バイオリズム抑えめの朝
ここ最近朝からスポーツの生中継を見ている。
スポーツ観戦といえば風呂上がりにビールを片手にヤジを飛ばしながら見たり、生活費を賭けて駆ける馬にヤジを飛ばしながら見るのが常であり、朝からやるものではない。
いかんせん朝から血圧が上がらないので盛り上がりどころでその瞬間を逃さずに体の熱を放射するには、筋肉や血管、神経が起ききれいないのだ。
アルコールであったり、未来への不安を通じて体の熱を上げていることはさておき、百歩譲って青少年の競技大会は朝には相応しいが、やはり朝から見るには身内が出てないと億劫である。
それでも此度は朝から見させられている。朝しか見れないのである。なぜならスポーツをしている画面の向こうは夜だから。大谷翔平が今日も1番バッターを張っている。
ロサンゼルスドジャースとニューヨークヤンキースの名門対決は、日本でも朝から生中継が行われている。野茂英雄や松井秀喜、田中将大など、何かと日本人メジャーリーガーに縁のある両チームが対決しているワールドシリーズはついつい注目してしまう。
一年の幕を閉じるのに相応しい役者が揃い踏みしている。前人未到の年間50ホームラン50盗塁を達成した大谷翔平はもちろん、各チームの打線にはこれまでのMVP選手や各タイトルを取ってきた一流選手が並んでいる。各選手の一口説明にも事欠かないので、テレビマンたちも苦労せずにつけることができただろうことが容易に予想できる。少し調べればすぐタイトルが出てくるほどの有名選手の中で、異彩を放つのが、ロサンゼルスドジャースの四番を張る男T.ヘルナンデス、その二つ名を『大谷にヒマワリの種』。何を言ってるのかわからなかった。これだけの選手が揃う中で四番を張る選手が、なぜその二つ名を背負っているのか。簡単に調べたところ、大谷選手が本塁打を打った際にベンチでヒマワリの種で祝福するセレブレーションが定番なのだそうだ。それを率先して行なっているのが彼ということらしい。Wikipedia大先生によると、彼はこれまでに何度かシルバースラッガー賞を獲ったことがあり、今年のオールスター戦ではホームラン競争を優勝しているらしい。あまりにも一流。
というわけで、本当に何もなく、その二つ名がつけられたわけではなく、大谷に注目するが故に、大谷にまつわるエピソードが採用されたというところだろう。
少しヘルナンデス選手がいたたまれない気持ちもするが、島国の小さな戯言なので、あまり気になさらないでほしい。
そんなささいな杞憂をよそに、画面の向こうで白熱した試合が進行している。歓声や指笛がこだまし、異様な熱気を帯びている。
こちらはまだ朝、冷気が緩やかに流れ、コーヒーが身に染みる時間。
体が起き切る前に見届けるスポーツ観戦も悪くないなと感じた朝。