ向から否定するのだが、さらに母親は衝撃の事実を持ち出す。
主人公は家族から隠れた場所で動物の惨殺といった行為を行っていたのだが、母親はそれを全て知っていたのだった…
そして母親は主人公にこう告げる
「お前のような奴を外に出すわけにはいかない」と
ここからは自分の解釈も含まれるが
このシーンまでは、家族からの抑圧によって主人公残忍性が芽生えたのだと思っていたが、そうではなく主人公が見せていはそれらは天性のものであることが明らかになったと思った。
ここから主人公の行動はどんどんエスカレートしていき、母親の行動は1面的には正しかったのだと思い知らされる。
主人公が見せた残忍性は家族からのプレッシャーによるもので、それさえ取り除けば主人公は明るく輝いた人生を取り戻せるといった希望は儚く打ち砕かれ、ある種母親が正しかったことが証明されるのだ。
この映画をみて全体的に感じていたことは、所々に小さいな希望があるがそれを覆い尽くすような圧倒的な絶望があることだ。
母親は全く主人公と対話しようとせず、母親の意見を押し付けてくる
もし、母親が自分の考えていることを素直に話しお互いの妥協点をさぐるようなコミュニケーションをとっていたら主人公の性格はここまで歪まなかったのかもしれない
もし、主人公のダンスが正当に評価されてオーディションに合格してたら主人公はサクセスストーリーに進めていたかもしれない。
しかしながら現実は厳しく主人公に優しい世界はないし、主人公は仮に上手くいったとしての天性の残忍性でおそらくいつか破滅することが容易に想像できる。
幸せになってほしいと幸せにはならないだろうな、が共存した映画だった。