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辻仁成が息子のために開いた”父ちゃんの料理教室”は大人も沁みる金言にあふれている

パリ在住で作家の辻仁成さんの最新刊『父ちゃんの料理教室』(5/23発売)をご紹介します。

父ちゃんの料理教室 再校-2

ロックダウン、どこにも行けず息子さんと二人きり。
辻さんは息子さんに料理を教えるため『父ちゃんの料理教室』を開くことにしました。本書はレシピとともに息子さんに人生を語りかけるような、そんな読むレシピ本です。

 この本は、シングルファザーとして、小学生だった息子を高校生まで育て上げた父親であるぼくが、食べることの素晴らしさと奥深さを、父ちゃん
という立場であらゆる方々に向けて語る人生の書&優しいレシピ集なのです。
 辻家の定番料理がなぜこんなにも美味しいのかを、さまざまな角度から、経験から、ぼくら親子の会話を通して、深く掘り下げていきます。そうすることで、普通のレシピではどうしても描けなかったその料理の本質に迫ることが出来るのです。(はじめにより)

本書の一部をご紹介します。

チキンときのこのクリームソース
Poulet à la crème et aux champignons

 だからね、料理ってのは特別なことじゃないんだよ。料理が上手とかヘタとか好きとか嫌いとか、関係ない。それは「後付け」であって、人間は生きるために毎日料理をして、毎日食べないとならない。君が一人暮らし、もしくは恋人と暮らしだしたら、毎日、何かを作って食べないといけなくなる。
 人間ってのは何を食べたいと思うか、食べようとするかが大事だ。お金があっても食べることを疎かにしている人は豊かじゃない。血の通った料理というのがあって、それは日々の生活とどう向き合っているかで、決まってくる。
 パパは君に季節が変わるごとに出てくる食材をずっと食べさせてきた。マルシェに行き、新鮮なものを選んで、目で見て、お店の人と相談をして、おすすめのものを買って、食べさせてきた。どんなに忙しくても、それだけは手を抜かなかった。
 君は16年間でそのことを生活の中で、自然に学習してきた。秋になればきのこが美味しいはずだということを知っている……。それはとっても大事なことなんだ。
 見ろ、今日はこんなにたくさんのきのこを手に入れた。これを使って、簡単で、超美味しいチキンときのこのクリームソースを作ろう。

父ちゃんの料理教室 再校-9

材料

チキンときのこのクリームソース

[ 材料 ](2人分)
鶏むね肉 —————————————— 300g
塩、こしょう —————————— 適量
油またはバター ——————————— 大さじ1/2
玉ねぎ ——————————————— 1/2個
きのこ ——————————————— お好きな種類を好きなだけ
(今回は、エリンギ 2本、しめじ 1パック、モリーユ茸 10個くらい)
栗 ————————————————— 10個くらい
白ワイン(またはウイスキー)———— 大さじ 1
チキンブイヨン ——————————— 1/2個
生クリーム ————————————— 80㎖

レシピを紹介しつつ、人生のいろいろを息子さんに語り掛ける辻さん。息子さんだけでなく、大人が読んでも心に沁みる金言にあふれたレシピ本。

独断で選んだ金言を一部ご紹介

 時には冒険をしてみるのがいい。失敗を覚悟して。
 時には長い休暇をとったらいい。人生を見つめ直すためにも。
(牛肉のタリアータ より)
 料理は美味しいものを作り出せるマジックなんだ。いつか、君が自分の恋人や、あるいは血を分けた人に料理する日が来るのは間違いないから、パパは君に、その魔法を伝授する。人間に笑顔を与える料理という名の魔法だよ。
(じゃがいもとベーコンのタルティフレット より)
 実は、パパはネガティブな自分が嫌いじゃないんだよ。グラスに半分注がれたワインを見て満足していたら、それ以上のワインは手に入らないわけだから。
 不満や文句があるということを向上心と捉えるなら、ネガティブであることも、まんざら悪いわけじゃない。
(ボンゴレ・ビアンコ より)
 人間、中身が大事なんだって、思って生きてきた。
これは実は料理の食材だって同じなんだ。やっぱり中身のある食材で作った料理は美味しい。
(有頭海老のパスタ より)


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