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血糖値が正常値まで戻らない理由〜低血糖の理由②
こんにちは!
体調不良・病気で苦しむ人を1人でも減らしたい
東大薬学部卒アンチエイジングアドバイザー
福嶋大介です。
今回は「血糖値があがらない理由〜低血糖の原因②」について記事を書きました。
●はじめに
前回の記事で
低血糖は通常の人から起きない
低血糖が起きる理由は
①血糖値をさげすぎている
②血糖値を戻す力が弱い
この2パターンのみだという話をしました。
今回は
なぜ血糖値を戻す力が弱いと血糖値が下がりすぎるのかを解説していきましょう。
●なぜ血糖値を戻す力が弱いと血糖値が下がりすぎるのか
【血糖値を上げるぞ!というホルモンや体の機能(肝臓)が機能しなくなっている】
ということがポイントになります。
1. グルカゴン機能低下
グルカゴンは、血糖値が低下した際に
肝臓に蓄えてある、ブドウ糖の元であるグリコーゲンを分解して血糖値を上げる役割。
膵臓のα細胞が何らかの理由で正常に機能しない場合、グルカゴンの分泌が低下し、低血糖時に十分な血糖上昇が得られない可能性があります。
Why Glucagon Matters for Hypoglycemia and Physical Activity in Individuals With Type 1 Diabetes
* 引用: Frontiers in Clinical Diabetes and Healthcare, 2022, 3:889248. DOI:
New Developments in Glucagon Treatment for Hypoglycemia
* 引用: Drugs, 2022, 82(11), 1179-1191. DOI:
2. 副腎不全
アドレナリンやコルチゾールは血糖値を上げるホルモンであり、副腎から分泌されます。
ずっと寝不足とか、ストレスかかりすぎ、ずっと交感神経がONになっていると、副腎疲労になったり、副腎不全(アジソン病など)になったりします。
副腎が動かないとこれらのホルモンの分泌が不十分となり、低血糖時に血糖を上昇させることが困難になります。
Mechanisms of hypoglycemia-associated autonomic failure and its component syndromes in diabetes
引用:Diabetes, 2005, 54(12), 3592-3601.
Frequency of Adrenal Insufficiency in Patients With Hypoglycemia in an Emergency Department: A Cross-sectional Study
引用:Journal of the Endocrine Society, Volume 6, Issue 10, October 2022, bvac119
3. 肝機能障害
肝臓はグルカゴンの働きによりグリコーゲンを分解して血糖を供給します。
肝機能が低下している場合、血糖値が下がった際に十分なグリコーゲンが分解されないことがあります。これにより、低血糖が持続する可能性があります。
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●なぜグルカゴンの機能低下が起こるのか
1. インスリン抵抗性
インスリン抵抗性は、体の細胞がインスリンの作用に対して反応が鈍くなる状態です。
この状況では、インスリンの効果が十分に発揮されず、血糖値が高いままになります。
その結果、膵臓はインスリンを過剰に分泌しようとし、膵臓のβ細胞に負荷がかかります。
これにより、膵臓のα細胞も影響を受け、グルカゴンの分泌が適切に行われなくなることがあります。特に、インスリンの過剰な作用はグルカゴン分泌を抑制し、低血糖に対する反応が鈍くなります
*インスリン抵抗性とは
ある条件下、
例えば糖が多すぎる、とかで
血糖値があがりすぎる
↓
インスリンがどばーっとでる
↓
糖の受け入れがキャパオーバーだと判断
↓
糖のとりこみ機能停止(機能低下)
*0か100かというより取り込みを急激にゆっくりにするイメージ
↓
血糖値があがったままさがらない
この現象をインスリンの抵抗性といいます。
Why Glucagon Matters for Hypoglycemia and Physical Activity in Individuals With Type 1 Diabetes
引用:Front. Clin. Diabetes Healthc., 08 July 2022 Sec. Diabetes Self-Management Volume 3 - 2022
High Doses of Exogenous Glucagon Stimulate Insulin Secretion and Reduce Insulin Clearance in Healthy Humans
引用:Diabetes 2024;73(3):412–425
2. コルチゾールの影響
コルチゾールはストレスホルモンであり、血糖値を上昇させる作用があります。
長期的な高コルチゾール状態(慢性的なストレスなど)は、各臓器に危険な状態だ!となって
膵臓の機能に悪影響を及ぼす可能性があります。
コルチゾールがずっと出ていると省エネモードに体がなって
グルカゴン分泌を抑制することがあり、これがグルカゴンの機能低下に寄与する可能性があります。
また、コルチゾールの過剰分泌がインスリン抵抗性を促進し、その結果、さらに膵臓のα細胞が機能不全に陥ることがあります。
Why Glucagon Matters for Hypoglycemia and Physical Activity in Individuals With Type 1 Diabetes
引用:Front. Clin. Diabetes Healthc., 08 July 2022 Sec. Diabetes Self-Management Volume 3 - 2022
その他もちろん膵臓や肝臓などの損傷などによっても機能低下してしまいます。
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●なぜ副腎疲労で低血糖になるのか
過剰な疲労状態、過剰なストレス状態になっていると省エネモードになりますよね。
膵臓や肝臓などの機能も低下します。
Mechanisms of Hypoglycemia-Associated Autonomic Failure and Its Component Syndromes in Diabetes
引用:Diabetes 2005;54(12):3592–3601
●まとめ
低血糖が起きる理由は
①血糖値をさげすぎている
②血糖値を戻す力が弱い
血糖値を戻す力が弱い理由は
インスリン抵抗性が上がっている
過度なストレスや疲労があったりする
この状態だと
機能がきちんと起こらなくなる
ゆえに血糖値が下がった時に戻す力が弱ってしまっている。
こういった視点の方が本質的な治療であるという知識が現代は特に大事であるのではないでしょうか
以上です。
福嶋大介