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14. ピランデッロの生家へ

フロントでタクシーを呼んでもらい、イタリア人作家ルイージ・ピランデッロの生家に行こう。神殿の谷の割と近く、カオス(Caos)という村にある。地図の矢印部分。

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丸囲みは駅、右の下線は泊まったホテル

ピランデッロ(あるいはピランデルロ)は、タヴィアーニの映画『カオス・シチリア物語』(Kaos)で、気になっていた作家。『Novelle per un anno』(1年間の物語)が原作で、この映画は4つの短編にプロローグとエピローグで構成されている。切ない音楽が流れ、荒々しく美しいシチリアの地をカラスが飛ぶのを見ているうちに引き込まれていった。どの話も強烈な風味で、その地で生きている人たちの姿は逞しい。エピローグ「母との対話」では、ローマからカオスに帰り、実家で過ごす彼の中で母の弔いが進む。最後は母の少女時代のシーン。美しい青い海と空、真っ白な砂の斜面に立ち、兄弟姉妹と笑いながら駆け降りると、小さな船に乗り込み、漕ぎ出す。どんな状況にあっても歓びを持って生きる、と彼女は決意しているようだ。この旅立ちの景色に、これまでの登場人物達の痛みも切なさも、すべて昇華された感じがして、ほっとしたというか、人は大丈夫だ、強いのだったと思い出した。もう20年以上経つので、思い違いがあるかもしれない。

日本でも小さな劇場では芝居が上演されている。旅行の少し前にベニサンピットにかかっていたT.P.T.「Naked -裸-」を観に行った。原題は「Vestire gli ignudi」で、裸に服を着せるという意味。デヴィッド・ルヴォー(David Leveaux)演出、皮膚にヒリヒリした痛みを感じるような、中嶋朋子主演の舞台だった。

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タクシーで10分ほどで到着。もう海がすぐそこに、ブーゲンビリアが咲いている。ここだけ見ると、どこかのリゾート地みたいだ。

運転手に1時間くらいしたら迎えにきて、と頼んで見送った。すると、中から出てきた旅行者2人が「クローズしていたよ!」と教えてくれた。がっかりする間などない。人通りもない地の果て、即ダッシュしてタクシーを追いかけ手を振って呼び止める。このまま待っていてもらうことにした。

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ガイドブックの説明と違う。イタリアだもの、よくあること。慣れてきた。Niftyのイタリア旅行部屋の人々に感謝。

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28 Giugno 1867は、彼の誕生日。文字欠落部分は検索して判明。『Notte』という詩の冒頭のようだ。きちんと理解できていないけれど、物哀しい。
- Una notte di giugno
Caddi come una lucciola
Sotto un pino solitario
In una campagna d'olivi saraceni
Affacciata agli orli
D'un altopiano
D'argilla azzurre
Sul mare africano -

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生家から地中海方向に歩いて5分ほどの場所にお墓があり、お参りをした。周りはとても静か。向こうにアフリカ大陸がうっすら見える。トップの写真は海を向いて撮影、この上のものはお墓から生家の方を振り返って。土葬ではなく、遺灰が埋められているとのこと。カトリックが一般的なイタリアで火葬されたのが驚き。

この記事を書くにあたり、Wikiを読むと、お葬式などの儀式、記念碑や墓地への埋葬もせず、ただ遺灰を撒くようにという遺言だったようだ。しかし、カトリックの国のノーベル賞作家としては、やはり無謀な願いだったと見える。火葬迄は本人の意思が尊重されたが、一度Veranoという墓地に埋葬されてしまう。その後、遺言を守ろうとした人々によって墓地から出されたという。よかったなと思ったら、パレルモで葬儀が行われてしまう!移送ルートとして経由するのは理解できるけれど。それに、パレルモへの移送は遺灰を飛行機に乗せるのが問題だったのか、移送手段が列車に変更されたり、葬儀も遺灰入りの壺を司祭が納得しなかったのか、棺に壺を入れたことでなんとか収まったとのことで、難関続き。

そして、この葬儀の後、壺はアグリジェントの博物館に保管されてしまう。故郷に着いても、まだ撒いてもらえない!さらに、コンペで選ばれたアーティストによる記念碑が建てられ、遺灰は壺から別容器に移されて埋められてしまう。最後、容器に入り切らずに壺に残った分だけが、散骨されたそうだ。申し訳程度に叶えられた、本人の意思。

ピランデッロは、このエピソードで1本すばらしい戯曲を書けたのではないか。

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お墓にまつわるエピソードについて:
このエピソードは、このnote作成時のWikipediaの内容に基づいている上、イタリア語初心者がDeepLを使いながら理解したので、何か違っている可能性もあること、ご承知おきください。

タヴィアーニの『カオス・シチリア物語』の予告編を見つけました。プロローグは「ミッツァロのカラス(The crow of Mizzaro)」のようで、『月を見つけたチャウラ―ピランデッロ短篇集 (光文社古典新訳文庫) 文庫』に含まれています。

これには「甕(La Giara)」も収録。映画にはなっていない他の短編も、よかったです。

以下は未読ですが、映画の元になった話をまとめて読むには、こちらがよさそうですね。

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劇場で芝居を観る人ならご存知かもしれませんが、「作者を探す六人の登場人物(Personaggi in cerca d'autore)」は上演される機会が比較的多かったようです。次いで、「御意にまかす(Così è (se vi pare))」。この旅行後に、「エンリコ四世(Enrico IV)」(「ピランデッロのヘンリー四世」世田谷パブリックシアター)、「山の巨人たち(I Giganti della montagna)」(新国立劇場)が上演されて観に行きました。メタファーやシニカルさに色々考えすぎてしまい、観劇後も消化不良が続いて、内容をあまり覚えていません🥲すごい俳優さん達や演出家だったのに。

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こちらは、前出の中嶋朋子さん主演の「Naked -裸-」のキャスト&スタッフのリスト。T.P.T.の小劇場の豪華さを改めて噛み締めています。

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