欲しいもの
私には、何か欲しいものがあったのです。
とてもとても、欲しいものがあるのです。
それは、幼い頃からずっと欲しいのです。
でも、それが何かは、分からないのです。
なので、私は勉強をすることにしました。
本に囲まれて、一人静かに学んだのです。
少し欲しいものに近づいた気がしました。
そうしたら、さっそく一つ見つけました。
最初に目星をつけたのは、お友達でした。
どうやらお友達は人生の宝らしいのです。
私には、たくさんのお友達ができました。
私は頭が良かったので簡単に作れました。
でも、作ってみると、なにかが違います。
欲しいのはお友達ではありませんでした。
次に私が目星をつけたのは、お金でした。
お金はあればあるだけ幸せらしいのです。
私の手元にたくさんのお金が溢れました。
私は頭が良いので、簡単に得られました。
でも、持ってみると、なにかが違います。
欲しいのは、お金ではありませんでした。
次に私が目星をつけたのは、恋人でした。
なんでも、恋愛は人生の花なのだそうで。
とても甘く、情熱的な恋愛ができました。
私の右隣には、優しい恋人が立ちました。
頑張りの甲斐もあり、無事にできました。
でも、持ってみると、なにかが違います。
欲しいのは、恋人ではありませんでした。
次に私は、持たない事に目をつけました。
どうやら世界とは全てが虚無らしいので。
お金、友達、恋人、恋愛を手放しました。
でも、手放してみるとやっぱり違います。
とても寂しくて、震えるほど寒いのです。
色々な楽しいものをたくさん知りました。
だけど、私の欲しいものは分かりません。
どこを、どう探しても、見つかりません。
私は、最初からやり直すことにしました。
どうやら私はまだ無知であるようなので。
一人で、前の様に本を読む事にしました。
静かな場所で一人、ページをめくります。
たった一人で、ページをめくり続けます。
ただ孤独に、ひとりぼっちで、続けます。