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転職した後輩と仕事について話した

かつての職場の後輩が、転職先で遅くまで働いていると聞いた。
もともとの職場ではともに朝まで作業をすることも少なくなかったが、
まさか転職した後も同じような働き方になるとは。
なぜ今も働きすぎてしまうのかを知りたくて、会って話を聞いてみた。

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〇初めてだらけで、ハードワークに

今回話を聞いたのは28歳の女性。将来「地方創生」に関わるため、
WEB・SNSを用いたPRやマーケティングを学べる環境に移りたい、
というのが転職の動機だった。

いまの会社に入ったのは1年ほど前だが、最初の部署でも
繁忙期は朝まで作業することがあった。現在の異動した部署でも
終電帰りが多く、上司から改善を求められているという。
こっそり家に仕事を持ち帰ることもあるそうだ。
話を聞く限りでは、少なくとも毎月平均70~80時間の時間外労働が
発生していることになる。

彼女の負担を減らそうと、上司によって彼女の仕事量はかなり
少なくなる様に調整されているはずだ。
ではなぜ、働きすぎてしまうのか?彼女はこう答えた。

「いきなり入って何もわからずで、何が正しいのかもわからなくて。
 でも社内では、転職してそれなりにできるヒトと見られ、得意先には
 プロとして見られるわけですから、やらなきゃいけないなって」

榎本博明氏は著書『「やりたい仕事」病』の中で、
・まず目の前の仕事に没頭することで、熟達や成長するチャンスがある
・仕事の経験を通して、自分がどんな仕事ができるのか、
  社会にどう貢献していけるのかのアイデンティティが磨かれる 
と、理想のキャリアや仕事像と現実の差にギャップを抱く若者に対して
まず行動してみることを説いている。

今回話を聞いた後輩は、目の前の仕事から逃げず、初めて体験する
仕事から何かを学ぼうと、時間がかかっているが努力している。
生活や健康を損なう働きすぎはたしかに悪なのかもしれないが、
踏ん張って仕事に向き合おうとする姿勢は社会人として、
プロとして携わるうえで必要なものだ。

ではなぜ、努力をしても働きすぎが改善されないのか?
その要因は職場環境や体制にもありそうだった。

〇「大転職時代」と生産性

彼女が異動した直後、コンビを組んだ営業担当は同じく転職組だった。
営業経験者だから、と採用し即戦力として実務を任せることは
どこの会社でも珍しくない風景だろう。
しかし、2人とも会社のサービスを理解しきれていない状態で
提案活動をしたことで、得意先とトラブルになることもあったという。

今年の6月16日、日本経済新聞で大手企業の「終身雇用」見直しが進み、
あらゆる世代の会社員が転職することが当たり前になる
「大転職時代」がやってくるという記事が報道された。
雇用の流動性が高まれば生産性も上がる、と期待する論も見られるが、
今回のケースを見ると、疑問を持ってしまう。

彼女のような「自社のサービスがまだわからない」まま即戦力として、
かつフォローをあまり受けられず前線に立つ人材が増えれば、
比例してトラブルも増えることが予想される。
そのしわ寄せは、いったい誰が対応するのだろう。

のべ50社以上・3万人もの会社員を診察してきた産業医・大室正志氏は
 ・部下を手取り足取り指導・ダメ出しすることが苦手な上司が多い
 ・仕事のポイントを論理的に部下へ説明できる上司が少ない
 ・日本の上司は部下の質問を嫌がる傾向が強い
などを著書『産業医が見る過労自殺企業の内側』で挙げ、
とくに中間管理職の意識改革が重要としている。

さまざまなキャリアを持つ人材が出入りする機会が増えたとき、
きちんとフォローをしきれる上司がどれほどいるのか。
いかに部下が目の前の仕事に意欲的であっても、
上司が単に労働時間や有休取得日数を気にかけているだけでは、
結果的に働きすぎをいさめられず、疲弊してしまう。
これでは生産性どころではない。

〇「努力すべき業務か」見きわめる

後輩がいる部署には、近いうちに新しい上司が配属されるという。
マネージャー経験が浅い今の上司たちに代わり、個人の得意分野や
忙しさを踏まえて仕事を割り振っていければ、と彼女は期待している。

もし、著者がマネージャーだったとしたら何をすべきだろうか。
過去の業務経験と他社事例を見比べると「仕事の見える化」が
欠かせないと感じる。

日経産業新聞『あの会社のスゴい働き方』に登場する例を紹介する。
化粧品メーカー・ランクアップは日々の業務を「棚卸し表」として
まとめて社内共有、外務委託や業務削減も踏まえて活用している。
WEBマーケティング会社・ロックオンでは、長期休暇の前に
「引継ぎ業務マニュアル」をつくり、休暇中は一切仕事の連絡を
取らないで済むような仕組みを設けている。

「何をすべきかがわからない」悩みを持つ部下でもわかりやすく、
何に時間がかかるか判断できる業務内容を職場ではっきり定義すべきだ。
誰がこなしても同じ時間・クオリティになるように業務を棚卸し
できなければ、忙しいヒトから業務は一向に離れていかない。

ヒトによって業務の知識やパフォーマンスにバラつきがあるなら、
まずそれぞれを誰でもわかる内容に分解する。属人化させない。
何に心血を注ぐべきか、時間をかけるべきでないか。
これらを明確にするだけでも、無為な働きすぎは減るだろう。

よいキャリアを築こうと、意欲的に仕事に向き合おうとする
覚悟や意思を持った人材はたくさんいる。せっかく入社した
彼ら・彼女らを働きすぎによる疲弊から守るために、
企業や組織の制度だけでなく、個々人でも業務の進め方を
見直せる部分は、あるんじゃないか。

〇参考文献


10年ほど企画・マーケティング関連の会社にいました。 その時の激務で出会った仕事やすごい人々のお陰で今の自分がいるので、本noteでもよりよい仕事や働き方について模索していければと思います。