適正な価格
今回は「価格」について考えてみたいと思います。
みなさんの商品の適正価格はいくらですか?今販売している金額は本当に適正でしょうか?胸を張って「うちの商品は適正価格だ!」と言えますか?しっかり言える方もいらっしゃるかと思いますが、おそらくほとんどの方は、周りの市場価格やある程度の相場感などを考慮して「だいたいこの位だろう」という所でざっくり決定しているのではないかなと思います。物やサービスの値段は需要と供給のバランスで決まると経済学では教えられますが、実際は価格を決めるのに根拠はありません。何にどんな価格を付けるのかは売る側の自由です。
それを踏まえた上で人件費や仕入コストが毎年増加している昨今、値上げをして行かなければならない状態に皆様もなっているかと思います。「価格」を決める際にまず気をつけていただきたいのは、原価計算ではなく、コスト計算をする事が重要と私は思っています。コストとは仕入れや製造原価の他に、販管費などの必要経費を入れたものを指します。「価格」を決める際には、原価に加えて、付随する諸経費、メンテナンス、人件費、研究開発費、教育費、家賃なども考慮して決めなくてはなりません。ここをおざなりにしてしまうと、将来的に老朽化していく建物や設備のメンテナンス、人材教育・研究開発など未来へ繋がる投資ができませんので、会社が発展していきません。高額の設備や機器類が壊れるとお店を辞めてしまう方も多いですが、その辺のコストを商品にちゃんと上乗せしていればまた新規設備できますよね。この辺をやっていない方は今一度コスト計算をしっかりとしていただく必要があるのではないかと思います。
今現状この大豆食品業界全体の「価格」を安いと私は思っています。もし「価格」を上げていければ利益が出て会社が継続できます。後継者も後を継いでくれるでしょうし、働くスタッフもより多く還元されイキイキしますし、設備や建物に投資できるようになりますし、気持ち良いお客様がついてくれますので、良い事だらけです。理想的な経営は「競争のいらない経営」を目指す事だと思います。他社と競争しない独自の経営目標を追求してください。
簡単に値上げと言われてもという声が聞こえてきそうなので、値上げをする上で大事な事も書きます。価格を上げていく上で大事なのは「正しい価値をお客様に伝える」という事です。「価値に原価はありません」。仙台に「玉虫塗」という伝統工芸品があります。普通のお盆は100均に行けば買えると思いますが、玉虫塗のお盆は送料を入れると3,000円位します。価格差は30倍ですね。30倍の単価で売るためには価値を正しく伝えなければなりません。「1932(昭和7)年に発明された」「他にはない艶やかな光沢」「伝統的な下地に銀粉やアルミニウムを蒔いて染料を加えた透明な漆を吹き付ける」「あのマッカーサーも買いに来た」「西洋にも受け入れられるデザイン」「天皇陛下献上品」などその物が持つ価値をどれだけお客様へ伝えられるかがポイントとなると思います。価値の例として、「手作り」「手間暇がかかるので、1日◯個しか作れない」「希少性がある」「この人じゃないと作れない」「専門家がいる」「お店や商品の歴史」「語れるストーリー」「驚くような開発秘話」「特許がある」「有名人が愛用している」「ここに来ないと買えない」「すごいエビデンス」「壊れない」「アフター保証」などまだまだあると思いますので、考えてみてください。ぜひ「価値を語れるものづくり」を目指していきましょう。
みなさんが仕事でご苦労をなさっている姿を私はずっと側で見てきました。本当に優しい方が多いので、できるだけ消費者に安く提供してあげたいという気持ちがある方が多いのだと思っています。それ自体はすごく良い事だと思いますが、倒産や廃業が後を絶たない状況なのでとても切ない気持ちになります。経営者の一番の仕事は「会社を継続させ未来を創る」事だと考えています。その為にはしっかり利益の出る業界にしていかなければならないと思います。値段の決め方は本当に大事なので、今一度しっかり見直していただき適正な利益を追求して未来に残っていく素晴らしい業界にしていきたいと本気で考えています。大豆という素晴らしい食材を広めていきながら、共に未来を創っていきましょう!
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