自分らしさ、とは

　自分らしさとは何か。

　私はぐちゃぐちゃであり、整頓されていない。ゆっくり寝ていたいのに、早く起きた方が良いような気がして起きてしまったり、たくさん食べたいのに我慢したり。かと思ったら別腹が発動してしまったり。自分の中にたくさんの自分がいて、それぞれ勝手に要求を起こすので、一人の人間として、全くまとまっていない感じがする。

　モラハラを受けていた頃、とにかく「私」を否定された。「だからダメなんだ」「変わらないと」。そしてわけがわからなくなってきた頃、こう言われた「せっかく良くなってきたのに」。

　全部自分の思いを殺して従うべきだと刷り込まれ、判断力が無くなって、でも何か心の内側でアラームが鳴り響いている気がして行動も気持ちも分裂しているような気になった時、ようやく自分の要求に気づいた。

　それは、「私をわかってほしい」という思いだった。

　私を理解して私の立場に立って、認めて、というような甘ったるい意味でのことではない。ただ、私は ”あなたと違う意見を持つこともある” ということを認めててほしいだけだった。

「私はこう思う」に対して、「ふーん、そうなんだ」という返事が欲しいというだけだった。つまりそれまでの ”私の思い” は、「あなたの気にいるような思い」であったり、怒られないためであったり、うっかり意見を言おうものなら「その考え方はおかしい」と言われてしまうものだった。他のモラハラがどうかは知らないが、私にモラハラをしていた人は私の考えを自分の考えに同化して欲しいと望んでいるように私には感じられた。

　だから私は、私は別の人間だから別の人格があり、別の個性がある、ということをただ認めて欲しかった。ふーん、で構わないから。私だってあなたを染めない、だから私のことも染めないで。

　私をあなたの思う正しい道に導いてくれなくていい、私は間違っててもいい、私は私の思いを尊重したい、という思いに気づき、そしてそれが受け入れてもらえないとわかった時、私は物理的に、精神的に逃げて、自分の気持ちを守ることにした。そしてそれは正解だったと思っている。

　そうまで主張しているけど、私は大した人格の持ち主ではないし、歳だけは重ねているけど、残念ながらまだ大人になった気がしないし、日々いろんなぐちゃぐちゃな思いを重ねて過ごしている。

　それでも、それが私なのだと思う。

　私らしさ、というものがなんなのか、私自身よくわからない。けどよくわからないけど自分に嘘をつかないことかな、と思う。

　誰かに勝たなくても、誰かより生産性がなくても、あっても、真面目でも不真面目でも、それが個人で、そこは誰も尊重されなければならないと思う。変わりたかったら、本人がそうするしかない。

　良い人物になろう、というのは本人の思いと努力からしかなれず、人があやこや言っても変えられない。

　自分しか、自分を良くしてあげたり守ったりしてあげられない。

　今、幸いにも私には自分と向き合う時間がたくさんできた。だらけてしまって甘やかしている部分もあるけど、よく自分の内の声を聞いて自分に嘘をつかず、つかせず、自分らしく考えていきたいと思う。