日記:花森安治の本を読む
花森安治の本を読む。トレンチコートのポケットにすっぽりと入るサイズの本。同じポケットにはiPhone5S。スマホはバッテリーが切れると何の役にも立たない。電源が入っている時はすごく便利なんだけど、時間制限付きの便利さだ。それに比べて本は電源が切れる心配はない。紙に印刷された言葉が消えることも、読めなくなることもない。好きな時にスッと取り出してすぐに読める。俺にはローテクの不便さを尊び、ハイテクを見下すような気持ちはない。そのどちらもが入っているポケットの頼もしさを感じながらけやき通りを歩く。「おほしんたろうのインスタ面白いから、ちょっと見てよ」と僕が友達に言い、スマホを見せる。「ああ、結構スベッてんだね」といくつかの投稿を見て友達が言う。「ちょっとちょっと、ぜんぜんスベッてないよ!」と僕が言うと、友達が笑う。「あなたの身に飾るすべてのもの、服や帽子や靴、ベルト、バッグ、首飾りブローチから指環、リボン、髪飾りなどそうしたすべてのなかで一番うつくしいのは、あなた自身、あなたの体、あなたの髪、あなたの顔、そして何よりも、あなたの眼です。あなたを、くだらなく飾り立てて、せっかくの、その美しさを、こわしてしまわないように。若い美しさは、どれだけのお金を出しても、あがなえないもの。それを大切にしてください。それを何よりの誇りにしてください。」花森安治のこの文章が好きだった。