禅の精神「曹源一滴水」とは
「曹源一滴水」(そうげんのいってきすい)
「曹源」とは、禅宗の初代・達磨大師から6代目にあたる、慧能(えのう)禅師のこと。慧能禅師は、広東省の曹渓という渓谷に建立された法林寺で禅宗を大成させました。禅の教えは中国から始まり、やがて朝鮮半島、そして日本へと広がっていきます。それはまるで、曹渓の源にある一滴の水から、大いなる河へと広がっていくように。
禅の根本精神として、「曹源一滴水」という言葉は広く用いられています。
禅の教えでは、一滴の水にも仏の命、仏性が宿っていると考えます。例えば、それを捨てることは、己の仏性を捨てることにつながるというのです。
捨てたその水を、もし木の根元に注げば、木々にうるおいを与えることになるでしょう。また、その一滴の水は、やがて大きな川となる源泉となるかもしれないのです。
わずかな一滴でも、大いなる力をもっているのです。
今の現状を嘆いているとしたら、わずかな労力、一滴ほどの量の汗の積み重ねをはじめましょう。すべては、その一滴。その小さな一歩から始めるのです。
禅とは、古代インド語であるサンスクリット語の「ディヤーナ」を音訳した禅那を略した言葉です。
禅の思想は自らの存在の真実を探すために、自らを律し、万物に感謝し、生き方を見つめ直すことです。
マインドフルネスは心身を健康にすることが目的としていますが、一方で、禅は目的を決めていません。
*禅の広がり
禅は、達磨大師が嵩山少林寺で9年間壁面に向かって坐禅を行い、悟りの境地へ至ったことが始まりです。
日本には鎌倉時代に伝わり、武士から庶民までさまざまな身分に広がり室町幕府では禅宗は保護されるようになりました。
修行や思想だけでなく、水墨画や作庭など芸術も広がり、茶道へとつながります。
栄西や道元から伝わり、現在では24もの流派があります。
禅の思想は、外国人にも非常に人気があります。
ビルゲイツや、スティーブ・ジョブスといった著名人も影響を受けていたとされています。
それでは、なぜ海外で、特にエリート層とされる人たちに禅は人気なのでしょうか。
実は、日本でも禅は、サムライに愛されました。サムライは常に闘うことが使命とされ、刀だけが頼りです。そのサムライが技を鍛錬するときに、最も闘うべき相手は、自分自身だと気がついたのです。毎日、鍛錬すれば剣は強くなるでしょう。しかし、その毎日が、積み重ねの真剣さが強さを分けるとしたら。結局、何をするにも自分との闘いであることに気がついたのです。
米国のエリート層もそうです。ライバルと競争する中で、勝敗を分けるものは何か?それは環境?体調?いいえ、自分の内面こそが、勝敗を左右するものなのです。
自分の内面を探求していくものは禅において他にないのです。
「資本主義の終焉」とも呼ばれる時代です。お金持ちが、どんどんお金を集めますが、それは幸福につながっているのか?真の幸福は資本主義からも見いだせなかったのです。
幸せかどうか、その判断を決めるのは自分自身です。自分が今日を、明日を、未来を幸せだと感じて生きることのできる生き方こそ、禅がもたらす最大の効果です。
つまり、自分を仏だと思って、生き様を正しき方へ向かわせることなのです。