すし詰め
時折、遅い時間に食品売り場を覗いて見ると、店員が割引のシールを出す機械に値段を入力し、あっかんべーしたような長いシートが出て来るのを見かける。
こんなにも食品、それも調理してしまった惣菜が売れ残っているのかと、何とも言えない胸のモヤモヤを感じたものである。
随分前から食品ロスという言葉を耳にしているし、こうやって現実に目にもしている。あっかんべーに張り付いて出て来た割引シールを貼ったところで、客がたくさん来ていなければこの惣菜も一向に減らないわけで、どうしたものかと店の人間でもないのに思わず溜息を吐いてしまった。
そう頻繁ではないが、私も買物はするし忙しいパートタイムや正社員でバリバリと働いている女性や、独り暮らしをしている人間にとって、疲れた体を引き摺って家に帰ってから晩御飯の支度をするのは難儀である。家に帰ってすぐに食べられる惣菜というものは、とても合理的でありがたい物であることは間違いない。どんどん利用して、食品ロスも減らせればこんなにいいことはない。
私はお目当てのピッツァのハーフがどんどんと売れてしまっては大変だと、ピッツァを目の前にして前屈みに物色している背の小さな男の客の剥げた頭を見下ろしながら、どれにしようか考えていたら後ろに人の気配を感じた。後ろには丸々と太った老齢の主婦が、買物かごを乗せたカートンにだらしなく身を預けていた。その時、私は卑しくもちらっとその主婦の買物かごを覗き込んだ。買物かごの中に放り込まれている食材を見て、今夜はどんなおかずか、その家の晩御飯が大体想像出来るものだが、私はその主婦の買物かごの中を見て仰天した。
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