彼の死4 | 白い布
警察と医師の検死が終わるまでの間、別の場所で待機していたが戻ってきてもいいですよとの連絡を受け部屋に戻った。
部屋に戻るとリビングにいた彼が寝室で布団に綺麗に寝かされていた。
顔には白い手拭いがかけてあった。
おそらく警察官の方が引き出しかどこかから出してきたのだろう。
顔に布がかけられると一気に死人感出ちゃうね、なんて呑気に心の中で彼に語りかけていた。
そして大きい布団に二人で寝ていたので、あぁ今日はここで寝れないのか…とぼんやり思った。
取り調べの末、幸いにも事件性はなく、検死の結果は突発性心臓死とのことだった。
これは直接的に関係があるものではないかもしれないが、亡くなる数日前に前兆のようなものがあった。
彼は年齢のせいもあって肩やら腰がたまに痛いと言っていたが、その夜は吐き気がするくらいの肩こりが起きたのだ。
かなり古い記憶で心臓が悪いと肩や背中が痛くなることがある、というのをテレビで見たことがあった。
そのときはそんな記憶を思い出すこともなく、湿布を貼って一晩寝たら調子がよくなったというので、その数日後にこんなことになるとは本当に想像もつかなかった。
病院嫌いの彼だったけど、あのときに私が事の重大さに気付いてきちんと検査を受けさせていれば…と後悔が止まなかった。
布団を彼に占拠されてしまったので、今晩は実家で眠ることになった。
すっかり憔悴している私を見かねて、実家までは車で数十分の道のりだが母が助手席について私の話し相手になってくれた。
時間は深夜12時をまわっていたと思う。
もうこんなに遅い時間なのか、と彼を見つけてから初めてまともに時間を確認したような気がする。
実家のベッドに横になったが、目をつぶってもいろんな事が頭をめぐり涙が止まらず、なかなか眠りにつけなかった。
彼が亡くなってすぐ、彼と親しかった友人には電話をして事の顛末を伝えた。
皆一様に驚いていた。
中には数日前までLINEでやりとりしていた友人もいたため、とても受け入れられないとショックを受けているのが電話口からも伝わってきた。
眠れない私は、まだ連絡をしていない彼と面識がある共通の友人にメッセージを打った。
これを見たらショックを受けるだろうな…
伝えたいけど、伝えたくないな……
そんな葛藤もしつつ深夜にメッセージを送る。
目をつぶっただけで過ごした一夜が開けた。
鏡に映った自分の顔はよく覚えていないが、ひどい顔をしていたと思う。
朝、家族がそろい、葬儀をどこに頼むかという話になった。