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【映画のはなし(3)】一番弱い部分が一番の武器になる〜「親密さ」濱口竜介監督作品
濱口竜介。
飛ぶ鳥を落とす勢いで快進撃を続けている日本を代表する映画監督だ。
初めて鑑賞した濱口作品は下高井戸シネマで観た「The dephts」。
正直、不快だった。
憂鬱になった。
観終わった後、言葉に表すことのできない不思議なモヤモヤが生まれたから。
だからこそ、ワンシーンワンシーンが脳裏にこびりついて頭から離れない。
濱口竜介はそのような、観るものに強烈なインパクトを残す映画作家だと思う。
2012年に制作された「親密さ」は演劇に打ち込む若者の姿を描いている。
初々しさと青臭さがよく伝わる。
そして、若者特有の不安定さも。
劇中劇がスクリーンいっぱいに映し出され、これでもかというくらい俳優と向き合わされる。
質問という詩が印象的だった。
あなたは、私ではないですか?
映画と向き合っているようでいて、自分と向き合っているようだった。
そして、無邪気に男女が戯れるラストシーン。
かすかな希望を感じさせた。
劇中のセリフで忘れられない一言がある。
「お前らの一番弱い部分が一番の武器なんだ」
自分の弱さ、醜さ、そんなものは隠したいに決まっている。
だけどそれをあえて曝け出すことでその人はより魅力的になるのではないか。
こんなに励まされる映画のセリフに未だかつて出会ったことがない。
やはり濱口映画の醍醐味は会話劇にある、と感じた。