綿矢りさの作品を諸々と読んでみた

サブスクライブしているnews picksのweekly ochiai で綿矢りささんが出演されている回を拝見し、芥川賞受賞作品など諸々の作品も読んでみたので、備忘もかねて、感想を書きます。



インストール

不登校気味な少し変わった女子高生が小学生と手を組んで、インターネットでテレクラのアルバイトをするという話。突拍子もないストーリー設定ながら、ユーモアまじりの馴染みやすい会話と何かはわからないけど何かに気がついていく主人公の成長が爽快でした。これまだ、インターネットの黎明期に書かれていたとのこと、作者が高校生の時に書いた作品とのことで、その意味でも驚きました。

蹴りたい背中

インストールと並んで、綿矢りさの初期の出世作のうちの一つで、芥川賞受賞作品。中学生の年頃の女性が同級生のオタクの男性に抱く恋心と自意識との間にやきもきするというストーリーです。「好き」→「蹴りたい」は直感的、論理的には一見繋がりませんがこの間の「→」を埋める心理描写、エピソードの記述が巧みで、文学でこそ描ける素晴らしい恋愛小説だと感じました。

かわいそうだね

彼氏の元彼女が彼氏の家に居候して、「認められないなら分かれる」という形勢の悪い恋愛を迫られる女性の話。彼氏への好感と異常な事態へのやきもきと、元カノの境遇への共感、という様々な思いが錯綜する中で、個人的にはその思いの帰着、決着のさせ方がとてもスッキリしたので後味の良い作品だと感じました。

勝手にふるえてろ

初恋の相手に抱く一方的な想いとそれへの固執から離れられない女性が、会社の同僚に恋心を抱かれたことをきっかけにそれに関連する様々なことが起き、初恋の人へ寄せる想いとの間をいったりきたりするストーリー。「もしかしたら、あれがあるかも」とずっと想いと期待を抱き続けて、現実を見ることができないという誰しもあるような恋愛での失敗と、それを正すのにかかる時間よりもものすごく速く進んでいく現実の中で揺れ動く主人公は共感せずにはいられませんでした。

生のみ生のままで

旅行先で出会ったことをきっかけに恋愛関係に陥った二人の女性の同性愛を描いた作品。「その人だから好き」という想いと愛情は同性、異性愛という枠組みとは関係なく、シンプルに好きな人を好きになるという恋愛感情であると台詞や描写を通して強く表現しているのが印象的でした。また、ジェンダー多様性が謳われて久しい今日ながら、性的指向というものの違いを肌感覚で乗り越えるのは難しい中で、こういった小説を通して少しでも理解ができれば良いと読み終わってからふと思いました。

読んだ限りで良さをまとめてみると

以上が、私が諸々と読んだ綿矢りさ作品ですが、読んだ作品の限りでその良さをまとめると、あっちやこっちに色々と考えが張り巡らせられる居場所のない想いだったり、心理状態を無駄のない記述で簡潔に言語化してくれるので、作品によって何か破壊的な解決策は示してはくれないけれど、安心感だったり理解されているという感覚をもたらしてくれて、ひいてはそれが読者に勇気をくれるのかなあと思います。

個人的には、もっと早く綿矢りさ作品に出会いたかったなあーと諸々を読んでつくづく感じました(笑)

まだ読めてない、近年の話題作、嫌いなら呼ぶなよも今後読んでみたいと思います。

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