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記事一覧

あなたと月が見たかった
月の綺麗な日は
あなたと一緒に
見ようと思うのだけど
いつもおしゃべりに夢中になって
翌朝になって思い出す
あなたと月が見たかった
ふと、あなたがソフトクリームを
食べたいと言って
二人で夜のマクドナルドへ
バイクを降りたら
月が大きくまんまるで
「綺麗やね」
二人で見た
やっと見れたのに
もうすぐはなれて暮らすんだね
願いが叶って
ひとつの終わりを告げる
食べたかった月見

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だれかのしあわせ

だれかのしあわせを
もっともっと
喜べるひとになりたい
だれかのしあわせを
こころから喜べないとき
そこにはじぶんという
ものさしだけがあって
つまらない
ものさしだけがあって
じぶんに返ってくるから
人にやさしくするというような
あさましさがあって
じぶんにはいっさい
利益のない
むしろじぶんがすこし
不幸になっても
だれかのしあわせを
どこまでも喜べるように
もっともっと
喜べるように
じぶん

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ひとりでは

ひとりでは
生きていけないと
おもったけれど
ひとりで
生きてきたから
あなたを
大切にできた
きっとあなたも
ひとりで生きてきたのね
いつでも
あなたをおもう
ひといきついたわたしを
待ちかねたように
連絡がくるとき
もう少ししたら
電話するとか
もう寝たかなとか
連絡がなくて
あなたが
きっと汗を流しているときも
落ち込んでいるときも
わたしの知らないところで
ひとり
生きていること

ひとり

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永遠

通り過ぎた過去の
思い出の密度は
いつも
通り過ぎてから
大きくなる
わたしが愛したあなた
あなたが愛したわたし
ふたりの距離が
限りなく近かった
そんなことが
涙がでるほど
いとおしい
失ってはいけないと
しっていた
けれど
わかってはいなかったのだ
永遠に続くなら
それでよかった
けれど
ふたりがどれだけ近くにいても
重力で塞がれた出口からは
どこへもいけない気がして
永遠とは
あなただと思っ

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語る

静かになりたくて本を読む
静かでありたくて書く
けれどそれを出すことで
水面に波紋がひろがる
よくも
わるくも
本当に静かでいたければ
書いても出さないことだ
ひとりでただ
書きつづけることだ
人に読まれるということは
関わるということだ
話すということだ
話さないことは
できないだろう
けれど話すときは
言葉少なに
小さく
とりとめのないことを
語っていたい

2024.08.29

なんでもない一日の終わりに

かみさまの光は
すべてのひとにふりそそぐ
けれど幸運は
うつわがなければ
こぼれ落ちていく
どんよくに
すこしでも
つかみとろうとするひとほど
すこしの不運を堪えられず
わたしは
与えられた幸運さえ
一歩さがって
おずおずと
受け取りそこねる
そんなひとに
かみさまが
住んでいる気がして
なにか
いいことがあっても
喜びすぎない
過剰にもとめない
喜びのうらにある
せかいの哀しみに
自覚的であるこ

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信じること

揉まれていないひとの言葉は
信用しない
そこには「我が」という気持ちが
多分に含まれていて
「あなたが」という
自分の背を少し低くして
それでいて誇らしく立つような
そんな視点が見当たらない
なぜ、そうなったのか
耳を澄ますこともなく

はじめは誰だって
遠慮する
思いやりがあるようなそぶりを
見せる人もいるだろう
よく知らないのに
一方的に距離を縮めてくるひともいる
人を批判することで
偉くなっ

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言葉と土

そのままで
なんと美しいことだろう
変わらないことの中に
変わることがあって
わたしたちは
どんなに変わろうとしても
変わらないのだ
着飾らない
肩肘を張らない
そんな言葉が
どんなに有名な人の名言よりも
どんなに権威のある人の演説よりも
どんなに売れる本の一節よりも
光っている
その光をもとめて
わたしは生まれてきた
言葉は売れると
輝きをうしなう
わたしだけの言葉は
あなただけの言葉は
あえか

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たまごサンド

たまごサンドが食べたい
サラダを添えて
コーヒーと一緒に
芝生の上に
シートを敷いて
そう思って
外に出たのだけれど
コンクリートが照り返す熱射に
息をするのにも苦しい
花は枯れる
そう思っても
咲く花があり
木は風を呼ぶ
台風が来る
そんな日に
あなたとピクニックをしたい
けれどあなたはいない
きのう
わたしが寝ているあいだに
そっと帰っていった

2024.08.28

視野

小さな国で
生まれた
なぜ
小さいのか

思ってた

小さな人から
生まれた
なぜ
小さいのか

思ってた

わたしも
小さく
生きて
いる
この国を
出なければ
大きな
世界を見て
大きな
こころでもって
わたしの
視野を
大きくして
それではじめて
考える
ことが
できるのだ
小さな国の
小さな視野で
考えていては
ますます
近眼に
なってしまう
から

知らない
世界が
ある
知らない

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背表紙

本棚にならんだ
背表紙をたどると
ともだちがいる
あの青い大地や
見たことのない
とおい異国に
かれらもいて
わたしは
かれらを知っている
そのことが
勇気になる
なにかわからない
とうめいなうみに
みまもられている
向こうはわたしを知らない
それがいいのだ
「関係」はときにきゅうくつだ
生きている
もしくは生きていた
それだけでむすばれる
それだけでいまを生きていける
わたしはわたしで
かれらは

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はじめて

あなたの子を生みたい
わたしの古びた「はじめて」ではなく
わたしから生まれた
「はじめて」をしりたい

この世界があなたにやさしいかと
母として願いたい
平和が死なないのは
子と母のおかげ
子の母になり
あなたの母となり
風や海や星をふくむ
世界の小さな母になりたい

わたしが生んだといって
よくやったとあなたがいう
あなたが泣いてよろこんで
赤ちゃんが、はじめてわらう
その「はじめて」をしりたい

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景色

あの日見た景色
ふたたび降り立ったけれど
あの日たしかに見たのに
げんじつに見たのに
まるで夢のよう
いま、目の前のげんじつと
ちがうあの日
わたしは
べつの夢の中に
いたのかもしれない
あの日わたしは
はじめての土地で
はたらいた
愛されていた
いまうけている愛も
いつか
べつの夢で
見るのかしら

2024.08.24

原点

わたしの原点は
ひとりで書くこと
読み手がいないとき
わたしはいちばん
満足している
対話
ものやことを
なくしていくこと
自然と
そうなっていくこと
騒々しいのは
性に合わない
ひとりで歩き
こころで感謝し
みくびられて
嫌われて
たいそうなものではなく
それがわたし

2024.08.21