弥立つ【ショートストーリー】
親愛なる君へ
私は今、福島県の会津に来ています。
さっきようやく旅館に辿り着きました。
ようやくっていうのは、
別に道に迷ったとかじゃなくて、
強い風が吹いていたからです。
あんなにたくさんの雪の粒が空中を舞うのを、
私は初めて見ました。
見せたいなあ。混じり気のない一面の白。
ここには、高い建物があまりなくて、
空がとても広いんです。
この吹雪が晴れたら、
きっと星もよく見えると思います。
もしも今、隣に君が居たら、
この風景も、一層素敵に見えるのだろうなあ。
また、手紙書きます。
立花より。
貴方はきっと知らないでしょう。
貴方の元からやってくる言葉たちが、
私をどれだけ喜ばせているか。
返事をしたいのだけれど、
私の手紙が着く頃には、
そこに貴方は居ないのだろうから。
もう、手紙を待つのは止めにします。
私も旅に出ることに決めました。
いつかどこかで会うことができたなら、
貴方の隣で同じ風景を見てみたい。