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雨夜
本を読みながらうたた寝。遠くで雷鳴がして、ああ、雨が来るなと思っていると、大きな生き物が歩いてくるように雨音が徐々に近づいて来た。
そして本当に久しぶりに天の底が抜けてしまったような、ざあざあより、どうどうの方が相応しいような大変な音と水が降り出した。
おかげで、道はあっという間に冠水し、頭上ではこれも、大きな動物が喉を鳴らしたり、飛び跳ねて遊んでいるようなくぐもった雷鳴が続き、ノイズと水の振動と微弱な静電気のドームに包まれてしまった。
実は、こういう、ノイズと静電気の精妙で豊穰な振動に全身、五感が包まれる雨夜は、自分というものが、微粒子に散っていくようであり、視覚が嗅覚に、聴覚が触覚にと感覚が入れ替わったりあらたに結びあったりして、不思議な満ち足りた心地になるので、大好きなのだ。こんな夜があるのが雨季。