会話の種火
昨年担当していた仕事の関係で、とある市役所に2週間ほど滞在していた時の話。
その職場は、役所の中では忙しい課といわれている。
ただ、忙しいとはいえ、業務に関する話題だけでなく、プライベート含めたたわいもない会話が頻繁に飛び交っていた。
最初は仲の良い課なのかと思っていたのだが、日を重ねるうちに一つのことに気がついた。
その職場では毎日必ず話されていることがあった。
昼ごはんの話である。
その職場では朝、打ち合わせに使われる大きな机の上に昼ごはんのメニューが置かれている。
確かではないが、どうやら地元の飲食店やお弁当屋さんのメニューが書かれているよう。
頼みたいメニューの横の欄に正の字を追加していき、当番の人が電話で注文する仕組みみたいだ。
その場所でしかメニューを見れないし、注文もできないので、テーブルの椅子に誰かが座ってメニューを見ていると、新しく来た人が自然と
ケバブ食べたことある? とか、
ここのカレーって辛い? とか、
昨日の〇〇は美味しかった! といった声をかけ、何かしらの会話が始まっていた。
昨今の世の中は、初対面であったり、世代が離れていたりすると特にコミュニケーションが取りにくいように思う。
個人の私生活に関することを深掘りしにくい、この時代に、お昼ご飯の話題だけは世代も時代も超える、会話の種火になっていたのかもしれない。
ちなみに僕は、その職場のドライカレーを食べてみたかった。